聖魔法の衝撃
リコ達は豪華な部屋に通された。リコはここで寝るようだ。あれ、俺たちはどこで寝るんだ?と思ったがどうやら離れに部屋が用意されるようだ。
リコの部屋で待っているとお迎えが来て中庭に案内された。パージさんらしき50歳位のおっさんがいる。服装からして魔法士だね。この人が噂の元Sランクかあ。確かに魔力多そうだけど、この間戦った魔族四天王のギーリーにはほど遠い感じだ(比べる相手がそれだと可哀想)。
「こんにちは。あなたがパージ殿ですか?」
パージはリコをジロジロ見ている。リコは魔道士セットに着替えていてフル装備状態だ。それを見たパージは、
「ヤンギュー国という遠い島国から来られたと聞きましたが、ヤンギュー国にもエルフがいるのでしょうか?」
「!!!」
魔道士セットが魔力を増加させる事はエルフしか知らない筈だ。この人は一体?エルフには見えないし。リコは動揺を隠すように、
「エルフという種族はこの大陸に来て初めて知りました。あなたはエルフなのですね」
「正確には違います。しかしそれを知っているとなるとやはり只者ではないようですね。本当にそんな国があるのですか?」
「もちろんです。あなたは魔法の知識が相当おありのようです。聖魔法をご存知でしょうか?ヤンギュー国の王家にしか使えない特殊な魔法です」
パージは聖魔法を知らなかった。
「私は魔法の知識は世界一だと自負しております。そのような物があるはずがないのです。聖魔法とはどのような特性なのでしょうか?」
パージの目が怖い。なにかを見極めようとしている。リコは冷静に
「なんと言いますか、回復、浄化、さらに攻撃もでしょうか。普通の回復魔法より少ない魔力消費で大きな効果が出せます」
「姫、あれがいいのでは。シールドです。炎や風の壁とは違う聖なる壁。あれならば弱点の属性がないのでこの方ならお解りいただけるのではないでしょうか?」
コジローの提案にリコは、
「ホーリードームですね。ではどなたかに攻撃をしていただかないと」
「それでは私が。遠慮しなくてよろしいですね」
アンソニー皇子が大剣を持って現れた。なんか強そうな立派な剣だけど、王家に伝わるなんちゃらってやつかな?
「皇子、その剣は魔法剣ですぞ。皇子の魔力では威力が出せませぬ」
「パージ。これは俺が引き継ぐはずの剣、使いこなせなくてどうするというのだ。だが確かに俺には十分な魔力はないな。パージ、あれをやってくれ」
「よろしいのですか?姫が死んでしまいます」
「見極めるのであろう。異国の姫は自信がありそうだ。それにもし聖魔法が大した事がない魔法であれば、異国の姫と偽った罪でどのみち死刑だ。まあ回復させて夜伽をさせて飽きたらポイだな」
ムサシがそれを聞いて剣に魔力を込め始める。
「ムサシ。手出しは無用です」
「ですが姫」
「コジロー。何連がけが妥当か教えてください」
パージがアンソニーの大剣に魔力を込めている。最初は赤く次に黄色、そして緑。火と雷と風の魔力を込めたようだ。カツヨリの剣並みに魔力導電率が高そうに見える。コジロー(カツヨリ)は、それを見て
「姫、念のため三連でいきましょう」
「わかりました。ホーリードーム三連がけ!」
前回四天王ギーリーのブラックメテオは防ぎきれなかった三連がけ。だが、あの後魔法威力2倍の指輪をつけている。
アンソニーが剣を上段に構えて全力でリコへ斬りかかった。風魔力で加速された剣が赤と黄色のオーラとともにリコのバリアーにぶつかる。
『ガキッ!』
ホーリードームは傷すら付かなかった。大剣は物凄い威力を秘めていたがハジ返されたのだ。アンソニーは反動で吹っ飛んでいる。それを見たパージは、
「エクスファイヤーストーム!」
火の上級魔法をリコへ放つ。リコは普通なら相殺する魔法を放つところを敢えてそのままホーリードームで受け止めた。ドームの一番外側にヒビが入ったがそれだけだった。
「バカな。わしの上級魔法はAランクの魔物すら倒すのだぞ」
唖然としているパージを余所に、リコはアンソニーへ回復魔法をかける。アンソニーは反動で壁に激突して出血していたのだ。コジローが、
「パージ殿。いかがでしょうか聖魔法は。この魔法はヤンギュー国でも使えるものは王家の血を引く方、しかも全員ではございません。まさに選ばれたお方しか使う事ができないヤンギュー国の秘宝でございます」
「コジロー殿、確かに私が知らない魔法のようだ。だがなぜエルフしか知り得ない魔道士セットを着ているのだ。エルフとの関係をはっきりしていただかないと国賓として迎い入れるわけにはいかない」
ん?どういう事だ?勇者はいないとかエルフとか。あっ、そういえば前にエルフはこの国には入れないって誰かが言ってたな。でもこのおっさんはエルフっぽいぞ。コジローはリコに目配せをする。
「アンソニー皇子。大丈夫ですか?回復魔法をかけたましたからもう平気なはずですよ」
「ありがとうリコ姫。すごい防御力ですね。参りました。パージ、国賓として迎い入れても良いのではないか?」
「皇子。この者たちはエルフと繋がりがあるようです。エルフに繋がる者をあそこへは連れては行けません」
「お前もエルフではないか?」
「違います。私はダークエルフです」