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アンリーズナブル(序)【リメイク版】  作者: 犬犬尾
始まりの一端
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9話 『悪魔の子』

 夜空には一つの三日月、そして大小無数の恒星達。恒星から放射された光は雲一つとないこの場所——廃街に降り注がれている。その中、シュウと少女は目的地へと向かっていた。

 果たして、目的地とは駐車された車であった。とはいっても少女の方は何もわからずにシュウの後についてきただけなのだが。


「車? ですか」

「ああ、そうだ」


 シュウは淡々とした口調で少女に応じる。

 いまいち要領を得られていないといった面持ちの少女。それもその筈だ。

 車に乗って移動するという事は、少なくとも公道を使って移動することになる。今、命を狙われている立場の者なら目立つような事は避けなければならない。故に少女のセリフは、


「車での移動は目立つのでは?」

「確かにその通りだ。だが、そいつは廃街といった人気のない場所にのみに限定される」

「ん? それはどういう……」

「要するに、人気のある場所に行けば、車に乗って移動しても何ら違和感はない……ということだ」


 魔術師の少女。彼女を運ぶ運び屋を殺した組織の鮮血のミズキ。彼女は尋常ならざる力を有していた。

 単なる打撃だけでは傷一つ付けることも出来ない強靭きょうじんな肉体。拳銃の弾丸の射出方向を予測し、避けるという群を抜いた身体能力。そして、樹木をへし折り、人間の体をボールのように蹴り飛ばす程の膂力りょりょく


 ——そんな非現実的な事を、当然のようにやってのける者が魔術師だ。


 それを掌握し、駒として扱うデラスという男。これはシュウの憶測だが、その男は魔術師という存在に信頼の重きを置いている筈だ。

 根拠は一つ、この魔術師である少女だ。この少女にどれほどの価値があるかはシュウには推し量ることができない。だが、


「魔術師を仕向け、一方ではその魔術師を欲している人物。そんな人物が、魔術が何たるかを知らないなんて道理はない。だから、今この状況は奴にとって予想の範疇はんちゅうを越えているはずだ……お前はどう思う?」

「それは確かに一理ありますね。というか、そんなことよりです!」

「…………?」


 突然の怒声にシュウは呆然ぼうぜんとする。その反応を見て、


「私、最初に会った時に言いましたよね!! 私の名前はユイだって! それをさっきから聞いていれば『お前、お前お前』ばっかりで、ちゃんと名前で呼んで下さい!!」

「え?」

「え? じゃないです!! もう怒りました!! かんっかんです! 怒髪天です!! アドレナリンがドバドバです!! それに名乗ったのは私だけでお兄さんは名乗らないってどういうことですか!? ちゃんと教育受けたんですか!!」


 言葉の趣旨しゅしを理解できていない様子に少女は激怒し、憤慨を表したようにその場で地団駄を踏んだ。


「そ、それはすまなかったユイさん。シュウです。俺の名前はシュウ」


 彼女の埒外な反応にシュウは愕然としてしまい、咄嗟に敬語で応対してしまう。


「はぁ、ユイでいいです。それじゃあ、改めてよろしくお願いしますね。お兄さん!」


『そこは名前で呼ばないのかよ』と、野暮な事を言うのはやめた。




 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 車に乗って移動してから約十分の時間が経過していた。

 運転席にはシュウ、後部座席にユイが座っている。公道には風を切りながら移動する車たち、歩道には男女問わず有象無象の人々が行き交っている。


 戦争前とまではいかないが、比較的に街と呼べるほどの人口の多さだ。作物が育たない、いわゆる死んだ土地を開拓し、そこを人が多く住む町として発展させたわけだ。


 そして、シュウの思惑通り、追手はない。一般市民に溶け込むことにより窮地きゅうちまぬがれた。


「ユイの家は何処にあるんだ」


 先に話を切り出したのはシュウであった。


「言いたくないです」

「それもそうか……俺みたいな氏素性も知らない男に、実家の住所なんて知られたくないのは当たり前だものな」


 余所余所しい態度で呟くユイに、シュウは嫌味っぽく言う。

 当然のことであるが、シュウは決して劣情から彼女の家の場所を問うたわけではない。

 ユイを真に助けるのであれば、彼女を親の元に返すことが問題解決へと最短ルートだ。恩人が、実はクソ野郎だとなれば、彼女としても後腐れは無くなるはずだ。


「そういう言い方嫌いです。それに……言いたくない理由はもっと違うものです」


 不貞腐れたようにユイは俯き、両足を交互にふらふらと揺らす。


「違う理由か」

「違う理由です」

「言えない理由はなんだ。悪いが、聞かせてくれ」


 気の利いた言い回しなど思いつくはずもなく、そしてそれを自覚しているシュウは率直に質問をした。


 シュウはバックミラー越しでユイを見つめる。シュウの視線に気付いたユイは小さく顎を引いてシュウから目線を逸らした。表情は強張り、蒼い双眸そうぼうは様々な負の感情が満ち満ちていた。

 柔らかい座席を、ユイは両手で強く握りしめた。視線は俯き、悄然な面持ちである。


「そ、それは……私……わた、し……両親に、あぁっ、何も、私は悪いことを……して、してないのに!! あぁ……っ」

「…………!? おい! 大丈夫か?」


 ユイの声は震えていた。唾をぐっと飲みこむ行動さえもたどたどしく、憂愁ゆうしゅうに席巻されていく彼女の淀んだ感情が、空気を通して伝わってくる。


 シュウはユイの言葉にその感情の壮絶さに辟易してしまいそうになった。彼女は、どれだけ悲惨な人生を送ってきたのだろうかと、思案してしまう。その過去を目の当たりにし、育ってきた彼女の胸中をシュウには推し量ることはできなかった。


 そんな自分の不甲斐なさに負い目を感じ、訊くべきではなかったと、悔恨かいこんの念に駆られる。

 否、ここで引き下がるわけにはいかない。彼女から目を逸らしてはいけない。薄汚い同情でも、助けると誓ったのならば最後まで彼女を助け通すのが筋だ。シュウはそうやって自分に言い聞かせた。


「無神経かもしれないが、落ち着いて、聞かせてくれ……」

「…………はぁ、はぁっ、私、捨てられたんです。両親に……」

「————」

「私は、悪魔の子だと忌み嫌われ、最終的に私は組織に売られました。お兄さんはご存知ですか……魔術師が『悪魔の子』と呼ばれる理由を……」

「すまないが、わからない……」


 シュウは知らないが、魔術を授かった子供は親や周囲の人間に迫害される。いや、迫害程度で済むなら、まだましな方だ。

 魔術とは神秘の力、その力を狙っている組織は数多くいる。知り合っただけ、血縁関係なら尚の事、組織から命を狙われる危険性があるのだ。


 そこに同情という感情はなく、あるのは純粋な、ただ生き汚い生物の本能。人を狂わせる存在。それが魔術師だ。


 ——それが『悪魔の子』と呼ばれる所以ゆえんであった。


「魔術師の素養のある私は、魔術師という理由だけで組織から狙われる存在なんです。両親はそれを恐れたんです。『悪魔の子』だと……」

「——俺は、魔術師じゃない。だから、ユイに同情はできても、共感は出来ない」

「そう、ですよね……あはは」

「あぁ……でも、それでいいと思っている」


 シュウの冷徹れいてつな声に、ユイが「え?」と声を上げる。


「昔の話だ……俺がまだガキだったころ、とあるおっさんと会ってな。そのおっさんは子供を誘拐されたと言ってきた。その話を聞いて、俺は子供を……そのおっさんを助けたいと思ったんだ……薄汚なくて、希薄で、薄弱な意志だ。同情だ」


 同情とは憐憫れんびんだ。憐れみ、可哀そうだと思うそれは、地位的に、心身的に上の者が下の者に対して抱く感情である。故に、見下しである。


「でも、その同情で子供を助けることができて、俺はおっさんに感謝された……だから俺は同情でもいいと思っている……さっき成り行きで助けたと言ったのは、半分本当で……半分嘘だ。悪い」


 シュウは自分の心の根底にある思いの丈をユイへとぶつけた。心の中にあった枷が外れたような、そんな気がする。


「あ、ありがとう……ありがとうございます。お兄さんはとっても優しい人ですね……」

「そんな大層な……」


 シュウはバックミラー越しにユイを一瞥いちべつするとそれ以降の言葉は続けなかった。


「初めて……、わ、たし、……生まれて初めて……生きててよかったって……思えました」


 ユイの蒼い双眸が涙を含んでいた。そして、瞼は涙を留めることが出来ず、彼女の頬へと零れ落ちた。抑えることを知らず、ポロポロと、子供のように泣きじゃくる。やっと報われたと、生きる意味を見出してくれたというように。


 雑嚢の中にあったハンカチを、シュウは左手に掴むと無言でユイへと渡した。


「行き先、変更だな……」




 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 ユイが涙を、その悲嘆を流し終えるまで、シュウは彼女に話しかけることは無かった。

 その間、シュウは頭の中で回り続ける歯車のように、自問を繰り返していた。


 一つ目は、デラスという男が魔術師であるユイを捕らえようとする理由に対しての矛盾点だ。ただ単純に魔術師を欲しているのならば、既にデラスの手元には『鮮血のミズキ』が居たのだ。それとも魔術師の母数を増やそうとしているのか。


「質問していいか、ユイ。無理なら無理でいい」


 頃合を見たシュウは、自身の尺度だけでは結論を出しきれないと判断し、ユイへと助けを求めた。

 涙と鼻水によって湿ったハンカチをユイは右ポケットの中に仕舞い、頬を『パンパン』と二回叩き、深呼吸をする。そしてシュウを見据え、


「いえ、もう大丈夫です。質問ですね……どうぞ」

「……組織の人間が魔術師を欲している理由は何だと思う」

「理由ですか……」

「ああ、わかるか……」


 ユイは顎に左手を据え、一呼吸を置いて言葉を続ける。


「確証はないですが……私が『真正の魔術師』だからだと思います」

「その、真正の……魔術師というのは、なんだ……?」


 自分が産まれてから今の今まで聞かなかった言葉を耳にし、シュウは訥々(とつとつ)とした口調でユイにその言葉の真意を問うた。

 ユイは両手を膝の上に置き、続けて言葉を紡ぐ。


「では……先ず、魔術師ついて説明しますね。魔術師というのは大きく二つに分けられています。真正の魔術師と……そうでない魔術師です。この二つには明確に違うものが一つあって、それは魔術を行使する時に於いて媒体物を使うか、否かです。通常の魔術師は前者で、真正の魔術師は後者です」


 魔術師とは魔石や魔法陣といった媒体を介することにより、魔術を行使することができる。

 魔石であれば把持して使用し、魔法陣であれば魔法陣の書かれた魔術書、もしくは魔法陣を身体に移植するなどして使用することができる。

 それが魔術師であると、シュウは師匠から聞いていた。


 それを、ユイは消耗品というペナルティを背負うことなく、魔術を行使したということになる。

 ユイから提示された情報と、自身の持ち得ている知識をシュウは加味かみする。そして、デラスが彼女を欲する理由が眉唾ではあるが、的を射抜いた情報は得られた、とシュウは思った。


 赤信号にて停止させていた車を青信号に変わると同時、シュウはアクセルを踏み込み交差点を右折する。再移動したことに感覚が追い付けていなかったのであろうか、態勢が崩れたユイは「ひゃっ」と声を漏らした。


「すまん」と、気に掛けるシュウにユイは「大丈夫です」と、社交辞令で返す。彼女は倒れないようにと置いていた手を壁から離し、元あった両膝の上に置いた。


「ユイは真正の魔術師で、あの女がそうでない魔術師だ……ってことか」

「はい、その通りです。ん?……どうしたんですか?」


 シュウの不服をあらわにした表情を、今度は逆にユイがバックミラーを介して目視した。

 思惟にふける時に直ぐ顔に出てしまう癖と、無意識に心の言葉を吐露とろしてしまうのはどうしたものか。


「いや、素朴な疑問なんだが……あの女は何故、治癒魔術を自身の体に施さなかったのかと思ってな。やはりそこは真正の魔術師と、そうでない魔術師の差異ということなのか?」

「ええっと。そこは、単純に魔術の適性が違ったからだと思います」

「と、いうと?」

「色々ありますが……私なら治癒に特化した魔術師。先ほど鮮血のミズキなら身体の強化に特化した魔術師。他には武器などを複製できる魔術師もいますね。実際に見たわけではないですが……」


 浅慮せんりょであった。シュウは、自分の浅ましさを身に染みて理解する。

 よくよく考えてみればそうだ。もしも、全ての魔術師が同じ魔術を使えるならば、ユイは自分自身で身を守れるのが道理だ。教授される身とはいえ、少しばかり馬鹿が過ぎた。


「他にも色々な魔術師はいますが、数を上げるとらちが明かないので……」


 言外に『察してくれ』とユイが苦笑してシュウを見やる。それを見たシュウは諦観した。


「溜飲が下がった……助かる」

「いえいえ」


 そうやって談話を交えているうちに街から離れ、気づけば田舎道を走っていた。賑わいを見せていた街とは真逆の静謐せいひつが周囲には満ちていた。


「と、そろそろ俺の家だ。話はまた後で頼む……仲間を説得してくる」

「説得?」

「あぁ、ユイをさらった、もとい買収した組織から雇われたとき、報酬金を家に送ると言われたから、家の住所を組織に教えたんだ……その時は言われるがままに従っていたが、今思えば、考えなしの自分に腹が立つ」


 熟慮じゅくりょしていれば、避けられたであろう危険。それを楽な仕事だと早決めした自分には忸怩じくじが絶えない。しかし、過ぎたことに拘泥する時間はシュウにはない。

 何をすべきかが分かっているのならば、それに向かって進むしか選択肢はないのだ。


「自分のせいで仲間が迷惑を被るってのは、胸糞すぎる」

「なら、私も家にお邪魔します。証拠人として、私がいた方が説得力もありますし……何より、時間も早く済みます」


 身体を後部座席から運転席まで乗り出し、ユイはシュウの応答を待つ。意気軒昂いきけんこうと汚れのない透徹とした双眸で見つめられてしまえば、断れるものも断れない。


「——わかった。ちょっと、癖のあるやつだから、流されないようにしてくれ……」


 シュウは破顔して、銀髪の少女を受け入れた。





 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※





「誰!? その娘!! 美少女!! そんな、私はシュウを女の子を攫ってくるような人間に育てた覚えはありません!!」


 再開早々の第一声が、謂われもない犯罪者扱いであった。

 明るみの増した茶髪を顎あたりで切り揃えたショートヘア。美しさと相反する幼さが混ざり合っていて、老若男女に好かれるような容貌の女性——エリサだ。


 玄関に靴を置き、シュウとユイの二人はエリサが待つシュウ宅へと入った。


「めちゃくちゃ綺麗な髪!! 銀髪!! そうがッ——」

「悪いが、エリサ……今は火急の時なんだ。いきなりで悪いが、俺の言う事を聞いてくれないか?」

「……は、はい。わかりました」


 シュウはエリサの手を持ち、目線を合わせてながら語った。

 頬を朱に染め、蠱惑こわくされたようにエリサは口を噤む。シュウが整然と語ったから、というよりかはシュウがエリサに言い寄られたから、と捉えた方が自然な流れだ。


「どうした……?」

「え!?」


 蚊帳かやの外だと思っていたのか、ユイは話題が自身に移ったことに驚嘆きょうたんした。


「あぁ、いや……何というか、すごいあっさりしていたなって……あはは、『但しイケメンに限る』ってやつですか……」


 苦笑いを浮かべ、ユイは誤魔化すように両手を左右に振る。後半部分を、彼女はぼそりと呟いたため、シュウには聴こえていない。

 そんなことを知りもしないシュウはユイからエリサへと視線を遷移させ、彼女から手を放し、


「時間が無いから、簡潔に話す」

「うん……」

「組織から裏切られた。俺と関りがあるお前には必ず危険が及ぶ。だから、迷惑を承知で、今日はおじさんの家に泊めてもらうことにした。当然アポなしだ」

「私はどうすれば?」


 言い終え、玄関から廊下の方へと走り出したシュウをエリサが止める。何をすればよいのか、エリサは自身の役割を飲み込めていないのだ。

 それもその筈だ。『言う通りにする』と、言ってはいるが、彼女からすれば突拍子のない事を告げられ、パニックになっているのだ。そのことを理解しているシュウにエリサを叱責する権利はない。


「本当に大事な物だけ持ってこい。それ以外の物は、荒らしておけ!」

「荒らしって、どうして?」

「急いで逃げたってのを装うんだ! 遠くに逃げたって思わせる寸法だ!」


 それだけで充分説明できたと思ったシュウは、急いで自室へと向かった。

 ドアを開け、クローゼット内にあった鞄を取る。タンスに最低限の着替え用の衣服を詰め込み、『急いだ』という形跡を残す。


「これは……?」


 机の上に置いてあった財布を取ろうとした時、シュウの目に写真立てが映った。真っ暗闇の部屋で、何故かその写真立てが言葉にし難い存在感を放っていた。


「かぁ、さん……なんで、ここに」


 写真立てが見えるようにシュウは机の明かりを点けた。任務に出かける前にはなかった写真立て。そして、写真立ての中には幼きシュウと、シュウの母であるツグハの写真が入ってあった。


「あ、あぁ……くそ、あ、たま……がぁ」


 鈍器で殴られるような痛みがシュウの頭を起点として、身体に伝播でんぱしていく。呼吸が荒くなり、酸欠を訴えかける嘔吐感や鈍痛。血液循環が低下し、血管が破裂しそうなほどの拒絶。


「なんで、こんな……時に」


 自室から出ようとした直後、脚の力が入らなくなり、シュウは廊下に倒れ込んだ。


 記憶が、トラウマが、師匠の顔が、最悪の惨状が、過去の塞がれていた記憶達が蘇る。


『これは、坊主の大切なもんだろ? なら、もう手放すんじゃねぇぞ』


 ——師匠が、シュウに写真を手渡す。


『わりぃ、シュウ……お前は俺を嫌いになると思う。だがな、許してくれ。お前は俺の希望なんだ……』


 ——何かに嘆きながら、師匠はシュウに謝った。


 そして、最後は——だが、直前にシュウの身体は恐慌状態に耐え切れず、歪んだ視界が黒に染まっていく。

 自分の中にあった一本の糸、何度も千切れては結びなおし、修繕しゅうぜんを施してきた糸が乖離する。


『少し乱暴だけど、君の望んだものが見られるはずだ……だから、後は君の選択次第……だよ。ふふふ』


 ——プツッ


 切れる音が聞こえたと同時、シュウは意識を失うのであった。

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