6,救世主とそっくりさん
「チートな力がばーんっていきなり手に入る、なんて都合良くは運ばないか。残念」
「ぶー。ないのかあ……残念……」
「あったらいいよね、そんな夢みたいな展開! お兄さんもそんな力あったらほしいよ! だが、残念だけどな、そんなものはないのだ。俺らは、いや我々は、地に足着けて、地道に堅実にいくしかないんだよ」
「ふむ。地に足着けて、とか、地道と堅実って言葉は、私、好きよ」
「おっ、もしかして、これって、初めての好印象……!? くう……長かった……これで少しは俺への当たりが柔らかく……」
「ちょっとオジさん、ぐちぐち独り言いってないで早く話しなさいよ。うざったい。こっちも忙しいし、そっちも時間がないんでしょ」
「なってなかった! 塩っ辛かった!」
「うん、このポテトチップス、塩辛かったねえ!」
「あー、そうだねえ。外国製は味が濃い目だから。やっぱり私は、薄塩が一番好きだなあ。そういえば、塩ついてないのも出てたよね」
「でてたよ。けど、あれは味ないよ〜! 美味しくない!」
「ジャガイモの味はするじゃない。素材の味が生きてるからいいんだよ、あれはあれで」
「えー」
「ちょっと! なんでいつの間にかチップスの話になってんの!? 話戻して!?」
「あ、ほにゃららんぎゅすの話してたんだった」
「ほにゃららんぎゅす!」
「はあ……疲れる……めっちゃ疲れるわ……最近の若い子のノリって、独特すぎる……」
「あら。ふふ……。だめよ、オジさん。ついてこれなくちゃ。ついてきて? でないと置いてかれちゃうわよ?」
「うるさいわ! そんな可愛い感じで可愛く言われても言葉の裏に忍ばされたダークな意味が胸に突き刺さるわ! まったく……それでだ。リガー師匠、監査委員のメンバー、協力的な魔導師たち数名で、この事態をどう収集すればいいのかを考えた。世界中の魔導師や戦闘部隊を掻き集めて突撃しても、どう考えても勝てる見込みはない。そこで俺たちは、機関の要でもある、情報集積機構──『グリッドソン』に今の状況においての最適解を求めた」
「グリッド村?」
「ぐりっとさん?」
「どっちも惜しいが微妙に違う。『グリッドソン』だ。お嬢さん方の世界で例えるなら、そうだな……スーパーコンピュータ、ってところかな。あれよりも遥かに凄えもんだけどな」
「へえー。見てみたいな」
「是非見てやってくれ。喜ぶぞ」
「喜ぶ? 誰が?」
「グリッドソンが」
「成る程。この件に関してはツッコミどころがいっぱいありそうだから、今は保留にしておくわ」
「ありがとさん。そうしてくれると助かるわ。話が進まねえからな。グリッドソンが導き出した事態収束の為の手順は、こうだ。まず、他世界から奴に似た人物を探して連れてくる」
「えっ。それっていきなりハードルが高くない?」
「おうよ。だが、グリッドソンの他の機能を全てオフにして、機構に残っているリソース、及び世界中から使えそうなリソースをありったけ食わせて最大出力で機構に登録されている他世界全てをサーチすることは可能、と言った。俺たちはそれに賭けた。何せ、他に手立てなんて何もないんだからな。やるしかない。見つからなけりゃ、終わりだ。世界も、俺たちも。だが──俺たちはその賭けに勝った。あんたの妹が検索条件のほぼ全てに該当して、ヒットしたんだ」
「私ー?」
「そうだ。三奈ちゃん。君は限りなく奴に等しい存在なんだよ」
「うーん。そっくりさん、ってこと?」
「ある意味、そうだな。君は、奴────ルヴィア・ソラスとほぼ同じ魂の遺伝子、肉体と精神体に流れる魔素の型を持っているのさ」
「んー。世界に三人は自分とそっくりな人がいる、とかは聞いた事あるけど。まさか、他の世界にもいるなんて……」
「ふおお、私のそっくりさん、あと二人もいるんだ!? わあー、どんなとこに住んでたりするんだろ。気になる〜!」
「まあ、三次元において『ヒト』を構成する各種要素は限られてるからな。組み合わせが似たようなものになる可能性は、低くは無い」
「おねーちゃんのそっくりさんも、オジさんの世界にいたりするのかな!?」
「えー。なんか、やだな」
「いるかもしれないし、いないかもしれない。サーチすれば分かるだろうが、そんなことに割けるリソースはもうない! 三奈ちゃんを探しだすのに使い切っちまったからな!」
「えー。なら、すっからかんってこと?」
「すっからかんさ! もう再サーチはできん。よってこれが失敗したら後がないのだ。なんという綱渡り仕事。嫌すぎる。胃が痛え。誰かに丸投げしてえ。そんで、他人事みたいな顔して離れた場所から、ああ大変だな頑張れよー、とか言いたい! けどそれをせずに頑張ってる俺って偉いと思わない!?」
「あー。うん。そうね。えらいえらい」
「うわ軽! 言い方、軽!!」
「えらーい! 頑張ってるオジさん、えらいー! パチパチパチ」
「三奈ちゃん……うう……ありがとう……」
「でも、完全に同じではないでしょう? コピーではないんだから。それでもいいの?」
「それでいい。しかも99パーセントは合致しているからな。残りの1パーセントくらいはどうにか誤魔化せる。ずっとじゃなくて、瞬間騙せたらいいんだ。それで事足りる」
「それって……何を、誰を、騙そうとしてるの?」
「──『DM;Bx43−b:; gn_s』を」
「ほにゃにゃらんぎゅす」
「ほにゃらららんぎゅす!」
「え、ちょっと待って、三奈ちゃん。ほにゃにゃらんぎゅす、じゃなかった?」
「違うよ、おねーちゃん! ほにゃらららんぎゅす、だったってば」
「えー、そうだったっけ? ほにゃらにゃんぎゅす、だった気がするんだけど」
「違うよー、ほにゃらんらんにゃぎゅす、あえ? なんだったっけ、ほにゃら──」
「あーもーなんでもいーわ!! ほにゃらん、でも、ほにゃららんぎゅす、でもなんでもいいから、とりあえず話、進めていいかな!?」
「あっ、それだ!」
「それだー! オジさん、すごーい!」
「どうも……。褒められても、うれしくねえ……」