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【ゲームブック】プロジェクト・ピュアブルー

作者: RAMネコ

0.海底

 汎地球人類が滅ぼされても、彼らが根源から分割した遺骸の多くは銀河に残されている。これは酷く厄介な災厄として、ウィズ以上の直接的な脅威となっていた。

 星樹評議会の征伐艦隊さえ幾つか行方不明になる敵が無数に生まれているのだ。

 汎地球人類の遺産を聖遺物とする聖典派もいるが、悔恨派を始め、星樹評議会の主流は汎地球人類系の遺物の調査と破壊だ。

 僅か数百年というあまりにも早すぎる文明の進捗と、爆発的というのも小さな表現になる影響力の拡大は神話の類と同じであり、その異質な存在は、宇宙をいくつも包む星樹を管理する星樹評議会にとっても、あまりにも理解不能な存在だ。

 ゾラ1の海底には、そんな汎地球人類の遺産らしいものが発見された。すぐさま最近傍の探査艦隊シュクトリウムが手繰り寄せられ、第一中隊が海底施設に突入した。

 シュクトリウムの最精鋭。

 滅殺型動力甲冑を着た全環境対応兵らは僅か五〇時間後、完全に連絡が途絶した。

 救援に向かった第二、第三中隊が海底施設で交戦を開始する。

 メルタフレイマー装備の第三中隊の一部が主電源の復活に成功。

 ギロチンシャッターの再起動に成功した生存者は、一時的に確保された通路を経由して脱出を目指す。

 同時刻、主電源の再稼働により封印指定が全て解除され、施設内の生命体に投与されていた循環式安定剤の投与が停止された。

 とは言え、君には関係の薄いことだ。

 始めてくれ……1へ。


1.PBの部屋

 女の子の裸だ。

 コンディション:イエロー。

 少し警戒を見せているようだ。

 美しい彼女は、君の知る人間ではない。

 君が著しく人類種から逸脱したミュータントなら別だが。

 君がどれほどの鈍感でも、彼女の目覚めに気がつくことはできるだろう。

「い、しゅとばー」

 眠り姫だった彼女の名前はPBだ。

 君が周囲を見れば、壁そのものが白く光る照明になった部屋だとわかる。眩しくはない。部屋にはいくつかの物が転がっている。


 ドアを調べる、5へ。

 ベッドを調べる、6へ☝︎

 机を調べる、7へ☝︎

 壁を調べる、8へ☝︎


2.エルストボーデン

 ジャングルだ。

 壁面の構造から、何かの部屋だとはわかる。だが木々とも緑あるいは黒の肉塊ともつかないものでほとんど覆われている。

 生体汚泥を侵食する強化植物だ。この施設が封印されたから、両者はお互いの生存圏を拡大している。

 危険なものだが、PBは興味津々に突いて遊んでいる。


 この場所へ入るたびに半日が経過する。


 2日めなら、40へ。

 4日めなら、50へ。


 壁の落書きを見る、4へ☝︎

 壊れたドアが見える、5へ☝︎

 植物を見る、12へ☝︎

 照明を見る、13へ☝︎

 ロボットを見る、14へ☝︎

 ツヴァイトシュトックへ行く、17へ。


3.ジャック3

 あぁ……まったく、まさかPBを使ってこんな場所まで見つけるとは思っていなかった。火星のマシーネンフォボス、ゴールデンヘッドの名折れそのものだよ。どれもこれもすでに消え去ったものでしかないがね。

 GH21、21番目の素体が私だ。

 今は、そして最後になるだろう役職は、Fボートの封印だよ。つまりはこの施設のことだが、どこかのエイリアンに破られたから、もはや意味を持たないものだがね。

 PBは元気にやっているか?

 だが、残念だ。

 君がここを終着点にする他ないのなら、早すぎた結末というものだろうか。

 まあいい。

 PBにはお茶をだそう。

 二度と、彼女はこの世界からは出られないのだ。

 のんびりしていきたまえ?


-end?-


4.壁の落書き

 奇妙な落書きを見る。

 単純な絵だ。

 道具を使っているようには見えない。

 注意深く見れば、その筆跡はPBの体の爪、指、触手、掌などと一致することがわかる。

 当のPBは首を傾げていて、知らない絵のようだ。もしかしたらPBではない誰かがこの絵を描いたのかもしれない。


5.壊れたドア

 ドアノブがないドアだ。鍵のようなものもあったのだろうが、今は全て解除されている。


 PBの部屋(1)にいるなら

 エルストボーデンへ出る、2へ。


 エルストボーデン(2)にいるなら、

 PBの部屋へ入る、1へ。

 医務室へ入る、9へ。

 実験室Aへ入る、18へ。

 実験室Bへ入る、19へ。

 警備室へ入る、20へ。


 ツヴァイトシュトック(17)にいるなら、

 微細動するドアの先へ入る、37へ


 ドライシュトック(45)にいるなら、

 シャトル発着場へ入る、47へ。

 水耕プラントへ入る、48へ。


6.PBのベッド

 PBが眠っていたベッドだ。

 壁の中に埋め込まれていて、六角形、蜂の巣のような構造になっている。他のベッドにも誰か入っているのかは、曇っていて見えない。操作するパネルもなくこれ以上は動かせないだろう。

 中は硬い素材ではなく、骨や筋肉に優しい柔軟素材だ。

 人工生体で作られていて、この構造体そのものがAIの知能を持っている。つまりはベッドが考えてPBを癒すということだ。

 実験体の保管を目的にしているような無味乾燥の感はある。だがPBが眠っていた枕元にはいくらかのヌイグルミが並んでいた。PBは愛おしそうに転がしている。

 君は、走り書きのメモを見つけた。

『PBのコンディションは不安定だ。グリーン、イエロー、レッドの順番で攻撃性を増していくが、逆に観察能力を失っていく。推移は段階的ではない、PBはとても感情の推移が激しいことに注意してくれ。……とはいえ我々の娘は穏やかだろう。今しばらくは良い夢を見させてやってくれ』


7.机のメモ


 二度目以降では自動的に失敗する。


 コンディションチェック。

 成功:グリーン。


 成功なら

 PBについての警告が走り書きされた耐性紙、石の紙を読み解く。資料A、資料Bに同等の情報を君はえた。だがそれをPBへ教えても教えなくてもいい。

 以下の情報をえる。

 PBには生体デザインの失敗で過度な自壊細胞を作り出してしまう。これを抑制するためには、崩壊塩基が封入された遺伝子キャップをメディポーチに入っている道具でPBの体へ打つ必要がある。

 PBの肉体が完全に分解されるまでの猶予は、およそ72時間、3日が期限である。


 資料A、資料Bの内容を熟読し、PBに対して深い知識をえた。実験室A、実験室Bのパラグラフに10を足した番号へ飛んでもいい。

 

 失敗なら

 ただの紙屑になる。


8.壁の湿気


 コンディションチェック。

 成功:グリーン。


 成功なら

 君は変に湿っていることに気がつける。僅かに磯臭いのは、まるで海底にあったものが浮上したからのようだ。だがそんなものはどこにもなく、ジャングルと呼べるだけの植生が部屋を覆っていることに違和感があるかもしれない。

 壁の塩気は、天井まで満ちているようだ。

 水没していた、ということをPBは察したのかコンディション:イエローに変化する。


 失敗なら

 特に何かに気がつくということはないだろう。

 PBは無邪気に植物で遊んでいる。

 コンディション:グリーンに変化する。


9.医務室

 PBは棚に並ぶ本や小瓶などに興味を示している。しかし、医務室と言うよりはまるで巨大な野戦病院のようだ。調べ物は、一室だからと気楽にはいかないだろう。

 医務室に戻るたびに半日が経過することに気をつけてくれ。


 2日めなら、40へ。

 4日めなら、50へ。


 資料保管庫の、


 資料Aを見るなら、61へ☝︎

 資料Bを見るなら、62へ☝︎

 資料Cを見るなら、63へ☝︎

 資料Dを見るなら、64へ☝︎


 骨格標本を見る、10へ☝︎

 レントゲン写真を見る、11へ☝︎


10.骨格標本

 奇妙な動物だ、と君ならば感じるだろう。象でも猫でもインコでもなければ鯨でも、ましてジンベイザメでないのだからクワガタムシでもない。君の知るよしのない生物の標本なのだが、PBに似ている気がすることだろう。


11.レントゲン写真

 白い影が骨と臓器のシルエットを写している。バックにライトがないので詳細は分かりにくいが、どこかPBではないのかと君ならば推測できる。


12.植物

 変哲のない植物だ。葉緑体から光合成をしている。PBは親しみを覚えたのか、植物と遊ぶことで警戒心が緩和された。


 コンディション:グリーンに変化する。


13.照明

 極短いサイクルで明滅を繰り返しているらしい。君はわからないだろうが、PBは酷く不快感を覚えて尻尾で床を叩き始めた。


 コンディション:イエローに変化する。


14.ロボット

 壊れてしまったロボットだ。死んだのは随分と昔だが、脊髄反射は残っている。好奇心で触ったPBに反応して突然動き、驚いたPBは警戒心を跳ねあげた。

 PBはご立腹だ。


 コンディション:レッドに変化する。


 よく見ればこのロボットには、『くたばれゴールデンヘッド!』とののしる言葉が彫られている。……過去によほどの悪戯好きがいたらしい。

 悪戯なロボットをもし、これ以外で見つけたのであれば、そのパラグラフに10足した数のパラグラフへジャンプしてもいい。


15.ロッカー

 金属製のロッカーだ。タッチパネル操作ができるタイプらしい。鍵は開いていて、PBが簡単に中を見ることができた。

 ロッカーの内側に直接刻まれた文字を見つけることができる。

『WESがいる』


16.コントロールパネル

 PBは賢い。コントロールパネルの操作方法を学んでいる。モニターに過去の映像が流れた。長い時間が飛んで、再稼働を始めたのはPBの目覚めのほんの数日前からなようだ。人間ではない。

 監視カメラの過去が再生される、51へ。


17.ツヴァイトシュトック

 壊れたオートドアが開閉を繰り返している。PBが鼻をしかめた。

 酷い悪臭が、闇の先から流れてくる。


 この場所を訪れるたび半日の時間が進む。


 2日めなら、40へ。

 4日めなら、50へ。


 壊れたオートドアが見える、5へ☝︎

 植物を見る、12へ☝︎

 照明を見る、13へ☝︎

 ロボットを見る、14へ☝︎

 ギロチンシャッターに隙間が……、22へ☝︎

 臭いの元を追うなら、37へ。


18.実験室A

 何重ものエアロックや、中が透けて見える作業部屋が入れ子構造だ。だがその全てのロックは外れている。

 実験室Aに入るたびに半日が経過する。


 2日めなら、40へ。

 4日めなら、50へ。


 エルストボーデンへ戻る、2へ。


 研究員Aの記録、30へ☝︎

 研究員Bの記録、31へ☝︎

 研究員Cの記録、32へ☝︎


19.実験室B

 無数の作業台と、同じ数だけの照明が天井から下がっている。部屋の照明そのものは暗いが、作業台の周囲は明るい。どこか水族館のような雰囲気だ。

 実験室Bに入るたびに半日が経過する。


 2日めなら、40へ。

 4日めなら、50へ。


 エルストボーデンへ戻る、2へ。


 研究員Dの記録、33☝︎

 研究員Eの記録、34☝︎

 研究員Fの記録、35☝︎


20.警備室

 病的に白い空間だ。小綺麗でもある。コンソールは生きているが、少なくともPBが適当に押しているだけでは変化はない。

 ふむん……。

 もしかしたら、賢い天才だろう君なら、奇跡が起きて、原始猿のように叩けば動くかもしれないが……残念なことに君は声以上でも以下でもない。コンソールを動かす方法を知っている必要があるのだ。まあ問題なく動くだろう。


 エルストボーデンへ戻る、2へ。

 もし動かしかたを知っている……知っていなくても『君』で動く、16へ。


 すでにジャックした後ならば、以下に分岐する。


 エイリアンログとして、ワンコ耳のことをPBは学習した。ゾラ星系に関するパラグラフをこれ以降に踏んだとき、そのバラグラフ番号に21を足して良い。


21.ドロドロ


 コンディション:チェック。

 成功:レッド。


 成功

 PBは生体汚泥の襲撃をかわし無事だった!

 17へ戻れ。


 失敗

 PBは生体汚泥に深い傷を負わせられた。傷を癒すことに半日を費やす。

 これ以降、PBは生体汚泥に関する全てのコンディションチェックを、どれでも自動成功にしてもいい。

 17へ戻れ。


22.生体汚泥

 液体のようにブヨブヨとした肉塊だ。腐った肉の海、酷い悪臭の正体で、それは広く、深い。先に進む為には、PBにこの肉のプールを蛆のように泳いでもらう他ないだろう。きっと酷く嫌がる。

 彼女を説得できる、大きな理由がなければ彼女は前へ進むことはないだろう。だがもし、説得ができるのならば23へ行ってくれる。

 君が無理をさせるなら、PBは嫌々でも従ってくれるだろう。


 生体汚泥を調べるなら、21へ。


23.肉の海

 ギロチンシャッターを再起動できれば、この不快な肉の海はことごとく黒焦げにできるはずだ。生体汚泥を全滅させれば、各区画を再封印している肉塊を取り除けられる。しかしこの生体汚泥、『生きている』ことには間違いないが……。


 PBはギロチンシャッターを降ろす為に、25へ。


24.崩壊止め

 私に何かようかな。すでに『死体』だというのに時間を無駄にするべきではない。君は永久の時間を過ごせるかもしれないが、PBの時間はとても短いのだ。

 安心したまえ。

 この世界にいるかぎり、PBの時間は固定される。体感としてはね。バーチャルダイブのゲームで、脳と意識の探査は解明されている。

 意識で生きていられることだろう。

 肉体が滅びるその後もね。


-end?-


25.大親玉

 生体汚泥の原因を見つけた!


 ギロチンシャッターはチャージを終えている。


 ギロチンを断頭する、26へ。

 ギロチンから放電する、27へ。


26.黒焦げと切断

 レールガンのように下へ射出されたギロチンシャッターは生体汚泥を切断し、大電流を解放した。

 生体汚泥は消し炭となりボロボロと崩れた。はびこっていた全ての生体汚泥は時期に死滅するだろう。

 17へ戻れ。


27.肉断ちのゲート

 鋭利なゲートが遮断する。切断されて別れた生体汚泥は、不活性化して縮んでいた。

 17へ戻れ。


28.事故

 ログを再生する。

「実験体が酷く不安定だ。早急に解決策をとらなければ、彼女の体は完全に酵素分解されてしまう!」

「焦る気持ちはわかる。だが、PBの遺伝子情報は封印対象だ。もう時間がない」

「解決手段がなければ、二度目はないんだぞ!?」

「ならばどうする? 繰り返すがもう時間はないのだ。我々は退場するのに残すことはできない。無論、この場所にいることも」

「だからだろう! 何かせめて……」

 ログを終了する。


 君はPBの体について詳しく知った。


29.欠陥

 ログを再生する。

「崩壊体の原因がわかった。全ては遅すぎた解明だが……」

「それで? 崩壊塩基とやらはどうした」

「人間の関与しない条件を43通りの手段で合成できる準備を備えた。どれか1つでも残ってくれれば……」

「封印を解いた知的生命体に期待しよう」

「崩壊塩基、遺伝子キャップ、メディポーチは別々に保存することにしたよ。星樹評議会が本気なら、人間の足跡の全てを消す可能性があるからね」

 ログを終了する。


 君はPBの崩壊を食い止める方法を知った。


30.研究員Aの記録

「PB-Ⅱかわいいのでは?」

「発言の意図を理解しかねる」

「この! 黄金卿、随分と賢ぶるような発言じゃないか。普段のお前と違って、賢く見える」

「私は元々知的な存在を自認しているし、第2種生命体であると、汎地球憲章と銀杯条約に記されている」

「機械生命体を含めた有知性種の定義だな」


31.研究員Bの記録

「ゴールデンヘッドの悪戯に対しては、プラズマグレネードを吸着させ頭以外を蒸発させる報復が極めて有効です」

「……アレはどうしてフォボスごと来たのだろうな。よくわからん」

「金属生命体といえば、敵対的知的金属生命軍の続報ですが……」

「動きがあったのか? まったく、滅びまで秒読みなのに敵に追われるか」

「同盟種族が先遣を撃破したそうです」

「ありえん……戦闘艦隊と同規模の戦力だぞ。失礼だが、同盟種族は弱小ばかりだ」

「未知の兵器を投入したと言っていますが、どうやら魔女が腰をあげた、と」

「魔女め」

「星樹評議会の艦隊が動いています。魔女絡みでしょう」

「銀河どころか宇宙を渡って苦労なことだ」


32.研究員Cの記録

「海洋資源から缶詰めを製造する、缶詰め部から苦情が来ている」

「誰かが、人工ナマコを混ぜたな!」

「人工食べ物で遊ぶんじゃない。暴走すればプラント事故の悲劇を繰り返すぞ。あのときは、異常増殖した人工筋細胞を相手にパイプ椅子で学者が戦わざるをえなかった」

「どうなったのですか?」

「メルタフレイマーを装備した特殊保安チームが焼き払うまでに、全職員の99%が死亡した」


33.研究員Dの記録

「ファンタズマゴリアシリーズに本施設がリングごと取り込まれるらしい。元々そういう話ではあったが、基地を丸々と宇宙船に格納するというのは、スケールが大きな話である」

「我々が消えたあとはどうなるのでしょうか?」

「我々は消えるが、我々の全てを消す必要はない。そして我々とは、血と頭の中の記憶だけで継承されるものでもない」

「無念です。やはりイーターズがらみでは間違っていたのでしょうか」

「理解することが罪ならばな。我々は消される。だが、ただでは死なない。先史からそうであるように、我々は残すのだ」


34.研究員Eの記録

「外宇宙探査艦隊の第1陣が出発している。我々も急いだほうがいいだろう」

「人類がより大きく飛躍するためにも、我々は我々の義務をもっている……と、思う」

「星樹評議会のメンバーとなるとは、予想外です」

「実感ないな。銀河団どころか宇宙、宇宙群をいくつも管理する……なんだ?」

「星樹ですよ」

「それだ。星樹という超巨大な単位を勢力にする星樹評議会なんぞ、とても俺たちと同じものの考え方とは思えない。逆になんでわかるんだ?」

「俗物だからでしょうか?」

「時間の概念もどうだか。過去と未来がひっくり返ることもありえそうだぞ。奴らに時間というものは決定的に違うだろうな」


35.研究員Fの記録

「タイプ・ケンタウロスの小娘、なんであんなに凶暴なんだ! 担当を調べて問い詰めてやるぞ!」

「デミを大量に作るとは、金星の魔女は変わらず何も教えてはくれない」

「現在の生産種族は?」

「タイプ・マーメイド、タイプ・フェアリー、タイプ・ゴルゴンはすでに量産が進んでいます。時期にBOTと並ぶ人造知的種族と肩を並べてくれるでしょう」

「知性のある種族、か」


36.モンスターハウス

 生体検知器に反応しない、空気の動きがあった。

 PBは対応が遅れている。


 コンディション・チェック。

 成功:イエロー、レッド。


 成功なら

 怪物の襲撃だ!

 だが油断していなかったPBがなますした。

 怪物はバラバラだ。

 17へ戻れ。


 失敗なら

 油断していたPBは傷を負う。浅くはなく、癒すのに半日を費やした。

 17へ戻れ。


37.封印エリア

 硬化剤が腐食して崩れているが、代わりに生体汚泥が詰まっている。しかも硬く変成しているのでPBでも進むことは不可能だ。


 ただし、生体汚泥の元凶を破壊している、あるいは三日目以降ならば38へ進むことができる。


 進むことができず、戻るならば36へ。


38.交差

 今がPBの目覚めから2日以前ならば……

 エイリアンを見つける。装甲の服を着ていて、ポケットには『遺伝子キャップ』が入っていた。過去にこのエイリアンが崩壊塩基を手に入れているのならば、この遺伝子キャップには崩壊塩基が充填されている。


 ただし、PBの自壊に関するなんらかの情報を見つけていなければ、君はきっと遺伝子キャップの存在も崩壊塩基の存在も気に留めることはない。


 44へ。


 今がPBの目覚めから2日以後ならば……

 何かがあったのだろう破片が転がっている。


 44へ。


39.


40.2日目の変化

……君の声、そしてPBが目覚めてしまってから2日がたっている。

 PBは……酷くおびえている。

 昨日までの、無垢な子供のような天満さはない。それもそうだろう。彼女の体の分解が始まっている。溶け始めた体が泡立ち、今にも崩れ落ちそうになるたびに、彼女の体はなんとか再生して持ち直す。繰り返しだ。


 希望はある! PBを励まし、君の心が彼女を支えられる固い決意をまだ持てるのなら、助けてくれ。41へ


 助からない可能性が高い。最後の情けをPBにかけるなら……46へ。


41.一人じゃなかった

 大丈夫だ、と君は声するだろう。あるいはしてしまったのだ。

 君はPBに、帰ろうと言う。彼女の部屋へ、それで彼女も少しは、紛らうだろうと信じる。1へ。


 PBに君が寄り添うなら、42へ寄り道してもいい。

 あるいはPBにーー君が本心ではないと信じているよーー厳しい言葉をかけるならば43へ寄り道してもいい。


42.頼りない言葉


 コンディション・グリーンへ変わる。


 PBの部屋、1へ。


43.厳しい言葉


 コンディション・レッドへ変わる。


 PBの部屋、1へ。


44. ドライシュトック

 沢山の人間がいたのだろう面影がある。人が休むベンチ、子供を預ける託児所、窓から見える外の景色は暗いものでしかないが、かつては違ったはずだ。


 この場所を訪れるたび半日が経過する。


 2日めなら、40へ。

 4日めなら、50へ。


 壊れたドアが見える、5へ。

 植物を見る、12へ☝︎

 照明を見る、13へ☝︎

 ロボットを見る、14へ☝︎

 シャトル発着場の標識が見える、47へ☝︎

 水耕プラントの標識が見える、48へ☝︎


45.大きな体

 諦めたよ。

 PBも嬉しそうだ。

 施設の全てを開示することにしよう。もっともすでに多くを知っているからこそ、このゾーンの私にジャックしているのだろうがね。

 脱出手段は何も、ドライシュトックのシャトルだけではない。仮にシャトルを使うにしてもそのままでは使えないだろう。

 PB自身に、脱出の手段を増設することもできるのではないか?

 ムーンキャッチャーというものがあるが……。

 PBはつぶらな瞳を、変わらずに光らせている。

 必要はないだろう。

 君、PBが話している。

 話を聞いてあげるべきだろう。

 長い……長い話になることを祈っているよ。


-end?-


46.子守唄

 触れることも叶わず。彼女を楽にすることも叶わず。君は酷く無力で、PBの……彼女の死の、その瞬間までを見つめていることしかできない。

 不幸、あるいは幸福なことは、PBはたったそれだけで恐怖を克服できてしまった。彼女は、一人じゃないから平気だと言わんばかりに、元気を取り戻す。

 しかし、崩壊する体が止まるわけではない。

 ゆっくりと彼女は崩れていった。


-end-


47.シャトル発着場

 生体汚泥とは違って、生きた植物が人工物を覆い尽くしている。

 何隻かのシャトルを見つけたが、そのほとんどはひとめ見ただけで壊れているようだとわかる。大質量で、粘土細工のようにペシャンコなシャトルがまだ使えると言うのならば、君は科学というものに無知と言えるだろう。

 とはいえ、数はある。使えなくても、『使えるようにすることは可能かも知れない』のだが……。


 シャトルに乗り込むなら、67へ。

 待合室へ行くなら、68へ。

 管制室に行くなら、69へ。


48.水耕プラント

 水没している。PBの足元に水が染み出した。どうやら巨大な森林になっているようだ。水耕プラントの生命体が無秩序に成長したからだろう。

 妙だな。

 君にはわからないだろうが、酸素分子がおかしな動きをしている。不可解に揺れているんだ。勿論、一般的な風や原子の運動ではない。より意図的に、何かが使われている?


 コンディションチェック。


 グリーンなら、70へ。

 イエローなら、71へ。

 レッドなら、72へ。


 この場所へ来るのが2度目なら、90か91、選択したパラグラフへ自動的に行く。


49.


50.タイムリミット

 君に失望を感じないと言えば、嘘となるだろう。PBは最後まで君を信じていた。君は応えられなかった。だから、PBは死ぬ。

 それだけのことなのだ。

 もし、崩壊塩基を抑制するチップと道具があれば、彼女の命を助けられたかもしれない。だがもうよいのだ。彼女は時期に死ぬだろう。

『私』はここから逃げることはできない。

 君はどこにでも行けるだろう。

 さぁ、もう行きたまえ。

 これは終わりだ。


-end-


51.ジャック1

 おやおや。ワンコ耳の諸兄がクラス2の服でまだ、こんな場所にこんな数で生きているではないか。素晴らしい。素晴らしいが、エイリアンだ。ゼノ・バスターズの一個班でもいれば掃討できるというに……。

 映像は過去だ。しかし未来にもなる。

 PBは時間という流れに定点を持たない。


 エイリアンをジャックする、52へ。

 エイリアンをひとまず観察する、53へ☝︎


52.過去干渉

 ワンコ耳の一人は、極自然に、望み通りに動いた。確定した過去なのにおかしいなんて、君は時間の浪費にしかならない疑問をまさか抱きはしないと信じているよ。


 傷ついているワンコ耳をジャックするなら、54へ。

 メットルの中で険しそうなワンコ耳なら、55へ。

 アーマーの表面が焼け爛れたワンコ耳なら、56へ。


53.ワンコ耳

 PBはワンコ耳のエイリアン達を観察する。一見は重装備で精鋭風だ。


54.浸食

 どうやらワンコ耳は、神経寄生体とも交戦したようだ。手足の不規則な震えと破られた装甲の中には、根を張った生命体が神経を置き換えている。

 神経寄生体が何か気になるか?

 もっと知りたいなら58へ。


55.残された時間

 ワンコ・リーダーと呼ぶことにしよう。彼は自分がエイリアンになったことを酷く後悔している。救援を待っているようだが、望みは薄い。待機している潜水艦は海洋棲大型生物のせいで既に圧壊しているからだ。

 リーダーは嘘を吐いている。

 助けは必ずくる、と57へ。


56.待ってられない!

 負傷者、あるいは軽傷のワンコ・スカーは生きる為の意見具申を叩きつけた59へ。


57.研究所跡

 ワンコ・リーダーはまたしても研究所跡に戻ってきた。悲劇の場所であり、不気味な場所。いくつもの保管機の中身は見えていて、いくつかの保管機は割れて中の液体を流している。それはまだ乾いてはいない。60へ。


58.時間稼ぎ

 寄生体は恐るべき存在だ。だが、助からないわけではない……ワンコ・パラサイターは『確信を突然に閃めいた』ようだ。60へ。


59.脱出の可能性

 分厚い入り口をワンコ・スカーは、生きている間に開くことはない。別の脱出手段が必要だと訴えた。それには、深層にあるシャトルが使える、とも。


 ジャックを解除して、20へ。


60.得体の知れない

 ワンコ耳を助ける手段を探す為に手分けするが、彼らは内心で緊張を隠せないらしい。

 物音が聞こえる……。


 ジャックを解除して、20へ。


61.資料A

 PBは崩壊塩基を摂取し続けなければ、自分自身の遺伝子情報を喰らい、最終的には自己摂食という現象を引き起こしてしまうということはすでに確認されている。

 幸い、これへの対処法は確立された。

 単純だ。

 餌を与え続ければいい。


 崩壊止めのパラグラフを踏んだとき、 パラグラフに21を足しても良い。


62.資料B

 遺伝子キャップの規格と共通化している。メディポーチに標準の応急具でPBの自己摂食を止めることはできるだろう。ただし3日以内に、対処できなければ、PBは死んでしまう。

 72時間だ。

 研究が進めば、より長く……。


 大きな体のパラグラフを踏んだとき、パラグラフに21を足しても良い。


63.資料C

 PBは極めて好奇心が旺盛だ。

 この人工生命体は、地球に棲息する怪獣をベースにしていると聞くが真偽は定かではない。

 少なくとも観察の最中に、彼女の高い攻撃性は見受けられない。


64.資料D

 PBの攻撃性に対する危惧の報告。

 戦闘実験5号での事件。

 レベル5の防護壁の溶融により、PBのもつ粒子加速ビームの破壊力は、想定よりも600%以上の上方修整が必要である。


65.


66.ゾラ星系の人

 21世紀ほどの汎地球人と同じ文明レベルだ。部分的にはリフトアップで……あぁ、すまない。PB、君が来ているとは気がつかなかった。

 PBは外の景色を見つめている。

 巨大な赤色恒星だ。

 ゾラ星系の太陽であり、全ての母でもある。

 いくつもの生命を育む惑星の母である。

 PBは、太陽系の太陽とはまるで別物の赤い星に興味津々だ。

 好奇心旺盛。

 狭い施設などあっという間に飛び出してしまう。

 そんな無限の力を秘めている。

 PBの体は、徐々に崩壊が進んでいた。


-end?-


67.シャトル

 煤けた船内をPBが窮屈に、お尻と尻尾を揺らしながら押しのけていく。

 どうやら壊れているようだ。

 本格的な修理さえできれば動かせそうだが、PBには知識も道具も無いし、手も足りない。不可能だろう。


 もしシャトルを、今、あるいは過去に修復しているのなら、89へ。


68.待合室

 PBがベンチにちょこんと腰掛ける。

 パタパタと尻尾を揺らしている。

 特には何もなさそうだ。

 錆びた、そして黄金色の機械が転がっている。


 もし、コンディション:グリーンであれば、床下の端末を見つけることができるだろう。


 PBに教えたならば、彼女はガリガリと引っ掻いてこれを跳ね上げる。

 使えそうだ。

 

 ジャックするなら、3へ。


69.管制室

 逞ましい雑草をPBがかき分ける。

 操作できそうなコンソールを見つけた。

 PBは遊んでいるが、代わりに君がログを見つけた。


 ジャックして過去へ行くなら、73へ。


 もし、管制室へ入るのが2回目以降であれば、PBはジャックする集中力も興味も失っている。


 ドライシュトックへ戻る、44へ。


70.攻撃性植物

 PBをペシペシと木の根が叩いてくる。バネ仕掛けのようにしなって、刃物のように鋭利で金属質な根だ。

 叩かれるたびに、PBの頭はボヨヨンと揺れる。

 PBは戸惑っている。

 君の選択が必要だ。


 勘で選べ。


 90へ。

 91へ。


71.対話不能の根

 PBは流石に植物の無口と会話はできない。

 PBは戸惑っている。

 君の選択が必要だ。


 勘で選べ。


 90へ。

 91へ。


72.せっかちな木

 植物から紫電が走る。発電しているのだ。

 PBは戸惑っている。

 君の選択が必要だ。


 勘で選べ。


 90へ。

 91へ。


73.ジャック2

 ボロボロのワンコ耳の集団がいる。ワンコ耳は独自の脱出手段を準備している。毒にも等しい傷を治す手段を集め、施設から外に出るためのビークルの修理に手を出していた。

 だがまだ、脱出には不足している。


 ワンコ耳の異常に耳を傾けるなら、74へ。

 脱出手段を検討させるなら、75へ。


74.ノイズ

 幻聴はワンコ耳を襲っている。精神スキャンに異常はない。なんらかの精神波を受けているのだと診断だ。

 これでは足りない人手がさらに不足してしまうだろう。精神波のノイズ、その発生源を止めなければ。


 悲しいことに、成功か失敗かはPBの興味にはないらしい。


 なんらかの植物が関係しているということは、ワンコ耳の推測からわかった。


 ジャックを解いて、69へ戻る。


75.影が這う魔物

 奇妙な報告を君は立ち聞いた。影が襲ってきた、と。

 この施設では影になれる怪物はまったく存在してはいない。つまりはワンコ耳が見たと錯覚しているだけのはずだが、怪異同然の存在と戦い疲弊していくばかりのワンコ耳らにはわからないことだ。


 悲しいことに、成功か失敗かはPBの興味にはないらしい。


 だが、ワンコ耳は、PBの過去干渉によってシャトル発着場へと向かった。


 もし、


 PBが生体汚泥をギロチンシャッターで完全に焼き払っていたならば、76へ。


 もし、


 PBが生体汚泥の切断だけで済ませていたならば、このワンコ耳は壊滅するだろう、77へ。


 ジャックを解いて、71へ。

 

76. 消し炭と結晶


 ワンコ耳はそれが何かを理解することもなく安全に、壊れたシャトルへと辿り着くと、修理を開始した。


 門番のように立ち塞がる怪物とは遭遇しなかったので安全に修理を完了する。


 ジャックを解いて、71へ。


77. 壊滅


 ワンコ耳は、生体汚泥に呑み込まれて壊滅してしまった。


 ジャックを解いて、71へ。


78.


79.


80.


81.


82.


83.


84.


85.


86.


87.新人類の巣立ち

 PBは新しい、あるいは予備の巨大な体ムーンキャッチャーを手に入れている。彼女の体にもよく馴染んでいる。

……。

 君は疑問に思うだろうか。

 用意されていたということは、準備があったということだろう。

 PBが飽きるその日がいつ来るのかは誰にもわからないが、ムーンキャッチャーを手に入れた彼女は、シャトルとは桁違いの加速で海面を吹き飛ばし、飛び去るだろう。


-end-


88.


89.脱出

 シャトルがオートキャプテンに従って動き始める。巨大なキャッチャークレーンがPBの乗るシャトルを掴んで、発進位置へと全て自動的に整えた。

 注水のアナウンスで、見る見るうちに水がシャトルを沈めていき、PBの尻尾はピンッと緊張した。だは杞憂だ。

 シャトルは安全に、仄暗い深海へと飛び出し、施設を背中にした。


 コンディション:イエローなら、96

 コンディション:グリーンなら、97

 コンディション:レッドなら、98


90.エルフ

 水耕プラントで、人型の植物がPBを迎えた。樹木と同じような皮質を持っているが、筋肉とは違う筋肉に似たシステムを発達させたもので自由に動いている。


 48へ戻る。


91.滅びた時間

 PBの花に枯葉が落ちる。

 水耕プラント全体の植物が枯れ始めていた。来年、再来年で死に絶えるわけではない。だが、ここの植物は死んだのだ。

 PBの掌に乗った葉が、パリパリと崩れた。


 48へ戻る。


92.


93.


94.


95.


96.緑の使者

 PBは穏やかな心で歌っている。

 コンディション・グリーン。怪物とは言えない温厚さだ。彼女を傷つけられる存在がほとんど存在しないからには、彼女はこの穏やかを乱すことは、まずないことだろう。

 呑気なものだ。

 PBは、どこまでも続く暗い深海、退屈なはずのそれに、いつまでも目を輝かせていた。


-end-


97.警戒色

 PBの目は警戒に鋭い。君の声には幾らか心を許している。だが、それ以外の存在には……今少しの時間が必要だろう。

 だがきっと、いつかは……。


-end-


98.解き放たれた獣

 なんということだ。まったく、PBにこれほどの攻撃性を目覚めさせるとは驚きだよ。

 本来の怪獣細胞としては、正しい姿ではある。かつて地球を襲った数々の怪獣は、片時でも人類そのものの脅威となった。サイズの問題ではないのだ。

 PBの乗るシャトルは急速に浮上している。

 地球ではない星々に、PBが放たれる。


-end-


99.PURE-BLUE

 Push……!

 PBはメディポーチの無針銃に遺伝子キャップをセットして、適当な体へ撃った。崩壊塩基がPBの体を補修する手助けになるまで、そう時間はかからない。

 君はPBに聞いた。

 これからどうするのか?と。

 PBは首を横に振るばかりだった。


-end-

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