8 筋肉の女
ユキは両親と別れを告げ無事に魔剣リディアを手に入れた事で少し気分が晴れていた。
一方マサトは一応ユキの父親であるレオンの所有物はエルランド王国の法律でユキの所有物だと分かっていても、泥棒のような事をしている自分を見て悲しくなってきた。そんなマサトをお構い無しにユキは
「さっきも言ったけどこれらはマサトに全て上げるから、さっさと売るなりなんなりした方が良いよ。僕が言うのもなんだけど。」
「あ、うん分かっている。」
マサトはこれ以上この話題について話したく無かった。なので無理矢理話題を変えようとした。
「そう言えばさっき俺に頼み事があるって言ってたな。頼み事ってなんだ、俺に出来る事なら何でも言ってくれ、俺達はもう家族なんだからよ。」
「その件なんだが、僕を強くしてくれ頼む。」
だいたいマサトの予想どうりの頼み事であった。がマサトは悩んでいた、今度は自分が誰かを守りたいとユキは考えたんだろうが、ユキの腰にある剣を見てからの彼に剣を教えるべきかずっと悩んでいた。
「答えは明日の朝まで待ってくれないか。剣を教える方も、学ぶ方も簡単に答えを出していい事じゃない。」
結果マサトは先延ばしを選択した。その答えにユキは
「分かった」
と一言だけ言った。
しばらく無言が続いたがユキの方から
「そう言えばマサトの家ってどこにあるんだ。もうだいぶ歩いたけどまだつかないのか」
とマサトに質問した。
「いやもう少しだ。だけどその前に俺の愛する娘を迎えに行かないとだがな。」
ユキは耳を疑った。
「済まないマサトよく聞こえなかった。もう一度言ってくれ。」
「だから傭兵の仕事で家にいない時に知り合いに娘を預けているんだよ。」
ユキは聞き間違いじゃない事を確認すると新しい疑問がユキの中に生まれた。それは聞くのが少し怖かったが好奇心に負けた。
「マサトって何歳なの?。見た目は10代後半から20代前半だけど。」
「嬉しい事を言ってくれるねー、俺は今年でちょうど30歳だ。」
「冗談だよね。僕の3倍も歳があるなんて、ちょっと待ってじゃマサトの娘はいったい何歳なの?。」
「今年で8歳になるな。良かったなユキ可愛い妹も出来たぞ。これから今日の事を忘れるぐらい楽しい毎日が始まるぞ。」
ユキはちょっと待ってくれ聞いてないぞと言おうとしたがその前に目的地についてしまった。
そこは巨大な宿屋だった。マサトは何事も無いように入っていった。ユキもマサトに続くとそこには筋肉の塊の様なおばさんが座っていた。
そんな筋肉おばさんにマサトは話しかけた。
「ようドンママセシルを迎えに来た。それから新しい俺の子供のユキって名前だ、俺の仕事の時は今後ユキも預けるから宜しく。そしてユキこのこの筋肉は「ドン」と「ママ」を合わせてドンママって言われいる。ちなみに本名は俺も知らない。と言うかほとんど喋らない、この宿屋の店主だ。」
ユキはドンママに圧倒されながら
「ユキです今後ともお願いします。」
と挨拶した。
「ドンママこいつは少し特殊な事情があるんだ分からない事もあるだろうが宜しくな。」
ドンママは喋らない。それどころか動かない。ユキは本当に人間なのか疑った。
「ところでセシルはどこだ、いないみたいだが。」
ドンママは立ち上がり奥へ向かって行った。
「動いた、人間だったのか。」
と普通なら失礼極まりない事を言ってしまった。そんなユキに対してマサトは笑いながら
「大丈夫だ、初めてドンママに会う奴は全員そう思う。……たぶん。」
「たぶん?。」
ユキが問い詰めようとするまえに走っている足音が奥から聞こえてきた。




