66 お茶会
なんで記憶が無いんだろうな。そういえばあの時もそうだったし。これって僕がおかしいのか?それともこの城になにか秘密があるんじゃないか?
「吹雪この白菜貰うね。」
「ああどうぞ。」
鍋をエリーゼに取られながら考える。せっかくまともな食事なのに気が落ち着かない。それもこれも、この数十分の記憶がないからだ。いつの間にかエリーゼは元に戻っているし。いやこれが素なのだろう。こんな鍋を元気に食べている少女が魔法やその他の力を使わずに空を飛んだり、一度見たら普段は忘れていても必要になるとどこかから思い出すなんて僕以外は信じないだろうな。もしかして本当に僕がおかしいだけなのか。今度病院でも行こうかな。
ふと気づく。エクス王子がこちらを見つめていると。
「エクス王子どうしたんですか。もしかしてお口にあいませんでしたか?」
「いやそんなことない。むしろ勝手に頂戴しているのだ。多少は我慢しよう。ダダ少しだけ言わせてもらうなら少し味が濃いな。」
ここで、「ああ貴様の料理など私の高貴な口には相応しくない。」と言ってくれれば少しは面白いのだが、さすがは王子と言えるだろう。マナーをわきまえている。平民に特別褒めるわけでもなく穢す訳でもない。もしここで褒めていればコック達の存在意義画像無くなるだろう。
「そうでしたか。王子の口に合わず申し訳ございません。」
「エクス兄様私はとても好きですこの味。この温かくてただ豪華なだけないつもの食事よりはこっちの方が良いです。」
エリーゼそれはせめてコック達がいない所で言おう。彼らだって一応プロなんだ。色々プライドとかあるだろうし。それにもし料理対決をすればきっと僕が負けるだろう。プロと料理に片足だけ突っ込んだだけの人じゃ話にならない。だからそこで落ち込んでいるコックの人達そんなに落ち込まないで。
「あはは、姫様それはきっと.....えーと.....普段食べなれている味と珍しい味でインパクトが違っただけですよ。」
ナイスだアリサ。
「そうかな?正直元々あんまり好きじゃなかったんだよね。今だから言うけど。」
お前は黙ってろエリーゼ。てか毎日食事にありつけるだけ感謝しろ。このワガママ女。
とまあこんな食事が約1時間続いた。その間のコックの落ち込みようといえば本当に酷かった。別にエリーゼには悪気がある訳では無いのがより悪い。因みに後でエクス王子にこのことを3時間かけてじっくり説教されたのはまた別の話。
そして食事が終わったあと。お茶会というていでエクス王子、アリサ、アリス、エリーゼ、そして吹雪の5人は休憩をしていた。というか女子達は一体どこにそんなにケーキやらマカロンやらが入るのだろうか。エクス王子と吹雪は見てるだけで気持ち悪い。そのエクス王子は吹雪をやはり睨んでいる。それに吹雪は仮面のせいで食べにくい。それはさておきこの休憩の本当の目的は、
「あっ!きたきた。おーいこっちだよ。」
「あっ。」
「あっ。」
そこにいたのは昨日出会ったココヅキ侯爵の娘カナだった。
「どうも昨日はすいません。」
「いえいえこちらこそご迷惑おかけしました。それでなぜあなたがここに?」
なぜと言われても困る。吹雪自身なぜこんなことになっているのか分からない。拉致されて、麦食わされて、戦って、今は王子に睨ませながらお茶の楽しんでいる。本当になぜこんなっているんだ?
「それは彼に助けてもらおうと思うからよ。さてと知っていると思うけどこっちはサナ。ココヅキ侯爵の娘だから彼女は貴族令嬢ね。そしてこっちは吹雪。私の騎士に一応なったわ。」
私の騎士という言葉に少し驚いたようだがすぐにカナは理解したようだ。というか彼女もう少し元気だった気がするが、もしかして猫かぶってるのか。まあ王子と王女がいるのだから仕方ないのかもしれない。吹雪も演技をしているので人のことを言えない。
「そっそうなんですか。でも一体どうやって?」
「あのーまずは色々聞きたいことがあるんですけど。」
勝手に助けろと言われても困る。世の中の9割は解決出来ると思うが、残りの1割が来たらおしまいだ。
「そうね吹雪にもしっかり説明しないとね。まずは彼女は結婚します。」
................はぁそうですか。この前散々離婚だのなんだのやっておいてそうですか、今度は結婚ですか。そりゃいいご身分で。彼女の問題だから口出しはしないがこっちを巻き込むのは勘弁してもらいたい。
そんなことを考えているのがエリーゼにも分かったのだろう。すぐに足りない部分を付け加えた。
「違うから。相手は元夫のキラ君だよ。詳しくは知らないんだけど、今度はキラ君が婿養子になるらしくて。」
「なるほどそういう事でしたか。それなら納得です。」
このキラという男の子は今恐らく大変な状況下にいる。詳しくは説明しないが簡単に言うと恐らく彼の家は取り潰されるだろう。彼の父親はそれだけの事をしたのだ。
「それでね。結婚式を挙げることになったんだけど、2人が結婚したのは赤ちゃんだったから結婚式も出来てないしちょうどいいかなって、なったんだけど........」
「早く要件を言ってください。」
「うん。それで実はウエディングドレスがさっきの人狼のせいでボロボロになっちゃって、もう修復できそうにないの。それに結婚式はあと一週間ちょっとしかないし。」
つまりドレスを用意しろと。しかも侯爵令嬢が着るに相応しいのを。オマケに一週間ほどしか時間はないと。........まあなんとかなるかな。
「わかりましたなんとします。少し待ってください。」
吹雪は召喚魔法でカラスを召喚して飛ばした。
「何をしたの?」
散々ケーキを食べていたアリスが聞いてきた。
「カラスを飛ばしただけですよ。ですが安心してください。最高級のドレスを用意しましょう。」
カラスは飛んで行く。そしてとある場所に着いた。そこは迷いの森と呼ばれる帝国に存在する霧深き森。そこにいるのは本物のユキ。そしてユキの父を名乗る人物とユキの叔母だった。




