65 少しだけ本気を出してみた
「あえて言おう。化け物を舐めるなよ人間。」
吹雪が使ったデスソール。それは広く言えば召喚魔法のひとつに入るのだろうか?それは誰にも分からないが、ただひとつ言えることがあるとすれば今王城の上には、デスビーと呼ばれる一匹で象をも殺す毒蜂がおよそ10万匹いるということだけだ。そしてエンジェルがきれる。神聖魔法は祈ってないと使えない。つまりアリスとアリサは今この瞬間祈ることを止めたのだ。まぁ元々空を覆い尽くす殺人蜂を見て呑気に祈ってられるとは思えなかったが。
「結局色々試したかったのに試せなかったな。」
今から2人の命を奪うというのに吹雪は随分と冷静だった。むしろ少し楽しみでもある。この技を人に向けて使うのは初めてだ。一体どんな結果になるだろう。
「さぁ突撃だ!」
吹雪の声と同時にデスビーが攻撃を開始する。それは圧倒的な暴力。単体でも強力なデスビーが数を揃え襲いかかる。吹雪はエリーゼが止めればすぐに技を取り消すつもりだった。だがエリーゼは未だに無表情。
結局エリーゼからすれば、彼女達はその程度だったのか。本当にさようなら僕の妻になるはずだった人達。そしてさよなら僕が知るエリーゼ。
吹雪がせめて彼女達が安らかに眠れるように祈ろうとした時、
「去りなさい。」
世界が終わった。そう感じとっただけだが、一瞬の隙が生まれた。その一瞬でデスビーは全て倒されたらしい。らしいと言うのは見えなかったからだ。恐らくは目の前にいる少女がやったのだろう。
「何をしたんですか?エリーゼ様。」
「私は何もしてないよ。ただ去りなさいと一言言っただけだよ。それより吹雪あなたの方こそ何をしたの?」
「........」
まさかと思うが本当に喋っただけなのか。見えなかったのでは無く、本当に何もしていない?こんなこと普通は信じられないけど、相手はあのエリーゼだからな。
「何とか言ったらどうなの?」
「なんとかですか。別に構いませんけど、分かりきっているでしょう。召喚魔法ですよ。僕はこの5年間で闇属性を極めましたからね。デスビーぐらい簡単に召喚できます。」
これは半分嘘で半分本当だ。確かに召喚魔法かもしれないが、吹雪自身はこんなの召喚魔法ではないと思っている。どちらかと言うと禁忌魔法........それに闇属性を極めたからと言ってデスビーを召喚するのは不可能だろう。デスビーを使役することができるのは、恐らくこの世でただ1人、その名はカレン。六魔将の1人だ。
「そうまぁ良いわ。あとアリスとアリサは好きな人がいるから出来れば結婚しないで欲しいの。それが飲めるなら私の騎士になりなさい。」
「随分と急ですね。ここまで急ぐとなにか裏があるんじゃないかと思ってしまいますよ。」
「どうするの?」
実際どうする。このまま騎士になるべきかならぬべきか。でもなって言って断るんだよ。でもリスクが高い。どうするどうするべきだ。
「あれここは。」
恐らくは厨房。でもなんで厨房に居るんだ。そしてなんで僕は料理をしているんだ。今作っているのは刺身だろうか。でもこの見慣れない魚はなんだ。腕は勝手に動くけど頭が上手く回らない。そもそもなんで僕が刺身を作っているんだ。
などと考えていると刺身の盛り合わせが完成した。
「「「「「おおお」」」」」
恐らく王城のシェフであろう人達とエクス王子、エリーゼ、更にはアリスとアリサまでいる。
「凄い魚が光ってる。」
「芸術みたいだ。」
「綺麗。」
「へーなかなかやるじゃない。別に声なんて震えてないけど。」
「食べるのがもったいないぐらい。ありがとう吹雪。」
「これは........」
よく分からないが吹雪は視線を変える。そこにあったのは、
「あーあもったいない。」
本来なら残飯として捨てられるであろう部分、頭や骨の部分だった。骨と言っても結構身も付いている。
勝手に刺身を食べ始めているエリーゼ達をほっといて吹雪は、料理を始める。
「調味料とかもう捨てる物とか貰っていいですか。」
「OK」
「ありがとうございます。さて、やっとまともな料理を食べれる。」
吹雪は悩んだが鍋にすることにした。肉団子なら簡単に作れるし、野菜もあるし、さらに出汁もある。もはや鍋しか吹雪の頭の中にはなかった。




