6 説得
「えーと何を言ってるんですか。新手の誘拐ですか。えちょ本当にどうしたんですか。」
ユキはひどく混乱していた。謎の男に殺されかけた時でももう少し冷静でいたのに、そんな自分がユキは信じられないでいた。
「別に誘拐じゃねーよ。もうユキは貴族じゃないんだろ。だったら別に誘拐する必要なんて無いじゃないか。そうじゃなくてお前はこれからどうするつもりだ、行く場所があるのか。」
ユキは黙る。そうユキは行く場所が1つも無いのだ。親戚はもう貴族では無いユキに恩を売っても仕方ないと考えるだろうし、何よりユキの親戚は皆貴族ばかりでユキは剣や魔法を習いたがる貴族とは違い本ばかり読んでいてそれが影響で他の貴族の子達からいじめられていた。更にユキだけ王族であるエリーゼと仲良くしているのが他の子達は許せなかった。両親には心配させたくないと思い黙っていたが、ユキはあまり彼らとは関わりたくなかった。むしろ邪魔をするなと追い出されるだろう。
そんなユキの様子を見てマサトはもう一度提案した。
「このままじゃ近いうちに死んじまうぞ。それじゃーなんの為に助けたのか分からないじゃねーか。お前が行く場所があるなら俺はそれでも良いが、どうするんだ。俺が誘拐犯だと思うならどこか行けば良いし、俺の事を信じて俺に着いてくるか好きな方をお前が選べ。」
ユキはマサトの事を信じたかったがそれでも簡単に信じる事は出来なかった。誰が出会ったばかりの子供の面倒を見るとゆうのだ。だが現状マサトしか頼れる人がいなかった。ユキはまだ10歳どこかで働くにしても雇ってくれる年齢では無い。
「その前に質問良いですか。なぜ僕を助けたんですか。そしてなぜそんな僕の面倒を見てくれようとするんですか。」
ユキは質問には答えずに質問で返した。そんなユキにマサトは笑いながら
「小さな子供が殺されかけていたんだ助けるのは当たり前だろ。そしてなぜ面倒を見るのかだったな、それは俺もユキと同じぐらいに両親を亡くしててな、もう俺死ぬんだなと思ったんだがある人が俺のことを救ってくれてな、その恩返しじゃないがその人から受けた恩をお前にやっているだけだ。」
「たったそれだけですか。」
「おう、たったそれだけだ。俺はお前の事は何一つ知らないし俺のやろうとしていることは偽善でしか無い。でこっちも質問に答えたんだ俺の質問にも答えてくれるか。」
ユキは信じられなかった。昔同じように助けられたから自分も同じように助ける、口で言うだけなら簡単だが実際に行動出来る者は少ない。もしかしたら全て嘘かもしれないがユキはマサトの事を信じる事にした。
「分かりました、しばらくの間お願いします。」
だがユキには1つ心残りがあった。
「ただその前にエンゼル家に戻って良いですか。持ってきたい物や両親と別れをしたいんですが。あまり時間はとりませんので。」
ユキはもうレオンは生きていないだろうと受け入れていた。
「当たり前だ両親と別れぐらいはちゃんとした方が良い。じゃあ少し暗くなってきたしもう行くか。それとユキ俺達はもう家族だ、そんな堅い喋り方じゃなくてもっと楽に話してくれるか。」
ユキは家族と言うマサトに驚いた。考えてみれば父と母は仕事ばかりであまり自分と一緒にいる事がなかった。仕方ない事だとユキも分かっていたがユキは家族という物に憧れていた。
「分かった、ありがとうマサト。そして宜しく」
「おう、宜しくユキ」




