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世界も人も狂ってる  作者: 拓斗
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56 愛の無いハーレムそして悪魔の始まり

「そう言えばなんで2人との結婚に文句言わなかったの?」


エリーゼが不思議そうに言ってくる。まさか本当に何も知らないのか。


「いや不満ならあります。むしろ不満しかありません。しかしどうせ愛は無いんです。どうでもいい事です。それにエリーゼ様も知っているでしょうけど、あの訳の分からない450人の事もありましたし。」


「あー。うん。」


吹雪と言うよりユキには450人の愛人がいる。いやいたのは昔で既にもう、存在しないが。エンゼル家が潰された時に、全員死んでしまった。元々誰1人愛なんてなかったし、そもそも父上と母上が決めた相手だから適当に相手していただけだ。


「あの時は少しのお祭りだったよね。国外からも女の人が来て、歴史に残るんじゃないのかな?」


「そんな歴史には残りたくないですね。」


本当に多くの人が来た。それはもう、大変なことになった。ちなみに、ユキが知ったのは、人が集まった時だ。つまりは事後報告となる。あとから知ったことだが、あの時は5000人を超える人が来たらしい。そのせいでしばらくの間女性恐怖症になってしまった。


「私たちの従姉妹でもある、シャルもユキのハーレムにはいったんだっけ?」


「あれがハーレムならどれだけ良かったでしょう。そもそも公爵令嬢であるシャルロッテ様、いやシャルがあんな扱いを受けていたのは、知りませんでした。」


基本的集まった人達は2つの人がいた。1つは面白がって遊びでやってきた人。もう1つはお金目的だ。つまり売られたのだ、親や家族に。エンゼル家は商業が上手くいっており、本当かどうか知らないが、エルランド王国全体の1割に所有していた。つまり何とかして、お金を手に入れたいと思った者達が自分の家族を売ったのだ。それは当時謎の宗教にハマってしまったシャルロッテの両親も同じだ。


「?どんな扱いを受けてたの。まさか酷いことなんてしてないよね。」


「........それは僕の口からは言えません。ただいじめはありました。そしていじめっ子は既にこの世に存在しないことだけは、分かります。」


ユキは彼女達の環境を受け入れ、全員を受け入れた。お金はあったし、当時はそんな親よりも、ここにいる方が良いと思っていた。しかし人が集まれば上下関係は発生する。大抵の平民は貴族に恨みの一つや二つ抱えている。流石に飼い主であるエンゼル家の者には、何も出来ないが、同じ立場になった貴族にはそれなりの制裁が待っていた。それをユキが知ったのはしばらくたった後だった。


「ユキ、冗談でもそんな事言わない。縁起悪いよ。」


「........そうですね。まぁいじめっ子達がどこでどうしているのかは、僕には分かりません。興味ありません。ただ人間の闇を少し知れたので、僕としては良かったですけどね。」


いじめを知ったユキはいじめっ子達を問い詰めた。当時まだ8歳だったせいもあり、迫力もなく、いじめっ子達は少々調子に乗っていた。あろう事かユキを誘拐しようとしたのだ。当然失敗に終わり、いじめっ子達は........いやこれを思い出すのは辞めておこう。兎に角結果は5000人以上いたはずなのに、気がついたら、1000人を下回っていた。


「なんかユキ変わったね。確かにいじめは許されないけど、そこまで言う。むしろ昔はいじめられるのが悪いって感じだったのに。」


「言ってませんでしたが、当時僕は他の貴族たちにいじめられてました。いじめられる方が悪いと言ってたのは、自分を守るためです。」


日に日に人が減っていく愛人達が住む屋敷。次は自分が消されるんじゃとみんな思っていただろう。そこで問題だと思ったのは母上だ。きっと母上は孫が見たかったんだろう。4つの血が流れているユキには、子供が出来にくい。仮に出来たとしても、早死することが多い。なので少しでも多くの子が必要だったんだろう。


「え!そう....だったのごめんね。私配慮が足りなかった。確かに少しユキとほかの人達一緒にいるの見た事あんまりないかも。」


「まぁ当時は、苦しかったですが、数年経ったら馬鹿馬鹿しいと思いました。なので今は気にしてません。」


とは言えこれ以上母上にはどうすることも出来ない。仕方なく傍観していた。まぁ所々何かしていたらしいが、大きな行動はしなかった。そんなこんなで、消えた者は、地獄に行き、残った者も、僕のことを愛そうとする者はいなくなった。元々おかしな関係だった。それが無くなっても、別に良いと思っていた。それに当時は血の事なんて知らなかった。


「そうなんだ良かったよ。........でも次何かあったら私に言って。ユキは私の、その.....ね護衛なんだから。」


「まだ護衛じゃありません。それにもう僕は守られるだけの弱い子供じゃありません。僕は力を手に入れた。それはあなたにも勝てるぐらいの力を。」


母上はユキを愛人達の所になるべく向かわせた。別に断る理由もないしユキは向かった。ただ何かある訳では無い。母上は少しでも仲が良くなるようにしようとしていたが、彼女達の心に生まれた恐怖はなかなか消えなかった。ユキとしても、無理に仲良くなろうと思わなかった。そもそも中にはまだ生後半年ぐらいの赤子や、ドワーフやセイレーンと言った異種族もいたのだ。今でこそ、普通だが、当時のユキは彼女達を差別していた。いじめを無くそうとしていたのに、自分が彼女達をいじめていたのだ。これでは、いじめを受けても文句言えないだろう。


「........なんかユキ怖い。」


「それはすいません。」


ある日ユキは愛人達と出かけていた。母上が仲良くなる為の手段だ。毎月決まった時間で決まった道を散歩していた。だが貴族の子供と愛人達が、来ると分かっていたら、悪人は当然動くだろう。護衛は20人いた。更に事前の確認もしていた、だがそこはプロと言おうか、それらを全てくぐり抜けユキ達の前に現れた。中には護衛の中にスパイがいたらしく、ユキ達はどうすることも出来ずに捕まった。一応護身用の剣を持っていたが、恐ろしくてユキは動けなかった。


「エリーゼ様今度は私からいいですか?」


「?うんなんでも聞いて。」


目が覚めると、馬車に詰められようとされていた。手は縛られ足は動くが、逃げるにも大人と子供では勝てない事ぐらい誰にでもわかる話だ。つまりどうすることも出来なかった。ユキは諦めて全て受け入れようとしたが、同時に物凄い怒りがやってきた。それは怒りと言うより憤怒と言った方が良いだろう。そこからはよく覚えてない。気がついたら、どうやって解いたのか手の縄は解けており、血で濡れた護身用の剣を持っていた。周りには血塗れの誘拐犯たち、そして恐怖の顔をした愛人達。後で聞いた話だが、やはり誘拐犯たちを斬ったのはユキで、その最中は笑っていたらしい。


「何か僕にお願いがあるのではないのでしょうか。先程エリクサーを見せた時僅かですが、反応しましたよね。何か病気の友人でもいるのでしょうか。」


「........それは........あのねユキ、....やっぱりなんでもない。それは今ここで簡単に話すことじゃないし。」


愛人達は逃げ出した。未だに気を失っていた人もいたので、全員ではないが、ほとんどの人が逃げ出した。そりゃ当時まだ8歳の子供が10人以上いた誘拐犯たちを1人でしかも笑いながら殺し回ったのだから逃げるだろう。その時に言われた「悪魔、近寄らないで。」はユキの中で何かを変えた。とは言え売られた彼女達に行く場所はなく、しばらくすると馬車に戻ってきた。とは言え何も問題は解決してない。そもそも毎月散歩しているとはいえ、いつも護衛が道案内をしていたので、帰り道が分からない。しばらく待てば帰らないユキに心配した両親が探しに来てくれるはずだが、それには気づいていなかった。もし誰か1人でも気づいていれば、あんなことにはならなかったのに。


「それですか。私は頼まれたら、大抵ことは協力します。それが世界征服だろうと、ペットの名前決めでもね。しかし頼まれなかったら、どんなこともしません。察してやれと言う人もいますが、僕には出来ないのでエリーゼ様はその辺りを知っておいてください。」


「うん。」


兎に角移動することにした。気を失っている者は、なんとかして起こし、それ度周りの光景に息を飲むが、状況を説明して、このままじゃ誘拐犯の仲間が来るかもしれない、魔物に襲われるかもしれないなどの理由から兎に角歩いた。方向などは、分からず天気もあまり良くなかった。その日は特に、メンバーも悪かった。もう少し賢い者や、年齢が高い者が入れば止めに入っただろう。そして雨が降り出した。体は冷え、体力は無くなり泣き出す者が現れた。仕方なく洞窟に入り雨宿りをしてその日はそのまま寝た。


「........」


「........」


まだ日が昇らない時に悲鳴が聞こえユキは起きた。まさか誘拐犯が追いかけてきたのかと思ったが、そこに居たのは誘拐犯ではなく、冬眠中の熊だった。洞窟だと思っていたのは熊の巣穴だった。お腹がすいていたのか、既に何人かが喰われていた。ユキは彼女達を助けるために魔法を放ったがもう既に遅かった。なんとか熊を撃退することが出来ても、死んでしまったものはどうしようもない。騒ぎで起きた者たちも、無残な肉を見て何となく察した。そして次々にユキを責めだした。元々貴族嫌い、人間嫌いの集まりだ。今まで我慢していても、もう我慢の限界だった。


「きっとあの時からだろう。僕が悪魔になってしまったのは。」


「何か言った?」





「お前のせいで私たちの人生はめちゃくちゃだ。」

「きっと私たちをいずれ殺される。」

「なんでこんなことになるの。私は何もしてないのになんでこんな扱い受けないといけないの。」


などなど兎に角ユキを責めてきた。実際彼女達は罪を犯したわけでもなく、誰かに迷惑をかけた訳でもない。ただ親に売られただけだ。ユキは彼女達に幸せになって欲しいから、望まない愛人になったのに、彼女達は全然幸せじゃない事に気づいてしまった。いや元々気づいていたが見て見ぬふりをしていただけだ。そして騎士たちが探しに来てくれたおかげでそのまま帰宅した。しかしその日以来ユキと愛人達は口を合わせることが無くなった。そしてあの人彼女達は死んでしまった。

今思い出してみれば彼女達の笑顔を見たこと無かったな。いや見ようとしなかった。両親がやったこととはいえ、自分が決めたことなのに、何もしようとしなかった。結局全員を不幸にしただけだ。ただ自分の満足感を得るためだけに彼女達を不幸にした。僕はその罪を償わないといけない。

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