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世界も人も狂ってる  作者: 拓斗
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51 ふざけた料理と再会する2人

「...............暇だなぁ。.........」


さて誘拐された吹雪を見てみよう。とは言えもう既に、2日も何も起きてないが。それでも何かあるかも知れないと吹雪は思い出して見ることにした。

いきなり訳の分からない事を言ってきた騎士達は、言いたいことを言ったらさっさと、出ていってしまった。そしてそのまま吹雪も帰ろうとしたら、この部屋から出してすらくれない。一応トイレ等では、出ることが出来るのだが、何故か護衛と言うなの監視が付く。つまり、今吹雪に1人でいる自由の時間は1秒もないのだ。

まぁある意味常に自由とも言えるけどさ。それに逃げようと思えばいつでも逃げれるし。それにしても何が目的なんだ。もはや嫌がらせとしか思えない料理(?)ばかり出してきたりするがこれの意味はあるのか。もしかして本当にただの嫌がらせ?........有り得る。普通の人ならやらない事でも、王族、貴族ならする。むしろアイツらなら喜んでする。なんせ人の不幸が大好物だからな。

この2日に出された料理(?)は本当に酷いものだった。食べれなくはないが、もはやいじめの領域だった。メインは黒焦げだし、サラダは切ってないで、きゅうりやレタスや大根をそのまま出てくるし、スープもお湯の中に切ってないかぼちゃを出された。唯一パンだけはまともだった。いや正確に言うならば、パンも結構焦げていてあまり食べられたものでは無いが、他に比べたらまだいくらかマシってレベルだった。しかし出されているだけマシなのかもしれない。


「......あれを食べ続けたらそのうち命の危険がやってくるな。」


しかし何か起きたのはそれぐらいでその他は何も起きてない。むしろ静か過ぎる。嵐の前の静けさと言うのか、よく分からないが着実に嫌なことが起きているだろう。しかし今吹雪に出来る事など何も無い。吹雪に出来ることがあるとしたら、あと何日でこの部屋とサヨナラ出来るか考える事ぐらいだ。

ドアの外からノックが聞こえる。


「夕食をお持ちしました。」


さぁ悪夢の時間だ。正直そのままおかえり願いたい。だが出された食べ物はどんな物でも完食すると僕は決めているのだ。それが黒焦げでも、切ってない野菜でも。さぁ吹雪、勇気を出すんだ。


「ありがとうございます。お入りください。」


吹雪は気づいてなかったが、声はかなり震えていた。これが最後の晩餐になるかもしれない可能性もあるのだ。出来れば最後の晩餐はセシルのアップルパイを食べたい。などと言う願いは叶うはずも無く、メイドが持ってきた物に絶望する吹雪であった。


「失礼します。本日の夕食はあまり時間がなかった為おにぎりです。......はいおにぎり?....です。」


「もう自分でも疑問に思ってるじゃないですか!」


「それでもこれを作った人は頑張っているんです。自分たちで作りたいと頑張っているんです。なのであなたも頑張ってください。それでは。」


メイドはさっさと出ていってしまった。仕方なく吹雪はおにぎり(?)を見た。本当は見たく無かった、しかしどうしても目に入ってしまう。吹雪は深呼吸を始めた。これを受け入れる準備だ。

そして深呼吸を終えるとおにぎり(?)にツッコミを入れた。


「これおにぎりじゃなくて麦じゃん。なに精米でもしろってのか?今まではまだ料理の面影があったよ。でもこれは麦、食べ物じゃない。むしろこれ作った人これおにぎりって出されて食べるのか。どうなんだよ教えてくれよこれ作った人。................................................でどうすれば良いんだ。何が正解なんだ。そもそも正解なんてあるのか。」


流石の吹雪もこれを食べるわけにはいかない。食べたら不味いだろう。二つの意味で。しかしだからといって、どうしろと?食べなかったら、どうなるか分かったもんじゃない。まさに食べても駄目、食べなくても駄目と来た。


「どうすりゃ良いんだ。捨てれば良いのか。魔法で消せば良いのか。それとも食べる......のは無いな。わぁぁぁぁぁもう分かんねー。」


その晩エルランド城では奇妙な声が聞こえたと言う。その声の正体を知らぬ者達は、怖がっていたが、正体を知っている者達は、吹雪にいつかまともな料理が出てくる日を願うばかりであった。









「........ほんと僕何してるんだろう。なんで城で麦を食べないといけないんだろう。普通麦食べるのって、家畜達だよね。僕いつの間に家畜になったんだろう。本当に謎だなー。あはは。」


「吹雪殿しっかりしてください。気を確かに。吹雪殿。くっやはり麦をそのまま出すのは不味かったのでは?」


1人の騎士が吹雪を正気に戻そうと頑張っている。吹雪の護衛だ。朝あまりに静かなので覗いてみれば、これだ。けどまぁ仕方ないとも言える。麦を食べさせられたのだから。その横でメイド達が水を持ってきたり、おしぼりで顔を濡らしたり、薬を持ってきたりしていた。


「とは言えそのまま出して欲しいって姫様と護衛の2人が言うのでしょうが無いでしょ。あたし達には口出しするだけ無駄だよ。それよりどきな、医療室に運ぶよ。もし何かあったら、その時はみんな大変な事になるんだよ。」


年長者のメイドが吹雪を抱き抱え医療室に向かおうとした。しかし1人の新人メイドが立ち止めた。


「なんだい。早く行かないと、大変な事が起きるかもしれないんだよ。」


「そそそそうじゃなくて、あのそのおしぼりで冷やすべきだと思いまして。これ。」


そうして新人メイドはおしぼりを年長者メイドに渡した。


「確かにそうだね。仮面は外そう。って顔は女みたいな顔してるじゃないか。中性的とも言えるね。髪を伸ばせば十分女として見れるよ。」


「そんなことより早くおしぼりを。」


「ああそうだね。」


年長者メイドはおしぼりを吹雪の額に当てると、医療室に全力で走り出した。その道中エリーゼ姫と出会ったが簡単な挨拶しか出来なかった事を後で怒られるだろうが、仕方ない。人命優先だ。その時はそう思っていた年長者メイドだったが、吹雪とエリーゼにはそうは言えなかった。


「今の人似ていた。まさか!待ってユキ。待ってよユキ・エンゼル。」


吹雪の顔それはエリーゼの大切な人、つまりはユキと同じだったのだ。

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