46 脅威の粘り
(大きい狼だね。私が手伝おうか?)
(必要な時寝てたやつが何言ってんの。もうあいつはボロボロだよ。あのくらい僕がやる。)
とは言うものの、ユキは【消滅】を使った代償で余り調子が良くない。むしろ悪い。それに加え終焉の嵐による魔力消費も激しい。
けどまあ大丈夫だろう。最悪マリィにお願いすることになるけど。とりあえずは魔法剣で良いか。
「それじゃあさっさと終わらせるよ。」
ユキの手にはいつの間にか剣が握られていた。ただの剣ではない。魔力で作り上げた魔法剣と言われる物だ。ある程度の魔力と魔力操作ができれば誰でも使える技だ。
ユキは上手く魔法剣が作れたことを確認すると、ボスに向かって走り出した。そしてそのまま首を切り落とす。何が起きたのか分からないままボスは倒れた。
(意外に呆気なかったね。既に瀕死の状態とはいえ。)
(........)
ユキは歩き出す。マリィは油断仕切っている。これが力ある者と無いものの違いなのか。
(マリィ一応常に戦える準備をしておいてくれ。僕は召喚魔法で周りを警戒する。)
(どうしたの?そんなにピリピリして。)
(何か嫌な気配がする。しばらくは休めそうにない。)
(まぁユキがそう言うなら。)
マリィも恐らく警戒態勢に入った。ユキは更に上空は鳥、地上はリス等の小動物を召喚魔法で呼び出した。これで何が起きても分かるはずだ。召喚者は召喚したものと感覚を共通することが出来る。これによりユキは今30近い数の目を持っていることになる。当然一つ一つの監視が甘くなるがその分広い範囲を見ることが出来る。
ユキが監視を初めて数時間。そろそろ日が昇ってくる時間だ。未だに気配は消えない。流石にユキにも疲労が出てくる。
(zzz)
マリィなんてまた寝ている。意外にマリィは寝るのが好きなようで、1日の半分以上寝ている日も珍しいない。
「よくもまあ飽きないな。いやむしろ寝ることしか出来ないのか。それともただの年寄りのせいかな。」
ユキは少し油断していた。ここまで何も起きないなら自分がおかしいのでは無いのかと。あの変な夢のせいなのでは無いのかと。そのせいで気が付かなかった。1部の召喚した小動物達が消滅し、空から鳥達が警告してることに。
「流石に僕も限界だ。ここで仮眠を取るよ。って誰に言ってるんだか。マリィは寝ているから、完全に独り言だよ。」
正直寝るのは少し不安だったが、流石にこれ以上は無理だった。そして目を閉じた時鳥達が警告してることに初めて気がついた。ユキはその場から転がって移動した。ユキがさっきまでいた場所には首のないサウザントウルフのボスがいた。
「もうストーカーレベルだな。いや首が無い状態じゃあストーカーも追いかけてこないか。」
正直ユキは疲れていて自分で何を言っているのか分からなかった。
ボスは首が無いのにユキの居場所が分かるのか、ユキの方向へ突進してきた。ユキが間一髪避けると、そのままボスは突っ込んで、大木にぶつかった。そしてそのまま大木は折れてしまった。
「なんか強くなってないきみ?」
ボスはユキ向かって突進してくる。ユキは回避しようと横に移動するが、ボスは読んでいたのか急に方向転換してきた。
「は?」
その結果ユキは受け身すら取れず、直撃してしまった。数メートル吹っ飛びユキは立ち上がった。
「頭も良くなってる気がする。頭無いのに。まあいいや。ウインドショット。」
風属性の初級魔法をボスの足に打ち込んだ。ボスはちょうど突進しようとしていたので、無様に転んでしまった。
しかしどうしたものか、マリィは寝てるから使えないし、僕の攻撃じゃあいつを殺すにはどうやらダメらしい。【消滅】は今余り使いたくない。ならあれしかないか。まぁでもその前に。
「ねぇ言葉が通じるのか分からないけど、一応言っとくよ。良ければ僕達の仲間にならないか?実は今強い仲間を募集してるんだけど、きみの実力ならきっと」
ボスはユキの言葉を遮って突進してきた。今度は上手く受身を取ってユキは立ち上がる。
「まぁそうだよね。なら仕方ないけど僕は1度敵対したものはみんな、殺してるんだ。それがたとえ魔獣でもね。」
ボスとユキの中間に黒い穴が生まれた。
「実はまだ完成してないから使いたくないけど仕方ない。合成魔法ブラックホール。」
その穴は少しずつ大きくなり、周りの物を吸い込み始めた。それはユキやボスも例外ではない。これが未だに完成していない理由だ。使用者すらも、死ぬかも知れない魔法そんな物できればユキも使いたくない。オマケに消費魔力も大きく実際は【消滅】の劣化だ。しかし今のユキにはこれでしか、倒すすべがない。
時間にして1分ほどだろう。黒い穴は人の顔程の大きさになった時、ボスは黒い穴に飲み込まれた。そして直ぐにユキは魔法を解除した。
「........寝よう。」
ユキは他に考えることはあるだろうと思いながらも、疲労には勝てず睡眠とゆうよりほぼきせつに近い眠りについた。そのおかげではないが、あの悪夢を見ることはなかった。
ユキが寝てから数分後黒竜の服に異常が発生してた。しかしユキが気づくのは、目覚めたあとである。




