45 揺れる想い
(どうかしたユキ?)
(いいや大丈夫だよマリィ。)
今ユキは森の中を歩いている。少し遅めに、休憩多めで。向かう先はキース帝国ユキが本気を出せば3日あればエルランド王国から行けるが、あくまでもゆっくり進む。しばらく進んだ後大きな湖がある少し開けた場所に出た。
「ここで休むか。」
休むと言ってもベットも布団もテントもない。ただの野宿だ。まぁ贅沢は言ってられない。本当は仮眠程度のつもりだったが疲れているせいもあってユキはすっかり深く寝てしまった。
「どこだここは。」
ユキは見慣れない場所にいた。不思議な場所だ。知らない気もするし、知っている気がする。ひとまず人を探してみることにした。
「誰かいませんか。」
だが返事はない。
「なんなんだ。この場所は変な場所だねマリィ。」
(.......)
(ん?マリィどうしたんだ。いつもなら返事してくれるのに。)
(.......)
だが返事はない。
「もういいよ。」
ユキは歩き続ける。しばらく歩くとと人がいた。結構な人数がいる。間違いなく100人はいるだろう。
「すみません。ここってどこなのか教えてくれますか。少し迷子になってしまって。」
ユキは1人の男性に声をかける。
「人殺し。」
「え?」
「人殺し人殺し人殺し。」
その男性は夕方ユキが殺した男だった。
「なんであんたが。なぁそこの人少し助けてくれな........なんでお前ら。」
そこに居たのは今までユキが殺して来た人達だった。
「人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し。」
「人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し。」
「人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し。」
「来るな。こっちへ来るな。来ないでくれ。誰か誰か居ないのか。助けてくれ。誰か僕を助けてくれ。」
「俺たちを殺しておいて助けてとはな。自分だけ助かろうとするのかお前は。」
「違う僕はただ彼女をセシルを助けたいだけで、」
「関係ないだろ。俺たちはなぜお前に殺されないといけないんだ。何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故俺たちは殺されたんだ。」
「それは。」
ユキは何も言えない。理由なんていくらでもあるはずだ。だがどれも自分勝手な理由だ。セシルを守る為とは言え彼らには関係ない。
「俺たちはお前を許さない。必ずお前もこっちに来るその時は、覚えていろ。俺たちの怨みを。」
「はっ。はぁはぁ夢なのか。........いや違う今のは。」
ユキは湖で顔を洗う。月を見てみると寝る前と余り動いていない。どうやら思ったより時間は経っていないようだ。
「もっと死を体験しなければ。僕は死神なんだから。今の弱いままの僕じゃダメだ。」
その時草むらが揺れた。ユキは思考を切り替え戦闘態勢に入る。出てきたのは魔獣。サウザントウルフだ。物凄く大きな群れで行動する魔獣だ。
「少し厄介だな。どうやら寝ているうちに囲まれたらしい。マリィ起きてるか。」
(あと5分。)
「お前いつも必要な時役に立たないよね。」
サウザントウルフは今にでも襲いかかってきそうだ。
恐らく逃げるのは無理。なら倒すしかないか。だがこれだけの数がいるとゆうことは、恐らくボスもいる。周りの雑魚はともかくボスは危険だ。それにどこにいるのか分からない。
「なら雑魚ごとやるまで。合成魔法終焉の嵐。」
終焉の嵐はユキが最初に使えるようになった合成魔法だ。強烈な黒い風がサウザントウルフ達を切り裂いて行く。更に雷が追い打ちをかける。嵐が止むとほとんどのサウザントウルフは絶命していた。が1匹だけほぼ無傷のものがいた。ボスだ。
「今のを無傷なのか。」
ボスはユキに噛み付いて来た。しかしそこまで素早くはないので、簡単に避けた。
どうするやられることはないが、このまま鬼ごっこをやり続けるのは困る。だけど終焉の嵐が効かないならどうやって。
「は?」
ユキが考え事をしていると、ボスはいつの間にかユキの腕に噛み付いていた。
「くっこいつ。」
蹴りを入れるが離れない。
「そっちがその気ならいいよ。」
ユキは空高く飛んだ。そして魔法で自分諸共雷を落とす。
「うっ。」
当然ユキにもダメージはあるが何とか耐えた。ボスは痛みで口を離してしまってる。しかしまだ生きている。ユキはボスの首を持ち地面へと投げつけた。そのまま雷をおびた拳で殴りかかった。
「雷帝落とし。」
ボスは動かない。死んだはずだ。ユキはそのまま立ち去った。
サウザントウルフとのボスと戦って1時間程歩いた後ユキは休憩していた。
(おはようユキ。場所が変わってるけど何かあった。)
(今更起きたのか。マリィ。)
(うーんすっかり熟睡しちゃった。)
(それは良かったね。!)
何かが来る。その気配を感知したユキは戦闘態勢になる。その気配とは
「またお前かしつこいぞ。」
サウザントウルフのボスだった。




