43 死神 5
ネズ・マイトには2つの顔がある。前エルランド王国騎士団長としての顔と、快楽殺人鬼として
の顔だ。そして自分は何をしても許されると思っていた。なぜなら自分は強いからだ。自分は老いたとしても最強だと疑わなかった。世界は自分を中心に動いていると考えていた。だかその考えは、ほんの30分程で打ち砕かれた。ある1人によって。
ネズ・マイトは走っていた。急いでいたせいでおかしなことに気が付かなかった。メイドや使用人が1人も居ないことに。
「はぁはぁ、早く薬を。」
自分の部屋に入り厳重に守られている箱を取り出した。これは魔道具といい魔法の力を持った道具だ。魔力を使えば誰でも使えるがその分値段が高く希少品だ。しかしこの箱の魔道具は登録した魔力以外では開かない少し特殊な魔道具だった。
「クソ、早く開けよ。」
今ではこの一瞬が物凄く長く感じるネズであった。そしてしばらくすると開いた。その中身はいわゆる違法麻薬とゆう物だ。ネズは麻薬中毒者であった。
「そうだパイプはどこだ。」
「ここです。どうぞ。」
「すまない。........は?誰だ貴様。」
気がつくと狐のお面を被った者がいた。変な箱と2本の剣を持っている。
「そうですね誰と言われても困りますが、とりあえずはキツネと呼ばれています。以後お見知りおきを。ネズ・マイト様。」
なんなんだこいつ。服装はどこにでもありそうな庶民服の癖に妙に品がある。どこかの貴族の手の者か。いやそんなことより見られた私の秘密が。
「おい貴様ら賊だ。早く片付けろ。ふんどこの手の者かは知らないが、私の秘密を知ってしまったなら、今までと同じように始末するのみ。貴様は自分の不運と主を呪うんだな。わはははは。」
「妙に小物くさいですね。これでも前騎士団長なんですから驚きですよ。あっそうそう恐らくですが、誰も来ませんよ。既に使用人達は全員片付けていますよ。」
何を言っているんだここには何人の使用人がいると思っているんだ。全員がエルランド王国でも上位に君臨する強さを誇っているのに、そんなすぐにやられるはずがない。だがもしもやつの言っている事が本当なら、いやまさかしかしならなぜ来ない。何をしているだ。
ネズは走り出した。全員のことを確認する為に。
「.......まぁ好きにすればいいさ。確認することは大切だからな。ネズ・マイト。」
「どこだ。どこにいる。」
屋敷には誰も居ない。使用人どころか家族すら居ない。それに獲物達も居ない。使用人はともかく家族と獲物達は困る。
「まさか庭か。.....だがもう限界だ。」
ネズは手に持っているパイプで薬を使い始めた。
「ふぅ心が落ち着く。」
パシャリ。パシャリ。
「いやー良い写真撮れましたよ。ネズ様。ついでにもう1枚撮りますか。」
パシャリ。
「あれどうしたんですか。顔が急に青くなってますけど。大丈夫ですか?」
「おいキツネとやら。その手に持っているのはなんだ。」
「ん?これですか。魔道具ですよ。まぁ魔道具の中でも有名な魔道具ですし、知ってますよね。カメラって名前なんですけど、すごいですねこれ。」
「それを。」
「?」
「それを渡せー。」
ネズはキツネに飛びかかった。しかしキツネは1歩後ろに下がっただけで避けてしまった。
「それは無理ですよ。これは証拠ですから。口だけだと嘘だと思われてしまうかもしれませんし、これなら確実です。それにしても老いましたねネズ・マイト。10年前ならもっと速かったのに。時の流れは残酷です。」
「黙れ。黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ。」
「あんなにも強かったあなたが薬に逃げてしまうなど。」
「黙れと言っているだろが。はぁはぁ、はぁはぁ、貴様に何が分かる若い者に、あのような才無き者に抜かれていく私の気持ちが。私は最強なんだ。無敵とまで言われたんだ。だが奴らはどうだ特別な才能もなければ、努力もしないそのような者になぜ私が負けなければならない。」
「それはあなたが弱いからだ。ネズ・マイト。」
「なんだと。私が弱いだと。」
「そうだ自分の弱さに気づいてもいない。だから薬に逃げてしまうだ。そして自分のことを特別だと思っている。お前は特別ではないし、才能もないだとゆうのにどうやって騎士団長にまで登りあがった。それを忘れてしまったのかネズ・マイト。」
「................ああ忘れてしまったよ。そんな昔のこと。私は最強なんだ。無敵なんだ。私がこの世界の中心なんだ。」
「もう手遅れだったか。なら........おいネズこれを受け取れ。」
キツネは剣を1本ネズに投げつけた。
「なんのつもりだ。」
「お前のその変なプライドを打ち砕く。そして完膚なきまでに俺がお前よりも上だと理解させた上で、言うことを聞いてもらう。お前が勝てばこの写真もすべて渡そう。だが俺が勝ったらお前は俺の犬だ。」
「ほぉ面白い。ちょうど獲物達がいなくて困っていたところだ。私は薬を使った後いつも誰かを斬りたくてどうしようもないんだよ。いつもなら獲物達がその役をするんだが、今日はお前だキツネ。」
ネズは剣を抜く。
なまくらだ少し扱いを悪くすればあっという間に折れるだろう。だからこそほんとうの実力が分かる。私のことを馬鹿にしたこと死んで詫びるがいい。
「いくぞ。王国流剣術、獅子の突撃。」
ネズが誇る最強の技をいきなり繰り出した。しかしまだキツネは剣を抜く気配はない。勝ったそう確信したネズは笑みを浮かべる。しかしキツネには当たらなかった。いや当たってはいるが、刺している感触がなかった。
「なんだこれは。幻影魔法なのか。」
「正解だ。」
「いつの間に後ろに。くっ。おりゃああああ。」
ネズはキツネに斬り掛かるがまたもや感触がない。
「それは偽物です。本物はこっちです。」
「いやいや本物は俺だって。」
「何を言っているんだか。僕が本物です。」
「私本物。」
いつの間にかキツネは何十体にも増えていた。
「なんなんだこれは。」
ネズは絶望した。
この中から本物を探せと。いつ攻撃されるのか分からないのに。
「無理だ。」
「「「「おやおやこっちは攻撃してないのに諦めるですか。やはり老いましたね。」」」」
「なんだと。」
再びネズの目に炎が宿った。
「それならそっちが攻めてこい。」
そして本物を見つけ出してやる。
「「「「わかりましたそれではいきます。懺悔の準備は出来てますか。」」」」




