39 死神 1
「ふぁ~ねみーな。」
「おいちゃんと見張れよ。お前がサボったら、俺たちまで罰になるだぜ。」
「んな事言ってもよ。ってなんだよこの霧。おいお前ら大丈夫か。」
男は仲間の方を見るが、誰もいない。とゆうより霧で何も見えない。どうやら自分の周りだけ煙が無いようだ。
「おい、聞こえるか?なにか返事しろ。.......ったく早く返事しろって言って」
「残念だけど彼らは二度と返事は出来ないよ。だってもう息をしてないからね。」
何者かの声がした。声が聞こえたと同時に霧は止んだ。男は周りを見てみるが声の主は見当たらない。見当たるのは苦しみの顔をしながら寝ている、男の仲間達だけだ。男は状況に理解することが出来なかった。
「おいお前らどうしたんだよ。俺にサボるなって言っておいてお前らは全員寝るなんておかしいだろ。おい起きろよ。」
「だからもう起きることは無いよ。」
後ろから声がした。男は振り向こうとしたが動けなかった。何故なら男の肩に剣を置いてあるからだ。後ろに振り向いた瞬間、男の首は飛ぶだろう。
「聞きたいことがある。嘘をついたら殺す。」
声の主は本気だ。それだけは男にも分かった。兎に角生き残らないとなにをするにも始まらない。男はまだ死ぬつもりは無かった。
今俺は生きている。他の奴らとは違う。俺は生き延びてみせる。そして今回の仕事で稼いだ金で一生遊んで暮らすんだ。
「聞きたいことは一つだけだ。中には誰がいる。人数も出来れば知りたい。」
「一つだけじゃねーじゃねーか。おっとごめんごめんそれで中にいるやつだっけ。中には俺たちのボスととある取引相手。そして俺たちの仲間が5人だけだ。」
「そうか。」
今だ。男は咄嗟に剣を奪い、後ろに振り向きそのまま声の主に斬りかかり.......たかったが、残根ながらそれは出来なかった。まず奪ったはずの剣が無い。確かに奪ったはずなのに。
「どうしてって思ってますね。冥土の土産です。教えてあげます。」
男は探す。声は聞こえるのに姿が見えない。
「答えは簡単です。ただの幻影魔法ですよ。」
突然何も無い空間から1人の少年が現れた。その少年は中性的とゆうか、少し不思議な少年だった。男はそんな事を思いながら死んでいった。
「やれやれ念の為に幻影魔法を使っておいて良かったよ。にしてもまさか逃げるんじゃなくて、剣を奪おうとするなんて思わなかったよ。」
まさか本当に奪えると思っていたのだろうか。人が握っている剣を奪うことはそう簡単じゃない。それなりの力と技量が必要になってくる。まさか今の男にそんな力も技量もなかっただろうが、なにを考えて奪おうとしたのだろうか。
「まあどうでもいいか。」
ユキは潰れた酒場に入っていく。だが誰もいない。明らかに怪しい階段があるだけだ。
「地下か。」
ユキは迷わず降りていく。元よりどんな怪しい場所でも戻ることは出来ないのだから。ユキがこの道を進むと決めた時から。
「では今夜作戦を決行でよろしいですね。」
「ああ頼むぞ。あの娘は俺の嫁に相応しい。」
鳥の爪のボスであるババスはある取引をしていた。それはある少女を誘拐する事だ。そして目の前のオークのような、いやオークに失礼なくらい豚のような男が今回の取引相手だ。よく自分たちを使ってくれるいわゆるお得意様だ。
「今度はなるべく大切にしてくださいよ。毎回毎回新しい娘を誘拐するのは大変なんですから。」
「仕方ないだろ。どいつもこいつも俺の嫁に相応しくないからだ。少し殴ったぐらいで直ぐに死んじまう。」
「それなら仕方ないですね。」
「ああ俺は何も悪くない。」
こちらとしては金さえ払ってもらえればなんでも良いのだが、そろそろどこかから目を付けられるかも知れない。ババスはそう考えた。そしてこの仕事を完遂したらしばらくは休もうとも考えていた。
いつも部下には厳しくしすぎているかもしれない。あまり部下にあたりすぎると、誰もついてこなくなる。たまにはどこかで遊びにでも行くか。
「俺は前エルランド王国騎士団長の長男ロロス・マイトだからな。なにをしても許される。」
「そうですね。」
ババスが適当に相打ちを入れていると悲劇は起きた。いや既に悲劇は起きていた。
「悪いが、ほかの誰かが許しても僕だけは許さない。」
「なっ誰だ。」
扉が開いていく。ババスは憤怒する。一体部下はなにをしているんだ。部外者を入れるなんて、まさか襲撃者か。いや外に5人、中に20人いるんだここまで来れるはずがない。
「誰と言われても困るが、強いて言うならお前らが誘拐しようとしている女の子の兄だよ。」
「.....なぜここにいるだ。」
事前情報として彼のことは調べてあった。だが分かったのは名前ぐらいでほとんど分からなかった。少し気になり昼間物陰から覗いて見たが、なんの問題も無いと判断した者だ。ババスは訳が分からなかった。
「ここにいる理由は説明するまでもないだろ。」
「そうじゃない。ここにどうやって来たんだ。ここには合計25人の部下達が守っていたはずだ。」
「確かに人数だけはいたね。だけど全員武器の持ち方すらもわかっていない一般人じゃないか。まともに訓練した者なんて誰もいないんじゃないのかな。武器を持って数で脅せば、世の中どうにかなると思ってる。そんな奴らどれだけいても問題じゃない。」
「では全員」
「ああ全員死んでもらったよ。」
ユキは武器に付いている血を見せる。
「悪魔だ。あれだけの人を殺すなんて。」
「違いますよ。僕は悪魔じゃなくて......死神ですよ。それからお久しぶりですロロス様。」
ロロスは反応出来ない。まるで幽霊でも見たかのようだ。それもそのはずロロスはユキは既に死んだと言われていたからだ。それでも無視する訳にもいかない。もしかしたら他人の空似かも知れないのだ。
「悪いが、俺とお前は多分会ったこと、無いと思うのだが。」
「記憶に無いですか。そうですか。散々僕のこと虐めておいて忘れているんですか。でも構いませんその事については、別に既に過去の事です。水に流しましょう。」
「だからなんの事だか」
「ですがセシルに手を出したのは、許せないですね。」
「どうしたんですか。ロロス様あなたが怯えるなんて珍しい。」
ババスは混乱していたが、ロロスがより混乱しているのを見たらいつの間にか落ち着いていた。
「少し黙れ。.......!そうだこいつを殺せ。そしたら報酬は3倍にする。どうだ。」
「なぜそこまで必死に」
ユキはロロスの心臓を剣で貫いた。
「おい未だ話の途中だろ。普通は最後まで待つだろ。」
「それはおかしいでしょ。確かに最後まで相手の話を聞くって人もいますが、残念ながら僕は違います。」
「なんだと。俺は前エルランド王国騎士団長の」
「おいデブ。」
「???」
デブ?今誰に向かって言った。もしかして俺なのか。もしかしなくても俺だよな。
「俺はデブじゃねー。周りがみんな痩せすぎてるだけで俺はデブじゃねー。俺がおかしいんじゃない、周りがおかしいんだ。全部周りが周りが悪いんだーーーー。はぁはぁはぁ。」
「もういいか。」
「なんだと。お前エンゼル家のユキだろ。あのチビが何を言っているんだ。昔からお前は俺の奴隷だろ。」
「いい歳してなにを言っているのやら。もうあの時の僕とは違うんだよ。今からそれを教えてやるよ。」
ふざけるな。と言いたいが声が出ない。とゆうか体が無い。頭しか無い。何が起きたのか分からないままババスは死んでいった。
「もう死んでると思うけどそれは僕の神力だ。そう死神としての僕の力だ。5年前にはなかった力だ。」
ユキのいや死神の神力は【消滅】対象を文字通り消し去る力だ。マリィとの修行中にやっとの思いで使えるようになった力だ。だがこの力は一つだけ問題がある程度それは
「うっやっぱりまだ早かったか。」
ユキは口から血を吐いていた。




