35 王家の人々
「そうかマツブキ商会は来週から営業を再開するのか。それは良かった、私も出来ればマツブキ会長に会いたかったのだが、まぁ仕方ない。とりあえずもう下がってくれ。....いや待ってくれ、実は内密に頼みたいことがあるんだが。」
エクスの指示を受けた騎士は早速行動を開始する。何も不思議に思わない。彼は普通の騎士ではなくエクス直属の騎士だからだ。
「次から次と問題が来るな。」
いくら優秀であってもいきなり全ての国王の仕事をするのは無理だ。しかし国王である父は持病で倒れ王妃の母は、今弟か妹の出産中だ。結果として第一王子であるエクスに全ての仕事が来るのは仕方ない事であった。
しばらく資料を見ていると弟のエドワードがやってきた。1人では出来ない事も2人なら意外と出来るものであり、エドワードにも手伝ってもらっていたのだ。
「兄さんこっちは終わったよ。次は何をすれば良い?」
「いや急ぎの仕事はもう全て終わったよエド。お前も頑張っただろう少し休め。それにそろそろ弟か妹が産まれるぞ。」
「そうだね。少し休ませてもらうよ。それにしてもあれだけあった仕事をこんな短期間で終わらせるなんてやっぱり兄さんは凄いよ。」
「いや私だけでは出来なかった。お前が手伝ってくれたから、ここまで早く終われたんだ。本当はまだ11歳のお前には手伝わせたくなかったんだがな。」
これはエクスの本心だ。エドにはのびのび自由に過ごして欲しい。せめて子供のうちは。だが現実はそうはいかないらしい。
「別に構わないよ。兄さんのためなら僕はなんでもやるし。兄さんも僕を頼って欲しい。」
「ありがとうエド。」
嬉しい事を言ってくれる。
「それで兄さん実は話があるんだけど。やっぱりキース帝国に動きがあるみたい。戦争準備だと思う。」
「そうか。」
あまりにあっさりしている兄対してエドワードは少し不思議に思った。
「もっと驚くと思った。」
「なんとなく予想は出来ている。......恐らくキース帝国との戦争は避けられない。10年以内に確実に戦争が始まる。一部の貴族たちは呑気な事を言っているが、我々エルランド王国も準備を始めなければ」
ドンと勢いよくドアが開いた。確かこの間入ったばかりの新人メイドだったか。本来なら無礼者として扱うが、エクスもエドワードも用件が分かっているので何も言わなかった。
「失礼します。生まれました。王女様です。」
「そうか分かった下がってくれ。」
「妹かー。」
エドはペン回しをしながらボソリと呟いた。
「らしいな。まぁ健康に産まれてくれれば弟でも妹でも構わない。」
「そうだね。あれ?」
急にエドの体が倒れた。普通の倒れ方ではない。エクスは慌ててエドに近ずいた。
「おいエド大丈夫か。直ぐに誰かを、んなんだエド何を言っている。」
力ない声でボソボソ喋っている。
「すまないがもう少し大きな声で喋ってくれ。」
「兄さん....たす.....け......」
「おいしっかりしろエド。誰か、誰かいないか。エドが大変なんだ直ぐに来てくれ。」
エクスの声が聞こえた者が集まってくる。そしてエドの姿を見ると直ぐに治療室に連れていかれた。
「...........エド無事でいてくれ。」




