34 正体 3
(まぁそうだろな。私でさえ見たことない。正直都市伝説だとキョロキョロまで思っていた。だがこの反応、間違いないと思う。)
(なんでそう言いきれるんだ。見たことないんだろう。)
(そうだけどなんとなく分かるんだ。ユキの中にある精霊の力が。まぁもしかしたら私の知らない別種族かもしれないが、多分精霊族だと私は思う。)
本当に精霊族なのか怪しいが、嘘とも思えないし、とりあえずは放置にすることにした。最悪自分が調べればいいだけだ。
(そしてユキにとっては、もっと驚くことも分かった。セシルの事だ。)
(なんだ。)
セシルの事と言われ反射的に聞き返していた。恐らくは人生で1番早かった反応だっただろう。
(多分彼女の母親もエルフじゃないかな。)
(.......なんでそう言えるんだ。)
(ユキも分かっているだろう。)
ああわかっている。だが知りたくない。別種族どうしの子供は両親の種族どっちにも大抵は嫌われる当然だ。人は自分以外は怖い。あまり知らない別種族すらも、怖いからとゆう理由で殺すような者が人だ。それを更に分からないハーフなんて誰も受け入れてはくれないだろう。自分はまだ我慢出来る。だがセシルには出来ないだろう。彼女の心は酷く傷つくだろう。いや違うセシルが傷つかないでほしいんじゃない。僕が傷ついてるセシルを見たくないんだ。だからこの思いは、セシルのためじゃなくて自分自身のためだ。
「冷たっ。」
なんて事を考えいたら氷が震ってきた。
(集中するのはいいが、人との話の最中には止めような。きっとマサトも気づいているだろう。セシルの母親が幼かったのは、呪いではなく種族的な理由だろう。もしかしたらドンママ等も知っているかもな。)
(なあマリィどうすれば良いんだ。このままじゃセシルの正体がバレてって止めてくれマリィ氷を降らすのは。)
抵抗しても常に氷が震ってくる。結果1分ぐらい経ってからやっとマリィが魔法を止めてくれた。
(なあユキお前はセシルのなんなんだ。それはセシルが自分で考えて自分でどうするのか決める事だ。間違ってもお前が決める事じゃない。お前がセシルの事を大切に思っていることは分かるが、別にセシルは赤子ってわけでもないんだし別にお前に全てやってもらわないといけないわけでもない。むしろ今全てやってもらっているのはお前の方なんじゃないのかユキ。)
(ごめん。)
(なぜ謝る。別に謝って欲しい訳じゃない。私が言いたいのは、セシルにはセシルの人生がある。それを勝手にお前が決めるな。とゆう事だ。いずれユキは他人の人生を決める時がやってくる。その時まで待っておけ。)
ユキはマリィの迫力に少し怯みながらもマリィの話を聞いた。そしてその話はユキの心にすごく突き刺さったのであった。
(そうだな。少しおかしかった。今の僕には何も出来ないでむしろ守ってもらっている側なのに、セシルの事を.....)
自分はなんて考えをしていたのだろう。セシルのためと言いながら、実際は自分のためだし、セシルの問題を自分の問題と認識したり、僕はバカだ。
(少し言い過ぎたかもな。話を戻すが、エルフと妖精族は魔法が得意と言われている。一方精霊族は魔をとうざけると言う。そのせいで風属性の魔法は上手く使えるのに、闇属性魔法は苦手とゆうことが起きているんだな。)
(そうだったのか。でもそれがどうしたんだ。)
(いやね私は魔法のエキスパートなんだよ。全ての属性は使えるし、習得の難しい合成魔法や古代魔法なんてのも使えるまさに魔神なんだよ。)
ウザイ。ユキはそう思った。
(そこで私が直接魔法を教えてあげるよ。もちろん神力の使い方もね。)
(それはすごく助かる。正直に言うと魔法は自分で習得するよりも誰かに教えてもらう方がいいからな。)
(それじゃあ決定ね。まあ今日はこの辺りで終わりにしますか。)
(.....少し待ってくれ。)
(?)
ユキは深呼吸をする。今からする質問はもしかしたら物凄くデリケートな質問かもしれないからだ。だがどうしても知りたかった。
(マリィ君の本当の名前はなんなんだ。名前って物はその人物の様々な物が入っている大切なものだ。だけど君の名前はそれを感じないつまりは)
(つまりは偽名って言いたいの。)
マリィはユキの言葉を先回りして奪った。
(ああ。随分とユキって名乗りたがっていたしもしかしてお前)
(それ以上は禁止。プライベートだよ。)
(そうか。)
そう言われてしまったらどうしようもない。さっきの話だがこれはマリィの問題だ。少なくとも偽名でも名前を呼ぶには問題ない。
(にしてもすこし傷ついたなー。とゆうわけでユキにも少し傷ついてもらおう。)
ユキは天井を見上げる。今度は何が落ちてくるのかなどと心配していると何も落ちてこない。
(なんてね。なにもないよーだ。)
(全くもう止めてくれ。)
(ごめんごめん。せいぜい名もなき剣がさっきユキが寝てた時に折れちゃったぐらいだよ。でも元はあれ私の剣だし、そもそもどのぐらい手入れしてなかったんだろう。簡単に折れちゃったよ。)
(???あのーマリィさん。状況が理解出来ないんだけど。)
(まぁ剣はリディアがあるし、別に問題ないよね。)
(いやいや問題ないわけないだろ。)
(大丈夫大丈夫きっとどうにかなるって。)
そんな話やり取りを日の出までやり続けていたユキとマリィであった。そんなどうでもいい口喧嘩でさえも楽しく感じることが出来るユキはきっと幸せなのだろう。今はまだ。




