29 マサトの思い
ユキはまだ日も出てない深夜と言う時間帯に庭に出ていた。そこにはやはりものすごい形相のマサトが待っていた。
「起きたかユキ。まずは色々言いたいことがある。」
「·····」
分かっている。ユキは自分が何をしたのかを、みんなを逃がすためとはいえ自分の命を蔑ろにしたのだ。親代わりのマサトが怒るのは当然だ。ユキは殴られるぐらいは覚悟していた。しかしマサトのとった行動はユキの予想とは違っていた。マサトはユキの事を抱きしめたのだ。
「すまなかったユキ。」
「いやなんでマサトが謝るんだよ。悪いのは勝手な行動をした僕だろ。なのになんでマサトが謝るんだ。」
ユキには正直理解出来なかった。むしろユキはマサトに怒ってもらいたかった。怒って自分の罪を懺悔したかった。自分がいけないことをしたと言ってもらいたかった。
「·····ユキお前には言っておくことがある。俺は良い親じゃない。良い親ならここでお前を注意するだろう。だが俺には出来ない。なぜならそれは逃げる事だからだ。そもそも俺があの場でどうにか出来ていればお前は、危険なことをしないで済んだんだ。ここでお前を怒るのは俺がその罪の意識をお前にぶつける事になってしまうからだ。だがら俺は良い親じゃない。すまないユキ。」
マサトはユキの事を最初は怒るつもりだった。だが時間が過ぎれば過ぎるほど、自分の罪から逃げるためだとゆうことに気がついてしまった。結果から見れば全員生きているし、あの場で何もしないよりは絶対に良かった。
「いやそんことはない。マサトは十分良い親だ。なんならセシルに聞いて見れば分かる事じゃないか。それに罪の意識と言ったけどそれは僕も同じだ。僕もマサトに叱られて罪の意識を忘れたかった。だから僕も同じだ。」
「そうか。」
「ああ。」
「·····」
「·····」
「·····とりあえず座るか。」
「そうだな。」
今日は訓練をする気にはなれないし、体を休めた方が良いと言って訓練はしばらく休みになった。それからしばらくはくだらない話をしていたがマサトが真剣な顔で言ってきた。
「なあユキ聞いてくれ。大切な話だ。」
ユキは少し緊張しながらら聞いた。
「なあユキ多分俺は近いうちに死ぬ。」
「·····何言ってんだ?」
冗談かとも思ったがマサトの顔は真剣だ。とりあえずマサトの話を聴くことにした。
「まあそうなるよな。だけど長いこと戦っているといつ自分が死ぬのかなんとなく分かるんだ。そして俺は多分近いうちに死ぬ。それが明日なのか、1年後なのか、10年後なのかは分からない。だがこれは防ぎようがない。きっと運命ってやつだ。」
「いや何が運命だよ。それじゃあセシルはどうするんだよ。」
ユキは自分でも分からないうちに怒っていた。
「俺が言いたいのはその事だ。俺が死んだらセシルは1人だ。だからセシルの事を頼みたい。」
ユキはとあることを思い出した。それはユキがセシルの呪いを解くと言った時の事だ。あの時マサトは泣いていた。あの時は感謝で泣いていたと思っていたが本当はセシルの事を任せることが出来る人を見つけたから泣いていたのか。
「そりゃセシルは僕がどうにかするけど、マサトはそれでいいのか。」
「良くはない。けどこれはどうしようもないんだ。少しづつ死が俺を追いかけてくるんだ。正直俺はこの前がその時だと思った。だから死ぬ覚悟はしている。だからユキお前は死ぬなセシルの事を1人にしないでくれ。」
マサトは本気だ。正直マサトが死ぬのは想像出来ないが、きっと本当なんだろう。
「分かった。僕は死なないしセシルを1人にしない。そして呪いも解く。だけどマサトお前も一緒
だ。3人で一緒に暮らそう。」
「そうだな。」
分かっていた。そんなことは不可能だと。だが2人は約束した。3人で暮らそうと。
「あっそうそう。ユキこれお前のだ。」
そう言ってマサトは皮袋を渡してきた。中身を見てみると聖金貨が大量に入っていた。こんな大金見たことない。
「マサトなんだこれ?」
「金だ。」
「いやそうじゃなくて、なんの金だと聞いてるんだよ。」
こんな大金渡されたら困る。
「さっき言っただろ。俺は死ぬかもしれない。俺が死んだら生活が出来なくなる。その金だ。安心しろお前の屋敷の物や今回の件でマツから貰った金だから。ちゃんとした本物だ。」
「いや僕も働くから多分お金は大丈夫だと思うんだけど。」
「良いから受け取っとけ。使う使わないはお前が決める事だ。」
そう言いマサトはユキに皮袋を渡す。果たして子供にこんな大金持たせて良いのかとも思ったがとりあえずユキは受け取った。
「じゃあこれは借りておく。」
「ああ借りといてくれ。それから返す時はセシルでも渡してくれ。」
「ああ必ず返すよ。」




