28 魔神と神
「·····なるほど、とりあえずなんとなく理解した。確かに魔神ならこんなわけのわからないことも簡単に出来るだろうしな。でその話が確かなら神を殺せばセシルの呪いは解けると。でもそれをどうやって信じろって言うんだ。仮に全て真実だとしても、魔神であるお前が倒せないんだから、僕にだって不可能じゃないか。てかそろそろ名前やそのころころ変わる人格やめてくれかいか。」
ユキにしては随分と早口で喋ったなとユキ自身が思っていた。そんな事を考えるのは彼女の話を信じてなかったからだ。もし信じてしまったらセシルはユナとゆう人の子孫にあたりとんでもない数の人が呪いで幸せを奪われている事になる。ユキは呪いの事を甘く考えていた。神がそんなことをするはずがない。神は人々を助ける者のはずなのに、話を聞けば人々に絶望しか与えてないじゃないか。
(まず神を殺す手段だがこれは別に簡単に出来る。)
「え?」
魔神が話し始めユキは何を言うのかと思えば神を簡単に殺せる?それならさっさとやればいいじゃないか。
(神とて生物なんだ、不老不死という訳にはいかない。どんな生物でも弱点は存在する。そして神の弱点は心臓だ。そして奴は私に恐れて自分の心臓をある場所に隠した。)
「その場所は?」
ユキは薄々感ずいていたがあえて聞いてみた。もしユキの考えが正しければ、その場合は
(お前の考えている通りだ。神の心臓はここエルランド王国の国宝として置いてある。なのでお前は祖国を裏切らなければならない。当然警備は厳重だろう。盗みに入るなんてとても不可能だ。)
ユキには何が言いたいのか分かってしまった。つまり戦争だ。ユキは元とは言え貴族だ。エルランド王国の事を愛しているし、まあ多少他の貴族の子からいじめられていたがそれでも、大切な人
もいる。だが戦争でもしない限り神の心臓は手に入らない。
(分かっているなら話は早い。隣のギース帝国はそろそろこのエルランド王国に戦争を始めようとするらしいじゃないか。今すぐにとはいかないだろうが10年以内には確実に戦争が始まる。ちなみにこれは君の記憶から貰ったものだよ。だから戦争が起きることは君は分かってただろユキ。)
「·····」
ユキは何も言えない。確かにギース帝国は近年戦争で各国を侵略している。父と母を始めほとんどの貴族は事態を甘く見ていたがユキは近いうちに戦争が起きる事を理解していた。
「少し···考えさせてくれ。」
ユキは結局先延ばしを選択した。こんなことに意味は無いはずなのに選択肢は1つしかないのにユキは決断することが出来なかった。
(分かった。存分に考えてくれ。そして名前だったな。名前はずっと言っているがユキだ。)
「それは僕の名前だ。昔の名前で良いから教えてくれ。じゃないと呼びにくい。」
ユキは正直身体は痛いし、魔神のせいで頭も痛いなのでさっさと話を終わらせて休みたかった。ユキがそんな状態なのが分かっているからなのか魔神は少し優しい雰囲気になった。これは母親の雰囲気だ。
(そうだね。名前はマリィって私は言うの。ごめんねユキ疲れてるんだったね。早く話を終わらせるから少し待ってね。それでなんで人格が変わるのかだったよね。私はたくさんの人になって生きてきたの。今のユキみたいにね。だからその人の人格がうつちゃうことがあるの。しばらく時間経てばそんなこと起きないんだけど、5年ぐらいは我慢してね。それから剣はマサトに教えてもらうんでしよ。だから私は魔法をユキに教えるね。ユキには強くなってもらわないとだから。)
ユキはなんだか色んな事を言われたが正直眠くてあまり聞いてなかった。だが魔神の名前がマリィということだけは分かった。
「悪いがマリィもう限界だ。話してくれと言ったのは僕だが少し疲れた。また話してくれ。」
(分かったよユキ。それじゃあおやすみなさい。)
ユキはその言葉を聴くと直ぐに寝てしまった。そしてその日はマサトの家に来てから1番良く眠れたとユキは思った。




