24 マツブキ商会での戦闘4
フレイムタイガーの目の前には1人の少年が倒れていた。ピクリとも動かない当然だ彼は死んでいるのだから。フレイムタイガーは残念に思った。不意打ちとはいえ自分に傷を与えた者を狩ることが出来なかったことを。できることなら自分の爪で、自分の牙で倒したかったが残念ながらそれは出来なかった。フレイムタイガーは仕方なく新しい獲物を探すため出口に向かおうとした。しかしいつの間にか自分の足が切断されていた。そしてそのままフレイムタイガーは何が起きたのか分からず、首を斬られ絶命した。
「全くこの程度の魔獣に殺されかけるなんて先が思いやられるぜ。お前が死んだら俺様も死んじまうんだから。」
フレイムタイガーを倒した者が愚痴を呟く。今のユキはユキであってもユキじゃない、そんな存在だった。そのことが分かった彼女はナイフを取り出し、ユキの体に向かって、音もなく完全に視覚外からの奇襲をした。
「全く奇襲ってのは相手が気づいていないから、奇襲って言うんだぜ。」
声は彼女の後ろから聞こえた。そして聞こえた時には彼女の上半身と下半身は別々になっていた。だが彼女には痛みは感じない。死にもしない。むしろやはり自分は主に創られた完璧な存在だと認識した。そして今のユキに向かって口を開いた。
「あなたとははじめましてですね魔神。それにしても幻影を使っての奇襲とはなかなか汚いですね。」
「お前だって今奇襲してきたじゃねーか。まあ全く通用しなかったがな。それに虎の爪を使って俺様を炙り出そうとしたり、お前の方がよっぽど汚いぞ。それでお前のことはなんて呼べばいいだ。No.15でいいのかそれとも」
「いえNo.15とゆう名前はここマツブキ商会で働く時の名前ですので。私の本当の名前はネネと申します。主から受け取った素晴らしき名前です、なのでこれからは私のことはネネと申し下さい。」
魔神と呼ばれたユキはいつの間にかネネの上半身と下半身がくっついている事に気がついた。だが今のユキからしてみれば特別な事ではなく、むしろそんなことに気を取られれば、ネネはすぐさま攻撃してくるだろう。実際ネネの手には未だにナイフが握られている。
「分かったネネだな。じゃあ面倒だから単刀直入に聞くぞ、今ここで俺様に殺されるかそれともお前の主を助けを求めてここに呼ぶか、どっちにするかさっさと決めろ。」
「ふふふふふふ」
「?」
ネネは思わず笑ってしまった。今目前にいる者は主を売れと言ったのだろうか。自分達の忠義はたとえ死ぬ事になっても主を裏切ることは無い。
何を言ってくると思えばまさか主の事を呼べなどと。あなたはおかしな事を言います。私達は決して主の事を売ることなどはしないとゆうのに。それに私を殺す。それは私の正体に分かってて言っているのでしょうか。もし分かって言っているのなら、私達「天使」は決して滅びる事は無い、不死の存在だと知らないのでしょうか。それとも全知全能の神に創られた完璧な私達を馬鹿にしているのでしょうか。もしそうならそれは主である神への冒涜です。それは決して許される事ではありません。私があなたに天罰を下しましょう。
「おい大丈夫か?いきなり笑ったりして。まあそれより早く答えは出してくれ。ここで死ぬか神を呼ぶか」
まあ仮にネネが神に助けを求めても神は彼女を助ける事は無いと今のユキは考えているが。もしかしたら万に一つの可能性があるかもしれない、と思っていたが。そもそもネネは助けを呼ぶつもりは無いようだ。
「答えですか。答えはもちろんあなたへ天罰を下し主にあなたの命を捧げる事を選びます。」
直後ネネから羽が生え、今までの比にならないほどの魔力がネネをおおった。そして一点に魔力が集中する。明らかに狙いは今のユキだ。
「これが主から貰い受けた加護消えなさいジャッチメント」
ネネが魔法を唱えると光に包まれた。
「主よ今ここに、私ネネが主の邪魔をする魔神に天罰を下しました。どうか主はご心配なく」
「何やら報告している所悪いんだが、俺様は生きてるぜ。」
光の中から声が聞こえた。ネネはありえないと思いつつ、まさかとも思い光が止むのを待った。そこには何一つ変わらないユキの体を操っている者がいた。
「ジャッチメント光属性の最上位魔法だったか?確か能力は範囲内の生命を全て消滅させるみたいな感じだったな。」
魔法の説明を始める魔神に今動揺を見せたら、相手の思うつぼだと思い平然とした感じの雰囲気をだし相手の話に乗るしかネネには出来なかった。
「ええそうです。範囲内の命は全て消滅して神である主の下に行きます。······1つ聞いて良いでしょうか?」
それでもどうやって自分の「ジャッチメント」を躱したのかがネネは気になり聞いてしまった。
「一体どうやって今の魔法を躱したのですか。」
「ん?そんなの決まってるじゃん。全ての命が消滅するなら、それを食らう前に自分で死ねばいい。」
何を言っているのでしょう。それならあなたはここで立っているはずないでしょう。確かに「ジャッチメント」には命がある者にしか発動しません。現にそこで死んでいるフレイムタイガーには効果は発動しませんでした。しかし自害しても結局は死には変わりありません。だからこそ「ジャッチメント」は完璧な魔法なのです。なのにどうして。
「まだ分かってないのか。だーかーらー、俺様は1度死んでから蘇ったんだよ。」
ネネは衝撃な発言を聞き頭痛のような頭の痛さを感じた。実際は天使であるネネに頭痛など起きるはずなどないのだか。
「蘇る?何を言っているのですか。蘇生など私達天使にも出来ない、それこそ神である主にしか出来ないことです。」
「いやだからそれをやったの。お前頭いい感じ出してるけど、もしかして馬鹿なのか?」
その言葉を聞いたネネはとてつもない怒りを覚えた。
馬鹿だと。主に創られた完璧な存在である私が馬鹿。許せないこれ以上私と主を侮辱することは。
ネネは音速の速さで攻撃を始める。しかし今のユキにはそれすらも、遅かった。しばらくは楽しめるかと思っていたが、常にナイフの攻撃をはじき返すだけのただの作業だと分かると反撃を開始する事にした。
「久しぶりにやるかゼロ。」
名もなき剣はゼロと呼ばれ姿が変わった。名もなき剣の時は漆黒と言うのが正しかったが、ゼロと呼ばれてからは、その姿は黄金に輝き出した。
「ああそうそう。もしかしたら勘違いしているかもしれないから1つ教えとくけどよ、もし知ってたら無視してくれ。天使は別に不死身じゃない、
神に創られた完璧ない存在だと思っているならそれは違う。天使はただほんの少しだけ他の奴ら寄り頑丈で再生力が高いだけだ。天使だって死ぬ時は死ぬんだよ。それを教えてやるぜ、ヘルフレア。」
魔法を今のユキが唱えるとゼロは黒い炎を纏った。ネネは身の危険を感じ離れようとしたが間に合わず、最初と同じように上半身と下半身が別々に別れた。だが最初と違うのは、ちゃんと痛みがあり上半身と下半身がくっつかないとゆうことだ。
「ぎゃあああ。痛い痛いなんで私が。神よ主よどうか私の事をお助けを」
しかし助けを求める途中でネネのが体は完全に燃え尽き灰すら残らなかった。そしてネネのいた場所に魔神とネネに呼ばれた者は言う。
「言い忘れてたけど俺様はもう魔神じゃない。今の名前はこいつと同じユキだ。もう会うことはないがそっちも本名言ったんだこっちも、本名言わせてもらうぜ。」
ユキは言い終わるとその場で倒れてしまった。
そして意識が元のユキに戻るだが体は動かず、物凄く眠い。そのままユキは寝てしまった。遠くから聞こえる、救援の声を聴きながら。




