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世界も人も狂ってる  作者: 拓斗
2 エルランドでの生活 (1)
22/67

22 マツブキ商会での戦闘2

召喚石それは闇魔法の適正がなくても、魔獣や魔物等を召喚出来る魔道具。ただし1度使うと壊れてしまうとゆう性質を持っており、生産も難しいので召喚石1つで白金貨15枚はするぐらいの貴重品。なんでそんな物を強盗が持っているのか分からなかったが、そんなことよりユキは召喚された魔獣の方に注目していた。

フレイムタイガー名前の通り炎を操る虎の魔獣だ。熟練の傭兵が数人いれば倒せる魔獣だが常に体に炎を纏っており討伐には水が必要、また熱の攻撃に対して耐性を持っており、火属性の魔法や火攻め等は効果が薄い。ユキは瞬時に記憶の中からフレイムタイガーの事を思い出した。


「マサトその魔獣は危険だ。1回セシルを連れてこっちに戻ってこい。」


「いいやそれは出来ないぜ。マツ、セシルのこと頼んだぜ。」


マサトはセシルをマツ会長に向かって投げた。マツ会長はセシルのことを無事に受け止めた。そしてマサトはフレイムタイガーへと突撃した。だがフレイムタイガーの炎の鎧を突破することが出来ない。


「無駄な事を。フレイムタイガーを武器も水も無しに倒すことなど出来ん。よくも俺達の邪魔をしてくれたな。フレイムタイガーさっさとそいつを殺せ。」


虎の爪のボスがフレイムタイガーに命じる。だがフレイムタイガーはその命令を聞かない。本来召喚石で召喚されたフレイムタイガーが召喚石の持ち主の言う事を絶対に聞くはずなのだが、フレイムタイガーは全く動かなかった。

そして周りを囲っていた虎の爪の1人が呟く。


「やれやれ彼女の存在を感知したからやってきたものの、どうやら私の勘違いだったようです。フレイムタイガーあとは好きにしなさい。ただし虎の爪のボスは私と関わりを持っているので必ず殺すように。」


その人物は言い終わると既にその場から消えていた。

そしてフレイムタイガーはとゆうと命令に従い虎の爪のボスを狙っていた。なんだか様子がおかしい虎の爪のボスはようやくその考えに至った。

いくら命令をしてもフレイムタイガーは反応しない。だがもう一度命令してみる事にした。


「おいフレイムタイガー俺言う事を聞け。お前の主人だぞ。」


だがフレイムタイガーは命令を聞こうとはしない。だがようやく動き出した。だがフレイムタイガーが向かって来ているのは自分のほうだった。それは明らかにおかしかった。主人である自分に牙と爪を出して殺気まで出している。


「おいフレイムタイガーどうしたんだろ。俺じゃないあいつを殺せ。聞こえないのか、なんでこっちに来るんだ。やめろ来るな。おいお前らこいつの事を止めろ。」


ボスは子分達に命令するが、子分達も動くことが出来なかった。当然だ。今フレイムタイガーの前に立てば誰であろうとも、殺される。そんな所に行けるはずがない。


「おい早くこいつを止めろ。おい来るな。フレイムタイガーお前の獲物はあっちだ。俺じゃない。だから来るな。嫌だ死にたくない。やめてくれ。助け」


まだ何か言っていたが、フレイムタイガーはお構い無しと虎の爪のボスの上半身を噛みちぎった。







ユキは少し前から様子がおかしいに気がついていた。フレイムタイガーがボスの言う事を聞かないのだ。その隙を見てマサトはこっちに戻って来ている。マツは光属性の適正があるようで今マサトの怪我を治している。そしてついに決定的瞬間だった。フレイムタイガーが自分にはの主人である虎の爪のボスを噛み殺したのだ。


「馬鹿なありえない。召喚された魔獣や魔物は主人の言うことは絶対に聞くはずなのに。」


ユキは驚いていた。いやユキだけではない、マサトやマツ会長、買い物に来ていた客達も驚いていた。召喚した魔獣が言う事を聞かない、それが事実なら大変なことになる。だがそのに主人を失い暴走し始めたフレイムタイガーにより全て忘れてしまった。


「にっ逃げろー。ボスが食われた。」


周りを囲っていた虎の爪のメンバー達が一斉に逃げ出した。それに続いて客達も一斉に逃げ出した。


「殺される。」「逃げろ、早く逃げるんだ。」

「嫌よいやー。」「押すな。おいやめろ。」

「助けてくれ。」「俺はこんな所で死ねない。」


様々な声が聞こえてくるが、ユキたちは逃げることが出来なかった。セシルは気を失っているしマサトは怪我をしている。そしてマツ会長はそのマサトの怪我の治療をしている。ユキはそんなみんなを置いてはいけなかった。そしてユキは1つの決断をした。


「マツ会長1つお願いします。僕が時間を稼ぎます。幸い僕にはこの服黒竜装備があるので少しは時間が稼げるでしょう。その間にマサトとセシルの事を運んでくれませんか。」


「なにを言っているんだ。ユキ君そんな事をしたら君は……。それにその装備だって完璧じゃあない。」


マツ会長が止めるがユキは止めるつもりはなかった。


「僕はマサトにこの命を救われました。そしてセシルには僕に少しの間だけど、僕に生きる理由をくれた。そんな2人を守りたいんです。そのためだったらこの命も惜しくありません。マツ会長お願いします。」


ユキは自分の覚悟を示すが答えたのはマツ会長ではなくマサトだった。


「やめろユキ。俺はそんなつもりでお前を助けたんじゃない。セシルだって悲しむ。だから行くなユキ。」


必死にマサトはユキの事を止める。がユキはマツ会長の目を見ている。


この子は、既に覚悟が出来ている。もっと長生き出来ればさぞすごい人物になっていただろう。いや私長年の夢、黒竜装備を全て使いこなせる人物なのだから当たり前か。

マツ会長も覚悟を決めたようだ。


「分かった。ユキ君。マサトとセシルちゃんは私に任せてくれ。すぐに助けを呼ぶ私達が逃げたら、君も早く逃げるんだ。もしかしたら助かるかもしれないしね。」


マツ会長は助かる事は無いと思っていながらも、逃げろと言った。助けが来るのはどんなに急いでも2時間近くかかるだろう。他に味方もおらず、1人で2時間も戦えるわけが無い。逃げるにしても子供の速さでは、フレイムタイガーには勝てない。ユキもそれぐらい分かっているだろう、だがユキは笑いながら


「ありがとうございます。2人のことお願いします。」

感謝を伝えた。そして剣を構えた。


マツ会長はマサトとセシルの2人を抱いて走り出した。最近はトレーニングはしていないが、人2人ぐらいならどうやら大丈夫なようだ。


「おい止まれマツ。ユキがまだ残ってるじゃないか。ユキの代わりに俺が残る。だから俺を降ろせ。おいマツ頼むあいつも俺の子供なんだ。」


マサトが涙声で訴えてくるがマツ会長は無言で走り続ける。ユキは3人の気配が無くなると小さな声で

「さよなら。ありがとう。」

と言い改めてフレイムタイガーに正面に立った。フレイムタイガーは獲物をどう狩ろうと考えているみたいだ。


「いくぞ。」


ユキはフレイムタイガーにではなく、自分に向かって喝を入れフレイムタイガーに向かっていった。

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