17 もう1人の
ユキ達はNo.15について行き10分程歩いたがまだ会長室には着きそうにない。ユキとマサトはついていけてるが、セシルは少し辛そうだ。そんなセシルを見てユキは心配していたがどうやら、マサトがセシルのことをおんぶしながら進むようだ。それからしばらく歩いたが未だに会長室が見えてこない。流石のユキも不思議に思い、
「すいませんNo.15さん。あとどれぐらいで着くでしょうか?さすがにこの廊下長すぎじゃあないですか。」
No.15に質問した。が返答は帰ってこない。そこでもう一度No.15に話しかける。
「あのなんとなくでいいんで、あとどのぐらい歩くのか教えてくれませんか。さすが僕も少し疲れてきてまして。」
「·····」
しかし返答は帰ってこない。あの礼儀正しいNo.15が無視するとは思えないが、何も答えてくれないので、今度はマサトに話しかけた。
「なあマサトこの廊下ってあとどのぐらい続くんだ?まさかマサトまでだんまりってのはないよな。」
「·····」
しかしマサトも何も答えない。
「おいおい、なんの冗談なんだマサト。それとも何かそうゆうルールがあるのか。それならさっき教えてくれれば良かったのに。」
「·····」
やはり何も答えない。
いよいよ何かが起きていると、ユキは気がついたが、それでも最後の希望としてセシルに話しかけた。
「なあセシル、君は大丈夫だよな。もしかして全員で僕をからかっているのか、だとしたらもう止めてくれ。」
「·····」
しかしユキの希望は呆気なく壊された。そしてユキはずっとおかしかった事に気づく。
(考えて見ればマサトがセシルの事を、おんぶした時もお互いに何も喋らずに、やっていた。その時は何か2人だけに分かる、意思疎通をしていたと思っていたが、あれは多分本当に喋ってたいんだ。それに人は無視しようとしても、何かを聞かれれば、少しは反応してしまう生き物だ。だが3人は全くの無反応だった。これはもしかして、)
ある考えが浮かんだユキは、マサトに触れてみた。するとなんの感覚もなくユキの腕はマサトの事を貫通した。
「やっぱりこれは幻影魔法。」
「そうだよ、ユキ。」
いきなり後ろから声が聞こえユキは、瞬時に後ろに振り向いた。そこにはユキと同じぐらいの歳の少女がいた。ユキと同じ黒い服、にユキと同じ黒い髪、そしてユキと同じ黒い目、まるでユキが女性で生まれたら、こうなっていたといった感じの少女だった。
(なんなんだこの子は僕いや違う。いつから後ろにいたんだ。それよりこの幻影魔法は彼女がやったのか。彼女の正体は、目的は、何一つ分からない。)
ユキが1人で様々な考察をしていると、少女はユキに話しかけてきた。
「ねえ、無視しないでくれるユキ。まあ私も幻影魔法であなたのことを、ずっと無視していたんだけど。」
(彼女が幻影魔法を使ったのか。いやそれは嘘だ。こんな大規模な幻影魔法を、長時間使えるわけがない。情報が足りない、今は彼女から情報を手に入れるのが得策か。)
ユキは自分の中で考えをまとめ終えた。
「とりあえず名前を聞こうか。僕の事は知っているだろうけどユキだ。」
「そうだね。まずは自己紹介からが普通だよね。じゃあ私の名前はユキ。偶然だね同じ名前だなんて。」
きっと名前嘘だろう、ユキはそう思った。あくまでも本当の事を言うつもりは無いらしい。
「いいえ名前も私が幻影魔法まあ正確には幻影結界を、あなたに使ったのも全て本当だよ。」
(幻影結界?聞いたことがない。それに心を読んだのか。それも魔法か?一体なんなんだ。)
ユキは更に情報を得ようと話を進める。
「なら君の正体は一体なんなんだ?こんな訳の分からない事をして、一体何が目的なんだ。」
黒い少女はふふふと笑っている。しかしただ笑っているだけなのに妙に迫力があった。その迫力のせいでユキは何も言えなかった。
「ああごめんね。私の正体だったね、私の正体はあなたよユキ。」
ユキは結局少女が嘘をついていると判断した。すると少女は慌てて
「いやいや嘘じゃないから。本当だからその根拠を今説明するから。まずはもう一度私の正体はユキあなた自身だよ。そうじゃなきゃあなたの考えていることが分かるわけないじゃん。」
と言ってきた。
「いやそれは僕の知らない魔法を使えばなんとかなるかもしれないだろ。この幻影結界って飲も僕は知らないわけだし、人の考えが読めるぐらいの魔法があっても、おかしくないだろ。」
ユキは口ではそう言っているが、魔法であろうと、別の手段であろうと、自分の考えが読まれていることには違いないと判断した。その答えとユキの考えに少女は答えてきた。
「魔法でも別の手段でもないんだけどな。まあいいや、そのうち信じてもらうとして、それより別のことを聞かなくていいの?私の目的とか。」
「……そうだなさっきの質問の続きだ。僕を幻影結界とやらに閉じ込めたのは何故だ。」
ユキは少女の答えに少し不満を残しながら、少女の目的を聞いた。だが少女の話を信じるつもりは無かった。少女が自分の考えが分かると、知っていながらの考えだった。
恐らくユキの考えが分かった少女は少し残念そうに自分の目的を話してきた。
「私の目的はあなたを守ることだよ。」
「いい加減にしてくれないか僕を守るとか」
「いいや嘘じゃないよ、だって私はあなたなんだもん。あなたに何かあった時、私にも被害が来るんだもん。だからあなたを守る。信じてくれなくても良いけど、忠告だけはちゃんと守ってね。」
ユキは何を言っているのか分からなかった。
「·····」
「·····」
お互いに何も喋らない。だがしばらくするとユキの方から少女に話かけた。
「僕の事を守ると言ったがもしかして何か起こるのか。」
ユキは最近様々なトラブルに巻き込まれているので、少女の言葉は無視出来なかった。それに今のユキには新しい家族がいるのだ。昔の家族のように失う訳にはいかなかった。
少女は
「ユキこれを」
と一言いいメモをユキに渡した。
「それは今後必要になる物。全てこのマツブキ商会に置いてあるわ。そこに書いてある物を買いなさい。どうせどんな物を買うか決めてないんだから別にいいでしょ。それからどんな事があっても夕方までにマツブキ商会から出なさい。」
「あ、ああ分かった」
ユキはさっきまでの少女の雰囲気がまた変わっていたので頷くことしか出来なかった。
「ならよかった。でももし夕方にマツブキ商会にいたのならこの鈴を鳴らして。1番は鈴を鳴らさない方が良いんだけどね。それからそろそろ結界を解くから、じゃあ忘れないでよそのメモと夕方のこと。」
少女はユキに鈴を渡すと直ぐに世界が揺れた。壁が床が全てが壊れ始めた。
ユキは気がつくとそこは心配そうに見つめている、マサトとセシルとNo.15がいた。
「ユキさんどうしたんですか?やっぱり体調が悪いんじゃ。」
「そうだな、少し会長室で休ませてもらうかユキ?」
「あの大丈夫でしょうか。私に出来ることがあればなんでもおしゃってください。」
3人とも全員喋っている事を確認するとユキは安心した。どうやら本当に結界を解いたらしい。
「マツブキ商会の会長に会うのに緊張してるだけだから大丈夫だよ。」
ユキは今まであった事は話さずにいることにした。ポケットに入っているメモと鈴を握りしめながら。




