16 マツブキ商会
マツブキ商会それはエルランド王国一と言われる、商会である。周辺諸国にもその名前は轟いており、マツブキ商会に行けばほとんどの物が手に入るとされている。しかしマツブキ商会は完全会員制で、会員で無ければ王族でも門前払いされてしまうぐらい入る事は出来ない。そして会員になるための条件は極秘で、今分かっていることは、1~10のランクが会員には付いており、ランク5以上の会員からの紹介、マツブキ商会が独自に入手しているであろう人格診断、そして一定以上の資金力、最低でもこれらは揃って無いと会員にはなれないらしい。これぐらいはこの世界に生きているのなら常識だ。ではなぜそんなマツブキ商会に、マサトは連れてきたのだろうか、ユキとセシルはマサトの2人はマサトの方に向く。
「おい、マサトなんでマツブキ商会にやって来たんだ。こんな所に来ても僕は会員じゃあないぞ。父さんや母さんも多分違うだろうし、これじゃあ入る事は出来ないぞ。」
「そうだよパパ、確かにここじゃあいろんな物は売ってるかもしれないけど、ここには入る事は難しいんだよ。」
ユキとセシルはなぜそんな場所に、連れてきたのかマサトの考えがよく分からなかった。娘のセシルから見ても父親であるマサトの行動の意味が分からなかった。しかしマサトは2人が何を言っているのか分からなかった。
「2人とも何当たり前のことを言ってんだ。そんな事は一般常識じゃねーか。」
「え、いやだから会員がいないから僕達はマツブキ商会に」
「会員ならここにいるだろ。」
マサトはユキの言葉を遮って自分を指さした。
「なんだ気づいていなかったのか。会員じゃあないならここには普通来ないだろ。そんぐらいは気づくと思ってたんだかな。」
ユキとセシルは、
((いや気づく訳無い))
と心の中で思ったのであった。
お店の前にやって来るとマサトは黒いカードを取り出した。そしてカードを門番に見せると何事も無く3人は通された。
「まさか門番があんなにいるとは。」
ユキは長い廊下で独り言のつもりで呟いた。それに対してマサトから答えが帰ってきた。
「たまに変なやつが自分を入れろとやって来る時があるんだ。そんな時に門番達は活躍するんだ。それにマツブキ商会は大きな店だ、だからいろんな問題も抱えているんだ。」
マサトはペラペラと喋る。そんな様子を見てセシルは不思議に思った。
「パパ随分と知っているんですね。それに会員ってなるのにはすごく難しいんでしょ。どうやってなったんですか?」
ユキもそれは聞きたかった。王族ですら会員になれないと噂のマツブキ商会の会員にいったいどうやってなったのか、そしてマサトとは一体何者なのか知りたかった。そしてマサトの回答は
「ふむセシルまず最初の質問だが、会員なら大抵知っているぞ。たまにと言ったがそれでも毎日のように変なやつがやってくるからな。余程運が良くない限りそれに巻き込まれる事が多いからな。そしてどうやって会員になったのかだったなそれは………………成り行きだ。」
散々溜めておいて答えは成り行き、ユキはマサトにもっと聞こうとしたがその前に目的地に着いてしまったようだ。
出てきたのはどこかの国の貴族と言われても納得できるぐらい美しい女性だった。
「すいませんマサト様ですね。私は立場上名乗る事が出来ない者ですのでNo.15とお呼びしてください。会長からあなた様の手伝いをするようにと、言われております。どうか今日1日よろしくお願いします。」
ユキは容姿だけではなく、礼儀作法も貴族かそれ以上だと感じた。ユキはまさかと思い少し周りを見回した。すると至る所にいる恐らくは店員であろう人達がいた。その人達を更に観察するとNo.15と名乗った女性に負けない容姿と礼儀作法等を持った者達である事が分かった。
(僕はたまに王城に行っていたが、ここの人材はそれ以上だ。そう言えはエリーゼはどう今頃どうしているだろうか。いろんなことがありすぎて、今まで考えて無かったが、結局エンゼル家のとり潰されたのだろうか。他にもいろいろあるけどもう、王城や王族と会うことは無いだろう。だけど)
「おい、おーいユキ大丈夫か?何ぼーっとしてるんだ。お前の買い物だぞ。」
「え、ああうん」
ユキはハッとして現実に戻る。だが話を聞いて無かったので、上手く答え事が出来なかったようだ。それを見てマサトはやれやれと首を振る。
「ユキさん本当に大丈夫ですか?体調が悪いなら少し休みますか。」
セシルに心配されている事に気づいたユキは、直ぐに今まで考えていた事を忘れた。
「大丈夫だよ。少し考え事をしていてぼーっとしてたみたいだ。すまないけどもう一度何をするか教えてくれないかマサト。」
「ったくこれで最後だからな。まずここの会長が俺に会いたがっているからここの会長に会う、そして会長も昼がまだらしいから一緒に昼食を摂る、その後にお前の買い物だ。これが今日のスケジュールだから今度は忘れるなよ。」
「ああありがとうマサト。.......ん?会長と昼食?」
「ではこちらに会長室にご案内します。」
No.15が先導する。
ユキは少し聞き捨てならない事を聞いた気がするが、No.15について行った。




