10 王家の反応
エルランド王国第一王子エクス・ラナティス・エルランドは妹のエリーゼ・ラナティス・エルランドの部屋の扉の前に、静かに立っていた。別に実の兄妹なのだから、ノックをして一言詫びれば普段なら問題ないのだが、今日ばかりは何も出来ず、部屋の前でもう30分も無駄にいた。しかしようやく覚悟決めて扉をノックした。
「エリーゼ、すまない私だ。少し話があるので入っても良いだろうか。」
「エクスお兄様ですか。少し待ってください。」
エクスは言われた通り扉の前で待つ。しばらくすると扉が開きエリーゼが出てきた。
「すいませんエクスお兄様、お待たせしました。どうぞ入ってください。」
「ああエリーゼすまないな。」
エクスは部屋に入り椅子に座ると覚悟を決めたはずなのに、何も言えないでいた。エクスは次期国王として様々な舞台などに立ってきたが、何も言えないでいたのは、エクスが生まれてこの17年間で初めてだった。
そんなエクスを見てエリーゼは不思議に思い
「どうしたんですか、エクスお兄様なにかお話があるんでしょう。その様子ではあまりいいお話ではなさそうですが。」
エクスに話しかけた。
エクスはもう一度覚悟を決めてエリーゼの顔を見た。目が少し赤くなっており、泣いていたことが分かる。その原因はエンゼル家がとり潰された件であり、エリーゼが密かに恋心を抱いていたユキともう会うことが難しくなってしまったことだ。この話をすれば更にエリーゼは悲しむだろうと分かっていながらエクスは話をした。
「エリーゼ、落ち着いて聞いて欲しい。エンゼル家が何者かに襲撃された。」
「え。」
「エンゼル家の者は使用人全員の死亡が確認された。家の金品がいくつか無くなっていた事から王城は強盗が入ったとしてこの事件は解決されるようだ。」
エリーゼは何も言えなかった。ユキとは会いにくくなるだけで、会えないわけでは無いと思い続けていたがそんなことが起きるだなんて思っていなかったからだ。エリーゼは自分でも分からないぐらい心が不安定になっていた。その結果エリーゼの魔力が暴走した。エリーゼの魔力が部屋の中で暴れ狂う。
「エリーゼ、落ち着くんだ。先程はエンゼル家の者は全員死亡したと言ったが、ユキと言う者の死体は発見出来なかった。もしかしたら逃げ延びているかもしれない。」
その言葉を聞いた瞬間、魔力の暴走は止みエリーゼは倒れ込んだ。エクスは倒れたエリーゼの元へ直ぐに駆けつけた。
「エリーゼ、大丈夫か。_
「私なら大丈夫。それより早くユキのことを探してエクスお兄様。」
「ああ分かった。」
エリーゼにはそう言ったがエクスは仮にユキが強盗から逃げたとしても、おそらく顔や特徴を見られた強盗が逃すはずがないと思い、エリーゼには悪いが捜索隊は出さないだろうと思った。
部屋の異変に気づいた数人の騎士やメイド達が部屋に入ってきた。
「エクス王子これは。はっ、エリーゼ王女その様子は。」
「いやもう大丈夫だ。別にの片付けとエリーゼノックことを頼む。」
「「「はいかしこまりました。」」」
さすがは王城で働いているメイド達多少混乱していても、王子の命令にはちゃんと働く。
エクスはエリーゼのことを任せると部屋を出た。
「しかしなんだったんだ。あの力は。」
魔力が使われていたことは確かだがあれは魔法では無い事はエクスにも分かった。いくら魔法の数が膨大にあるとはいえ、魔法技術が進んでいるエルランド王国の第一王子である、エクスにはそれがなんなのか分からなかった。すると前から弟のエドワードが歩いて来た。
「やあ兄さん、なんだか騒がしいけど何かあったの。」
エクスは11歳にして魔法の天才と言われるエドワードの意見も聞きたかったが、話を大きくするのはさけ謎の力については話さないように決めた。
「いやエリーゼが少し倒れてしまってな。ほらお前ももう知っているかもしれないがエンゼル家が強盗に襲われた件について話をしていた最中にな。」
「ああなるほど、だいたい理解したよ。じゃあ僕も後でお見舞いに行くとするよ。」
「そうしてやってくれ。」




