第36話 『仕事に生きる女王』最終回。
「では決まりました!! 今回のイケメングランプリ優勝者はヘンリー王子です!!」
観客達が湧いた。関係者席からは拍手が送られる。皆私に笑顔を向けた。
……これはどういう事?
私だけが戸惑っていた。
ジーノが拍手をしながら説明した。
「良かったね。姉上。これでヘンリー王子と結婚出来るね」
「……でも……無理よ」
ここにヘンリー様はいない。
ジーノがふふ〜ん♪と笑みを浮かべる。
「無理じゃないさ。姉上がヘンリー王子の元へ行けば良いんだよ」
「私は女王よ? 行けるわけないじゃない」
「だからさー。……面倒くさいなぁ! 僕が王様になってあげるって事!」
「はぁ?」
ジーノが国王? 無理でしょう。
ジーノはため息を吐く。
「……僕には無理って言いたいんでしょ? そりゃ、無理だよ。一人ならね!」
ジーノはルーナ国の末姫を「じゃーん!」と連れてきた。
「アンナ様。幸せを諦めないで下さい。私はアンナ様の為なら幾らでもお役に立てる様に頑張ります!」
「ララ様……」
「彼女が支えてくれるから大丈夫! だから姉上は安心して!」
……ララ姫。有り難いのだけど、不安です。
「……姉上。少しは信用してよ」
お母様が扇子で口元を覆い、目がララ姫を胡乱げに見つめている。
「……他人の心が読める能力は確かに役に立つけれど、アンナの代わりになるとは思えないわね」
「母上ひっど!」
……ちょっと待って。ジーノははなから代わりにならないと言っている様に聞こえる。
お母様は扇子を閉じて溜息を吐く。
「……仕方ないわね。ちょっとアナタ。ここに来なさい」
アナタこと元国王陛下がおずおずとお母様の元へ来た。
……威厳がない。
「もう過去の事は無かった事にしてあげる。だから、結婚して下さい」
「「「!?」」」
お父様とジーノと私は驚いた。
「……許してくれるのか?」
「無かった事にすると言いました。許すも何もありません。それで、お返事は?」
「もちろん! 喜んで!」
お母様からプロポーズした!? うそっ!?
「……女からでも良いの?」
お母様は何を当たり前のことを聞くんだと鼻で笑う。
「当たり前じゃない。愛を語るのに性別は関係ないでしょう」
「良かったね。姉上。母上も認めてくれたんだよ。これで心置きなくヘンリー王子の元に行けるね!」
ララ姫が私の手を握る。
「さあ、行きましょう。お兄様の元へ」
それから、ララ姫と共に馬車に乗る。長い道のりだった。
何が起こったのか未だに理解出来なかった。
イケメングランプリを辞退する俳優に、絵を描く事しか興味のない画家。優勝したヘンリー様。
何故? ヘンリー様はピアチェーヴォレでは有名ではない筈よ。優勝するわけない。
結婚を嫌がっていたジーノがララ姫と結婚する。お母様がお父様と再婚する。何故?
意味が分からなくて混乱した。
ララ姫が優しく微笑んだ。
「皆さんアンナ様が大好きなんですよ」
「……うそっ」
愛された事なんてないっ。
「皆さん不器用何ですよ。上手に愛せないんです。アンナ様だってそうでしょ?」
「……そうかもしれません」
いつも、私は怒ってばかりだ。そのせいで笑うと驚かれる。
「私は他人の心の声が聞こえます。だから、信じて下さい。お兄様はアンナ様を愛してます」
「……ありがとうララ姫」
「いいえ〜」
ララ姫はにこにこと笑った。
ルーナ国のお城に到着し、ララ姫に連れられるままに城内を歩く。
黒い髪の青年の姿を見つけてドキッとする。
「お兄様〜! アンナ様ですよ〜!」
ひぇえええ!?
私は慌てて逃げようとララ姫の手を振り解こうとしたが、ララ姫の握力が思いの外強くて逃げれなかった。
ヘンリー様がびっくりした様で駆け寄って来た。
「アンナ様!? どうしてここに?!」
顔を見て、物凄く安心した。いつものヘンリー様だ。嫌っている表情ではないわね。
安堵する私の横でララ姫はとんでもない事を言った。
「アンナ様はお兄様と結婚する為に家出したの! 責任取りなさい!」
「「ええええぇぇぇ!?」」
「もう帰る家はここしかないのよ! 元王妃様じゃなくて今は王妃様が、心の声で言っていたわ!」
お母様がそんな事を思っていたの!? あの厳しいお母様ならあり得る!
ヘンリー様は「アンナ様が可哀想過ぎる!」と嘆いている。
……ララ姫。もしかして、私の為に嘘を言ってるの?
だとしたら、自分はなんて情け無いんだろう。歳下の子にここまでしてもらって、まだうじうじするつもり? この私が? あり得ないわね。
「ヘンリー様。私は貴方と結婚したい。はいと言ってくれるまでここを動きません」
私は強気な姿勢でプロポーズをした。
例え、断られようがしつこくプロポーズをする。そう決めた。
ヘンリー様は「そ、そんなぁ」と顔を真っ赤にしました。
「はいって答えるしかないじゃないですかっ」
「……本当ですか?」
「本当ですっ! というかっ! 何ですかっ! カッコよすぎますっ! こっちは利用するのが嫌だったから、自分でどうにかしようと思ってたのにっ! 台無しですっ! 責任とって下さいっ!」
ヘンリー様。良いですよ。
「ええ。責任を取った上で、幸せにしてあげます」
ヘンリーとララは思った。
何このイケメン? 惚れるのですが?
『仕事に生きる女王』は終わりますが、女王ではなくなったアンナ様のお話はまだ続きます。




