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第33話 矛盾だらけの感情。

 


(女王視点)


 ヘンリー様が私をお慕いしてくれていた。例えルーナの民よりも下としても、とても嬉しかった。


 それで満足するべきだった。でも、感情が勝手に一番じゃなきゃ嫌だと叫ぶ。結婚出来ないなんて言わないで欲しい。一番じゃなくても良いから側にいて欲しい。さようならなんて聴きたくない。でも、一番じゃないのなら側に居ないで欲しい。優しく微笑まないで。勘違いするから。


 矛盾だらけの感情に私は動けなかった。去りゆく貴方の背中は堂々としていて、遠い存在に感じた。


 置いていかないで!


 子供の様に泣きじゃくりたいのに貴方は遠くに行ってしまう。私はもう大人なのに、女王なのに、理性よりも感情が溢れた。


 それを周りに悟られたくない。周りには堂々とした女王に見られないといけない。そうするべきと母から教えられた。


 なら、この感情は何のためにあるの? 無意味で邪魔なものなの?


 大好きな仕事が今は虚しく感じる。


 そんな時に通りかかったナンパ貴族達が珍しく私を心配してきた。


「大丈夫ですかー? 落ち込んでますー? 俺らを叱らないなんて珍しいですねー?」


 確かに私はナンパ貴族達が仕事をサボっているのを見ると叱っていた。今はそんな気分ではなかった。


 そして、ナンパ貴族達を見て思った。何でコイツらは毎日飽きもせずにナンパしてるんだ? (今更)


「よく飽きもせずにナンパしてるわね。フラれるって分かってるのに悲しくならないの?」


 ナンパ貴族達は呆気からんと答えた。


「全然全くー。愛を配るのは苦になりませんよー。てかフラれるの前提って酷くないですかー?」


 ……凄いな。


 私は初めて少しだけナンパ男達を見直した。


 愛を配るのは苦にならない……。なるほど、少しやってみよう。


 私は良い事を多分教えてくれたナンパ貴族達に「ありがとう」と伝えた。すると、ナンパ貴族達はピシッと固まった。


「……天変地異でも起きましたか?」


 珍しく真面目な顔でナンパ貴族達はアホな事を疑った。私はそれを無視して、愛とやらを配る相手の元へ向かった。





 自分の侍女を口説いてみて、これはやっぱり間違っている気がした。男で試さなくて良かった。本当に良かった。


 やはり……愛を配るにも誰に配るのかが重要だと思う。優しく微笑むあの王子の顔がよぎり、胸が苦しくなった。


 気がつけば、弟の前で泣いていた。身内でも親しいほうだから、気が緩んだのだろう。こんなにぐちゃぐちゃで迷子な状態の感情は初めてだ。


 もう、感情なんていらない。必要ない。苦しい。誰か助けて……。


 こんな姉など放っておけば良いのに、弟が不器用に抱きしめてくれた。心が弱ると体温が低くなるのだろうか? 弟の体温がやけに暖かく思えた。……そうか。人肌とはこんなに優しいものだったのか。お母様が厳しい分それを補う様にお父様が優しかった。お父様はいい加減で適当だけど、愛に溢れた人だった。


 お父様は元気にしているだろうか。お父様は田舎の領地に引きこもっている。女王に就任してから忙しいのを理由に一度も手紙を書いていない。お父様も私や家族に手紙を送らなかった。お母様に離縁状を突き付けられた事が相当ショックだったらしい。


 そして、思った。


「そうだ。お父様に会いに行こう」


 ジーノはまたルーナ国に行くらしい。なんだかんだであの末姫が好きらしい。ふらふらと女性から別の女性に変える好き放題な付き合いをしていた弟だから、腰を据える場所が出来て何よりだ。


 私は弟の留守中にお父様の領地を訪ねる事にした。






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