番外編 無口姫とナンパ王子4
ヘンリー王子が自国へと帰った後に再びジーノはルーナの城へ向かった。
白壁に赤茶色の尖った屋根の城を馬車の窓から観た。
この景色も見慣れたなぁ。ナンパ男達から見たら、求婚の為に足繁く通ってるように見えるのだろうなぁ。まぁ、今日その認識は間違ってない事になるんだよねぇ。
ちょっとアンニョイな気分なジーノであった。
ルーナの末姫はジーノをエントランスで出迎えた。
「……ジーノ様ようこそおいで下さいました」
ララ姫の表情は暗かった。ジーノはこの姫の明るい表情しか知らなかったから戸惑った。
「どうしたの? 何だか暗くない?」
ララ姫は暗い表情でそのまま固まった。ジーノは沈黙が耐えれなくなり「おーい」と呼びかけた。
「ハッ!? す、すいません。つい以前の様に喋った気でいました」
「……大丈夫?」
「私は大丈夫なのですが……いえ。やはり大丈夫ではありません。ジーノ様はお兄様がアンナ様に言った言葉はご存じですか?」
「知らないよ。誰も教えてくれない」
ジーノは姉からも宮中伯からにもヘンリー王子が何をしでかしたか結局教えてもらえなかった。因みに姉は今落ち込んでます。宮中伯は狂った様に優しいです。ナンパ貴族達は未だにびくびくしながら仕事してます。慣れない事をしているナンパ貴族達の顔色は真っ青でした。もうそろそろ倒れるんじゃないかな?
「……お兄様はよりによって結婚は出来ないとアンナ様におっしゃいました。あまりにも酷いです。お兄様はアホです。馬鹿です」
ああなるほど、それで姉上の様子がおかしかったんだね。……ヘンリー王子酷い言われよう。でも、イケメングランプリに参加する時は断る素振りを見せなかった。どういう事だろう?
「……お兄様は頭でっかちなロマンチストなのです。感情がダダ漏れな癖に理屈っぽいんです」
……ごめん。意味がイマイチ分からない。
「お兄様はアンナ様の事を想って結婚を諦めました。でも、肝心のアンナ様には何ひとつ伝わってません。馬鹿なんです」
……ララ姫がヘンリー王子に失望した事は分かった。でも、そっかぁ。ヘンリー王子はきっとちゃんと姉上が好きなんだね。……見てれば判るけど。……ちょっと待って、今さら結婚を諦めるとかどういう心境の変化?
ジーノは百面相になった。ララ姫はジーノの心の声が分かるので同意する様に頷く。
「意味不明ですよね」
「うーん。だね!」
妹と弟は考えるのを放棄した。
心の声が聞こえるララ姫がそう言うという事はつまりそういう事だ。
ジーノはここに来た理由を話す事にした。
「今日はね。君にプロポーズしに来たんだ」
フロックコートに忍ばせた小さな箱を取り出した。小さな箱に入った指輪をララ姫に見せるとララ姫は「ふふっ。嬉しいです」と微笑んだ。
「まぁ。君には分かるかもしれないけど、これには打算があるんだ」
色気もへったくれもないプロポーズにララ姫は怒る事なくむしろ喜んだ。
「知ってますよ。アンナ様のためですね」
ジーノはその言葉にゲンナリした。
「……心が読めるなら、あえて言わないで欲しいなぁ。恥ずかしいし、カッコつかないし」
「私はジーノ様をカッコいいと思いますよ」
「……」
おかしい。ララ姫ってお世辞を言わないタイプだと思っていた。
何だかむず痒い気持ちのジーノであった。




