第27話 どきどきの通知表。
(フィデリオ視点)
女王の執務室でフィデリオはやたらと縦に長い白い紙を胡乱気に見ていた。
[集まれピアチェーヴォレのイケメン達!(以下略)]
……やってくれますね。あのババア。人が我慢して発揮した親切心を見事に砕きやがりましたか。
眼鏡のブリッジを中指で押さえた。
……良いでしょう。せいぜい邪魔しましょう。ええ。
いつも懐に忍ばせている紙の束を取り出す。そこには[借用書]やら[始末書]と書かれている。パラパラと中身を確認する。
……ふっ。貴族の大半はこれで抑えれますね。
フィデリオは仄暗い笑みを浮かべた。
ガチャ
扉が突然開き、暗い顔をした陛下が現れた。陛下は亡霊の様に音1つ立てずにデスクの椅子に座り窓の外をぼーっと眺める。
……こんな様子は初めて見ました。と言ってもヘンリー王子が来てからは初めて見る姿ばかりなのですがね。また、ヘンリー王子絡みでしょうね。おっと、ババアから別の書類を送られて来たのだった。今の陛下は見たくないでしょうが、知ったことではありませんね。あくまでもこれは仕事です。私情を挟むのが間違ってます。
心を鬼にして(いつもと変わらない)フィデリオは3枚の紙を書類の山が築かれた女王のデスクに置いた。
「陛下。ば、おっと失礼しました。母君から送られてきた書類です。目を通して下さい」
「……お母様から?」
普段のきびきびとした動きからは考えられないのろのろとした動きで書類に目を通しました。
「これは……ヘンリー王子の通知表?」
「はい。通知表です。王族の権限で問答無しで見る事が出来る代物です」
因みに一般的に学校は初等部、中等部、高等部があります。貴族と一般人で基本的に学校は別れます。一般人でも成績優秀者は貴族の学校に行けます。逆に貴族で成績が悪い場合は一般人の学校に行かされます。この方法で一般人であった私は貴族の学校に通い宮中伯になれました。
本来なら結婚を考える時点でヘンリー王子の為人を通知表などで調べるべきなのです。この国の最高権力者なのですから。陛下は通知表など信用してないタチですから見てませんが。
「こんなの見ても仕方が……え? 何これ……」
「……何か問題でも?」
「……フィデリオになら見せてもいいか。この事は他言無用ね。ちょっと見てみて」
ほおほお。ほおほおほおほお。
内容はこうであった。
[ヘンリー・ファン・ハピスブルク
貴族中等部学校 卒業試験の結果。
評価 SABCD。最大評価S。最低評価D。
国語C 数学C 理科C 社会C 外国語B 美術C 教養A 体術C 剣術C 馬術C]
ほお! 課題さえ提出すればCは普通に取れますのでこれには驚きです! 外国語はこの辺りの国は大して言葉は変わりませんので普通に皆さんBぐらいは取れます。よって……ヘンリー王子は成績が悪いと判断します。
「……初等部と高等部のを見てみて」
驚きました。初等部と高等部は剣術と体術、馬術、美術以外はオールA。美術はC。そして、剣術と体術、馬術は……S。
「高等部は一般人の学校に通っていたみたい。中等部の成績が悪かったからだと思うのだけど……」
「明らかにわざと成績悪くしてますね。腹が立ちます。おっと失敬」
眼鏡のブリッジを中指で押さえて気持ちを抑えました。
実力を偽るとは言語両断。嫌味の一つや二つ言わないと気が済みません。
「フィデリオの気持ちは分からなくもないけど、ヘンリー様はふざけた人には見えないわ。何か事情があったのよ」
確かに。まあ、私達の場合は周りにふざけた人がいすぎて感覚が狂っている気がしますがね。……大会の前日まで我慢しようと思いましたが、我慢出来ません。早くあいつらをいびろう。




