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第26話 知らない方が幸せな事もある。

(女王様視点に戻ります)



 イケメングランプリの所為で普段ではあり得ない程頭が回る弟の話をしっかりと聞いた。


 ナンパ男達が取るであろう作戦とその傾向。過去のデータを元に分析する普段ではあり得ない程頭が回るその姿に感心が半分呆れ半分になった。


 コイツはルーナの姫と結婚するんじゃ無かったのか? イケメングランプリで優勝してアウロラとデートしても良いのか?


 今それを指摘すれば、まあきっと開き直るのだろうが、拗ねるかもしれないので黙っておく。


 この弟はイケメングランプリに対しては有能だ。利用しない手はない。


 だから、ちょっとやそっとイラッとしても笑ってやり過ごそうとした。……途中から素がでたが。


 これも、ヘンリー様が少しでも優勝に近づけるようにする為。多分、無理だが努力はしてみよう。顔立ちの問題では無く、これは権力や知名度の問題だ。ルーナ国はピアチェーヴォレ国ではあまり有名でも無く、重要視されない。即ち注目度が低い為、ヘンリー王子だと言われても国民の殆どがピンとこない。


 権力についても、ルーナ国の王族という立場はピアチェーヴォレでは大した意味をなさない。力のあるヴィント国であれば、国民は皆惹かれるだろう。


 クローヴィスを景品にするとは、お母様は一体どんなコネを使ったのだ。(クローヴィスは面白い事が大好きなだけ) 第一線を退いた身でありながら恐ろしい人だ。


 これは私とお母様の戦いだ。どちらが国民に支持されてるのかがこの大会を通して判明する筈だ。筈なのだが、ここはピアチェーヴォレだ。ここでは常識など通じないので、何が起こるか正直なところ見当もつかない。


 話が変わるがヘンリー王子は浮気などあり得ないって態度であった。そんな人がいたとはこの世の中捨てたものじゃないな。(普通です)


 ……とにかくヘンリー王子の身の安全だけは確保しなければいけない。


 弟との話を切り上げ、部屋を出たところで護衛を付けようと提案した。


 そこで、ふと思った。ヘンリー王子は何故護衛を付けてないのだ? 普通は王族であれば護衛がぞろぞろ付いてる筈だ。


 ヘンリー王子は「ご心配には及びません。俺には護衛は不要です」と断る。


 そうなのか? 非常に言い難いが、必要に思えるのだが……。


 私の言いたいことに気付いたのか、笑うヘンリー王子。


「弱そうに見えますよね。良く誤解されます。怖がらせるのが苦手なんで、なめられますよ。アンナ様には本当の事をお話ししますが「優勝候補みっけえぇ! おらおらくらいなっ! 一週間は消えない魔法のインクじゃああああ!!」


 何だこの貴族? これが弟が言っていた顔を汚してやろうぜ作戦か? 


 インクが滴る羽ペン片手に貴族の男がヘンリー王子に襲いかかる。私はその貴族を睨み付けた。廊下の温度が急激に下がった。


「ひえぇぇぇっ!? 失礼しましたっ!!」


 貴族の男は羽ペンをポロっと床に落とすと一目散に逃げていった。


 たくっ何だったんだ。


 ヘンリー王子は「あっ。やっぱり何でもないです」と何故か落ち込んだ。


 私が「お怪我はありませんか?」と尋ねると益々落ち込んだ。


 男とは難しい生き物の様だ。


 ヘンリー王子は頭を切り替えたのか、真剣な表情になった。


「あの、こんな事になって色々と聞きそびれてたのですが、何故俺と婚約しようとしてくれたのですか?」


「あっ」


 しまった。頭からすっぽりと抜けていた。今更ながら恥ずかしくなった。顔に熱が集まる。冷静に理由を考えれる程、私は恋愛に免疫などない。


「……何故と言われましても、ヘンリー様は何故私なのですか?」


 心臓が早鐘を打つ。頭が沸騰しそうだ。


「それは、姉の命を受けたからです」


 真剣にそう告げられた。


「……命ですか」


 恥ずかしがっていた自分が嘘の様に冷静になった。同時に落胆した自分に呆れた。何を今更落ち込むのだ。王族なんて政略結婚が主流だ。それに、私を好きになる者などいないと知っていた筈だ。


「はい。ヴィント国が武器の調達をーー


 女王としてはしっかりと話を聞いて置くべきだったが、アンナというどうしようもない自分が話を聴くのを拒否した。


「すいませんが、私は仕事がありますので失礼します」


 逃げる様に私はその場を去ったのであった。




魔法のインクすなわちマジック。


ここまで読んでいただきありがとうございます。m(__)m

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