第25話 とある俳優。
(ピアチェーヴォレのある俳優視点)
ゴーーン...
朝を知らせる鐘が鳴る。二日酔いでふらふらで重い身体を起こし白いシーツをぼーと見つめる。
ねむっ。……長い髪? 妻の髪より色素が薄い。
…………。
茶色の髪を摘んで「むむむっ」と唸りながら昨夜の事を思い出そうとした。
いつものバーで酒を飲んで……
……うん。酒の飲み過ぎで全く覚えてない。
思い出すのを諦めてベッドに再び仰向けに転がった。
「すー。すー」
…………誰この可愛子ちゃん?
隣には見知らぬ女性が寝ていた。
…………うん。まぁ偶にはナンパ成功するよね。本当たまに……やっべえええぇぇ!?
慌てて飛び起きた俺の頭はガンガンに痛むがそれどころではない。
今はもう朝だ。鳥がちゅんちゅんと鳴いておる。朝チュン……。嫌な響きだ。
死のカウントダウンが始まった。
妻に殺される。ぶるり
夜のうちに家に戻る筈だった。だが、酒に酔って正体をなくしていた様だ。そして、横に眠る女性の格好を恐る恐る確認すると…………うん。やっべえええぇぇ!!!
そして、自分も何にも着てなかった。脱ぎ散らかしてある服を着て(何故ズボンしかない? 上の服がない)部屋から出ようとすると女性が起きた様で「どこ行くの?」と眠そうな目を擦る。
起きちまったぜ。チクショー。
「まあ。落ち着きたまえ。誰しも一夜の過ちはあるものだ。我々はこの事をもう忘れよう。それがお互いの為だ」
俺は全く覚えてないが
「……何を勘違いしてるの? 別にやましいことしてないわよ?」
これは不味いぞ。きっとこの子は俺が既婚者だと知らないのだ。そして、この子は未婚者だな。はっはっはっはっはっはっ。……笑えん。
「あんたが私の服に吐いてくれたお陰で、お互いゲボ塗れだったんじゃないの。泥酔して動けないあんたをマスターが脱がしてこのベッドに転がして……私は……何で裸なんだ?」
やはり何かあったんだね。悪いけど、責任は全然取れないよ。酒に酔っていたのでは仕方ないさ。はっはっはっはっはっはっ。
俺は揚々と部屋の扉に向かう。ドアノブに手を置こうとして
ドカッ
「いでっ!」
扉の角に俺の額が激突した。
「あらあら。うふふふふ」
今一番聞きたくない声が聞こえた。恐る恐る目の前の人物を確認した。
うん。死んだ。
扉から現れたのは微笑む死神であった。(※妻です)
「あらあら。お楽しみ中だったのかしら。邪魔しちゃったわね」
と言いつつ妻は微笑みながら俺の首に手を掛けます。
「別に良いのよ? ここではそれが常識なのだから」
俺の首が徐々に締ります。けど、俺は抵抗しません。抵抗したら本当にお終いだと知ってるから。
「貴方は俳優だから顔は他の男よりは良いわよね。あらあら、額が真っ赤。ダメじゃない。貴方の価値は顔が良いことだけなのに」
妻よ! それはあんまりだ! まるで俺が見た目だけで中身がパーと言ってるみたいだ! 誤解を招く言い方はやめたまえ!
「そうね。許さない事もないわ」
「ほっ本当れすか?」
「ええ」
妻はめちゃくちゃ良い笑みを浮かべた。何処からともなく紙が出てきた。そこには丸文字で[集まれピアチェーヴォレのイケメン達!]と書かれていた。どうやらあの恐ろしい時期がやってきた様だ。
この丸文字可愛いなぁ。どんな可愛子ちゃんが書いたんだろう。
「これに出なさい。そして優勝しなさい」
「い、いいけど、良いの? 女の子にキャーキャー言われて嫉妬しない?」
「全然! これっぽっちも! 私はクローヴィス様と踊るの! きゃっ♡」
おー。何という事だ。妻がいい歳して乙女になったゼ。や、やめて、首絞めないで! これ以上は死ぬ!
妻は仄暗い笑みを浮かべて俺を見上げます。
「これ優勝しなかったら離婚な」
「……はい」
俺は頷くしか出来なかった。
妻の背後でマスターが「あっごめん。あの子の服臭かったからひん剥いて放置しちゃったわ。ごめんねー」と俺に謝った。
……絶対わざとだろ。




