番外編 無口姫とナンパ王子1
ルーナ国の末姫のお話です。ピアチェーヴォレ国とアンナ様がガッツリとお話に食い込んでいます。アンナ様がヘンリー王子と出会った頃のお話です。
本編はまだ続きますが少し寄り道しますので続き気になる方申し訳ないです。
私はルーナ国の末姫ララ。
私はずっと部屋の外に出るのが怖かった。人と話すのが怖かった。理由は……
「こんにちは王女殿下。ご機嫌麗しゅう。素敵なお召物ですね」
『おいおい。大した容姿じゃないのを誤魔化す為にどんなけ着飾ってるんだよ』
笑顔の騎士に内心馬鹿にされ
『何でこんな大したことない子供が王女で私が使用人なのよ。納得出来ないわ』
お辞儀する掃除係に内心馬鹿にされていたりするからだ。唯の被害妄想かと普通は思うだろう。しかし、私には実際に聞こえるのだ。望んでいようが望んで無かろうが勝手に聞こえる人の心の声。
言葉の意味を良く知らなかった幼少の頃はまだ良かった。けれど、知識をつけ、人と関わり学ぶ内に、心の声を聞くのが怖くなった。
家族以外の人を避ける様になり10歳辺りから部屋に引きこもる様になった。14歳になると「そろそろ社交界にでやあ」とお母様に促されたが、頑なに断った。快活な性質のお母様も流石に娘である私の事を思い遣ったのかある提案をしてきた。
「あのな。世界にはぎょーさんの人がいるのは知っとるやろ? 心の声が聞こえても気にならない人もいる筈や。母さんな。めっちゃおもろい国知ってんねん。そこの国の男みーんなナンパ大好きでな。年中ナンパしてるねん。脳内お花畑に違いない。母さんは是非ララちゃんにこいつらが何考えてるか教えてほしいんよ。どうや? 協力してくれるか?」
男がみんなナンパしてるとか、正直言ってあり得ないと思った。お母様がわざと面白おかしく言っているだけで、実際は少ないだろうと思っていた。だから、母が私に気を遣ってると思っていたのだ。『ピアチェーヴォレおもろすぎるわっ!』とお母様が内心笑っていたのにも関わらず気に留めなかったのであった。
社交界に一回だけならと、ピアチェーヴォレの舞踏会に参加する事にしたのだが……。
あれは決して誇張では無かった。
「そこのご婦人! 忘れ物です! 私の気持ちを受け取って下さい!」
「何てことでしょう!? お酒を飲んでいないのに酔っ払ってしまった! 貴女を見た途端に僕の顔が赤くなってしまった!」
「貴女の事好きじゃないです。……愛してます」
もういっそ清々しい程だった。告白大会になってる。
お母様が気になる心の声はというと……。
『確か旦那は私よりかは顔面偏差値が低い! これは勝機があるぞ!』
『昼にビーチでナンパしてたら日焼けしたんだよねー。顔がひりひりする……。あっ、これ皮めくれわ……』
『俺が尊敬する師の台詞。これで落ちない女はいない筈』
という内容を『ピアチェーヴォレの男性用化粧品は世界最高レベル! これをイケメンと一緒に上手いこと商売に利用できれば稼げるでぇ』と目が金になってるお母様にこそっと教えたら……「花摘みに行ってくるわ」と無表情で会場を出て行った。
因みにお母様の心の声は『あかんッッ 腹筋崩壊するわッッ!!』と大爆笑だった。
告白していた皆さんは「無理なんですけど」ときっぱりと断られ、驚くことに次に行きました。
『『『ラウンド2へ行くぞ!』』』
……皆様ポジティブで素敵です。
私は愉快な気持ちになっていた。
ルーナの国王である父はピアチェーヴォレの国王陛下と王妃と談話している。気がつくと私は一人だった。
パートナーを務める筈だったお兄様が、留守番組であったお姉様が愚図るから宥める為に遅れてくる。どうやらお姉様もお母様の様にピアチェーヴォレの男に興味があった様だ。(面白いから)
ピアチェーヴォレの男性貴族達が私を遠目に見ていたのが良くわかった。
『あの子はルーナの王族! 末っ子ならワンチャンありかなっ!?』
『ルーナの子って控えめで可愛いよね〜。王妃だけは商売根性激しいから別として』
あれ? 貶されない。 皆様お優しいのね。(母は何気に貶されてます)
「おっほん」
ジリジリと私へと距離を詰めてきた男性貴族達が女性の咳払いを聞いてピタリと止まった。
コツコツとヒールの音を鳴らして近づいて来る一人の女性とそれに引きづられてくる一人の男性。
女性の心の声は『お前ら他国の姫君に手を出してみろ。その手へし折ってやるからな』とドスが効いてた。
男性の心の声は『姉上といたら、僕ナンパ出来ないじゃないか〜!! 母上の意地悪〜!!』と嘆いていた。
「初めましてララ様。私の名はアンナ。ピアチェーヴォレの王女です。ほらジーノ挨拶なさい」
「ちょっと何その言い方!? 僕子供じゃ無いよ!? ララちゃん初めまして。僕はジーノ。ピアチェーヴォレのイケメン王子だよ。僕に惚れちゃって良いよって、イタイイタイッッ耳引っ張らないで姉上!?」
アンナ様とイケメン王子様でしたか。アンナ様は赤い豊かな髪が美しい女性でした。イケメン王子様はピンクブロンドのカッコイイというより可愛らしい男性でした。現に心の中で『この子可愛いね。僕の次に』と言ってます。このイケメン王子様の次という事は私相当褒められてますね。お優しい方です。(そう捉えたか)
アンナ様は『こんな可愛らしい姫が狼の群れの中で1人だなんて危険すぎる! 私がナンパ除けにならなければ!』と私の事を心配して下さってるようです。はて……ナンパ除けとは……? 大人びた魅力ある女性であるアンナ様はモテモテでしょう。きっとイケメン王子様を連れていると、ナンパされないのですね。なるほど。
心の声にいちいち心の中で感想を述べていた私ですが、目の前の姉弟は首を傾げます。あっいけない。自己紹介がまだでしたね。つい喋ってる気になってしまうのは私の悪い癖です。
「初めましてララ・ファン・ハビスブルクです。ご存知かと思いますが、ルーナ国の王女です。初めての社交界でありますので、粗相がございましたら大変申し訳ありません」
引きこもっていた私はさぞかし世間からは浮いて見えるでしょう。嫌な顔をさせてしまうかもしれません。
するとアンナ様は顔を手で覆い唸り声をあげました。
『よりによって社交界デビューがピアチェーヴォレ国か……。失望しなければ良いのだが……』
あらまぁ。大丈夫ですよ。私はこれ以上失望することはきっとございません。むしろ、心がわくわくしてきました。
「へぇ。初めての社交界で僕と出会えてララちゃん運が良いね! 僕は姉上と最初に踊らないといけないけど、次踊ってくれないかなぁ?」
「そうですね。私は運が良いです。是非踊って下さい」
アンナ様が『何言ってんだこいつ』とイケメン王子様を睨んでます。きっと、大事な弟を盗られてしまうので寂しいのでしょう。(違う) 心苦しいのですが、私はイケメン王子様と踊ってみたいのです。だって、女性であるアンナ様とは踊る事が出来ないのですからせめて弟君と踊りたいのです。最初で最後の社交界かもしれません。良い思い出にしたいです。




