第14話 鬼畜王太子が正義を語らないで欲しい。
そもそもの話だがクローヴィスはピアチェーヴォレに攻撃を仕掛けるらしいヴィント国の王太子だ。
「我が国に攻撃を仕掛けるとして。何故その国の王太子であろう者が敵に情報をむざむざ話すの?」
男は非常に言いにくそうに視線を下に向けた。
「……俺はな。……弱い者いじめは嫌いなんだ」
私はその言葉に怒りを覚える。
誰が弱い者だって? え? 舐めてるのか?
襟首掴んで問い質そうとしたが、フィデリオに止められた。
「落ち着いて下さい! 王太子はこちらに協力してくれるのですよ! 話をきちんと聴きましょう!」
「この男の協力などいらん! どうせ罠に決まってる!」
女王である私を羽交い締めするとは良い度胸だなフィデリオ!
カルマがヴィントとグルになって攻撃を仕掛ける事を隠しておいた事と相まってフィデリオを到底許せる事は出来ない。
私は勢いよく膝を折って屈み込み、勢いよく立ち上がった。
ガツーーンっと骨同士がぶつかる音が響いた。
「アタッ!」と頭上でフィデリオが呻いた。
っくっっ! 痛い! タンコブ出来たんじゃ!?
頭をさするとちょっと膨らんでる気がする。
フィデリオを恨めしく睨もうとして辞めた。口を切ったのか血がたらーと垂れていたからだ。
私は思わず「……すまない」と謝った。
フィデリオは口を抑えながら目を合わさずに「……いえ」とだけ答えた。
……頭痛のおかげで少し冷静になれた。
クローヴィスが「……やはりここの奴等はおかしくないか?」と呟いた気がするが気の所為にしといてあげた。
私はクローヴィスに尋ねた。
「……クローヴィス様は我が国と何か取引をしに来たのですか? 戦争を仕掛けない代わりに何か要求でもあるとか?」
考えられるのはそのぐらいか。金か土地か、いやヴィントとピアチェーヴォレの間にはカルマ国があるから土地だと面倒な事になる。よって金か?
クローヴィスは暫く顎に手を添えて考える素振りをした。
目を薄っすらと開けて苦々しく答えた。
「……俺は悪の元凶を討ちたい。その為に手を貸してくれ」
……は? 悪の元凶ってこっちからしたらヴィント国なのだが? ……まさか。
「ヴィントを裏切ってこっち側に寝返るつもりかしら?」
フィデリオが息を呑む気配がした。血も飲んでないか心配だ。
散々私を挑発しといて、仲間にして下さいってのもおかしい話だが、それはクローヴィスの元来の性格だから置いておくとする。敵地にわざわざ来る理由としては寝返りが一番妥当な気がする。金を要求されてもクローヴィスを人質にしてヴィント国を脅せば良い話だし。
「一応そういう事になるな」
好戦的な笑みを浮かべる男に対して私は頭を高速で回転させた。
クローヴィス・ファン・アンゲラー。現王の三人いる王子の真ん中。母は平民出身。知略や策謀が得意でその才を父である現王は認めており王太子となったとか。……噂だが現王の数ある妃達から命を狙われてるとか。これはハーレムなんて制度のせいだろう。やはり我が国にハーレムなど不要だな。
……と話がずれたな。クローヴィスは母が平民出身のおかげか平民には大人気だとか。その影響かクローヴィスのハーレムには平民出身者が多い。
そんなクローヴィスがヴィント国を裏切る理由として挙げられるのは、現王の妃達への恨み。平民への不遇な扱いに不満を持ったぐらいか。ヴィント国の現王は弱き者が嫌いだ。平民を不遇に扱ってる可能性がある。
「何故?」と私は裏切る理由をクローヴィスに問いかけた。
「正義の為だと言っておこう」とクローヴィスはにやりと笑った。
正義ねー。人を直ぐ馬鹿にしたがるクローヴィスらしくないわね。「ただ単に気に入らないから」って言った方がしっくりくる。
ってさっき「弱い者いじめは嫌いだ」って言ってたわね。あれはひょっとして本心!? 本気で言ってたの!?
私は信じられない想いでクローヴィスを見つめた。
「チッ。それで返事は? 俺を人質にするか? それとも仲間に入れるか?」
私の態度が気に入らなかった様で不機嫌になった。
クローヴィスの言葉にハッとなった。どっちにしても我が国にとって有利だ。 目的が何であれ利用しない手はない。
「そうね。仲間って事にしといてあげる。但し、不審な行動を起こせば速攻で人質にするわ」
監視は勿論つける。……カルマ出身以外のまともな人いたかしら?
カルマが敵になる可能性がある今、優秀な人材である彼らを使う事は躊躇われる。
カルマ国が敵って厄介すぎる!




