MY HEART DRAWS A DREAM
「圷くん、なんか描いたりした?」
吉良は自分があげたものが使われているのか気になってドキドキしながらもそう訪ねる。服はみての通り着ていないのでわかっていたが、見えていない部分である絵の具などについてを選んだ。圷はよかった、今日使ったんだと胸をなでおろしてから返事をする。
「もちろん、せっかく貰ったんだからさ」
「そっか...!見してー!」
まあ、そんなに使ってないけど...と心の中で呟くがそんなのとも知らない吉良は、圷の言葉に嬉しそうに笑って絵を見せるようにねだる。こんなにも無邪気な吉良を見ていると自分の都合のいいようにするための駒にしてしまうのもなんだか申し訳なくって少しかわいらしいなあという気持ちは沸いてきた、明英が可愛がってしまう気持ちもわからなくはない。自分にじゃれついてくる弟を見ているような気分だ。明英はどちらかというと素直に甘えたりしてこないし対等な関係であったから吉良とのこの感じは今までにないものでなんだか変な感じがした。
「...ダメだよ、下手だからさ。絵がうまい吉良になんて見せられたもんじゃない。」
「えー、そんなの気にしないのに!じゃあさ、僕の絵をあげるよ!実はね、あげたくて持ってきたんだ。あるかな...」
どうやら寝巻のポケットに入れてきたらしくゴソゴソとポケットに手を突っ込んだ。そんな乱暴にして紙は平気なのだろうかと思いながらも圷は興味はあるのかおとなしく待っている。何枚かもってきたのかぺらぺらとその中から眉間にしわを寄せつつある一枚を探していた。その様子をじっと見つめつつ、しばらく待てば吉良は表情を明るくして顔を上げた。
「はい!」
「ん、ありが...とお?あ、?コレ...俺?」
受け取った紙を開けば吉良にしては珍しく普通の人物画が描かれていた、実はというと幼少期ボロボロになったころ自分が醜くて仕方ないと思っていた圷は鏡を見ることを拒み続けていたため、幼い頃の自分しかまともに見たことがなかったのだ。でも記憶されている幼いころの自分の面影のある顔に驚き吉良に尋ねる。すると吉良は気恥ずかしそうに頬を掻いた。
「そ、そう...思い出して、かいたんだ」
「おれ...こんな、なんだ。はじめてみたよ、多分。でも、綺麗ではねーかなあ」
照れる吉良には目もくれずひたすら紙を見つめて自分の顔をぺたぺたと触り続ける。この顔が自分の顔なんだと思うと同時にいつも吉良に言われる「きれい」「整ってる」という言葉に疑問をいだいてそういう。すると吉良は何いってんだという顔をして反撃を開始した。
「な、何いってんの!?超綺麗だよ!?圷くんが綺麗じゃなかったら他どうなっちゃうわけ!?」
「そうかな、もっと綺麗な人いるじゃん、アキちゃんとか....ぁ。」
自分の顔に意識を飛ばしすぎてついつい圷の中で一番の人である明英の名前を出してしまった。慌てて口を押えて誤魔化そうと顔をあげると吉良は「え?」と思わずつぶやき驚いた顔をしていた。まずい、バレたかと思った一瞬のうちに笑顔へと変わり弾んだ声で話し始める。
「へー!圷くんの知り合いにもアキって人いるんだ!うちのね、神父さんはね、アキ...明英って言うんだ、確かにあの人もきれいだよなあ...」
なんとかバレずにすんでいることを確認すれば圷はほっと胸をなでおろした。吉良が鈍くて自分を盲信しているようなタイプでよかったと思ったのだが、明英は綺麗だという言葉は聞き逃せなかった。圷にとって綺麗などといった言葉は愛おしい相手や好きな相手に向ける言葉となってしまっているため「まさかコイツアキちゃんも好きなのか」と思ってしまった圷はあざとく唇を尖らせて吉良に迫った。吉良を明英に近づけさせないようにするという圷の目的上そうであったらどうしても許せないのだ。
「...俺よりも?」
上目づかいで見つめて、首を傾け柔らかい髪をふわりと揺らし吉良へ訪ねる。すると慎吾はぴくんと一歩後ずさって頬を赤くしながら口元を覆って「圷くんのほうが、きれいだけど」と恥ずかし気に言った。その様子にやっぱり俺のこと好きなんだ、よかったと安心した圷はありがとうとだけ伝えてすぐに吉良の夢の中から去っていった。
真っ暗になった部屋にろうそくで小さな明かりをともす。今夜は帰りが遅くなってしまったためもう圷も寝静まっているので必要最低限のあかりしかつけないようにした...きっと、今頃吉良のもとへいっているのだろうと圷のベットへ近づいていく。暗がりでよく見えなかったがぐしゃりと何かを踏んだ音がして明英はしゃがみ込んだ。踏んでしまったものは少し前圷に渡してやった紙であろうもので何かが描いてある、いつのまにかこんなに描くことにハマってしまったのだろうかと思うと同時に圷は普段何を見ているのだろうと興味をそそられた明英はソファーへ腰を下ろして紙へ明かりを近づける。何枚かある中そこに描かれていたのは何をかいているのかわからない様な...動物のような絵や小さい頃の記憶の中にあったのであろう公園と木、なんていう子供の描く様な絵柄で描かれているイラストを見て明英は顔をほころばせる。何十枚も見ていく中で何枚かぐしゃぐしゃになっていて何度も消したりした跡が残っている絵があった。それをよく見てみると、他の絵とは比べ物にならないレベルで描かれている人物画だった。ソファーへ座り珈琲をすすっている横顔であったり、枕を抱いて寝ている姿であったり、単純な振り向きざまの様子だったりと様々なパターンの人が描かれていた。確かに最近は結構自分といる時でも筆をとって何か描いているなとは思っていた。
「全部...僕じゃない。」
そう、描かれていたのはすべてがすべて明英であって圷はふとした時の明英を絵にしていたのだった。圷が吉良に見せなかったもそういうわけだったのだ。明英は驚いた顔をしたが幼き頃からの友人のそういった姿を見れてうれしかったのか、寝る準備をしては圷のベットに潜り込んで後ろから抱きしめるようにして眠りについた。案の上朝目覚めた圷が悶絶したのは言うまでもない。




