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市内の舗装された道を通って王城へ向かう。今の装備は先程頂いた、風の纏いを装備している。
今も視線を感じたり、すれ違うと振り返って来るひともいるが、恐らくビジュアルと服装で貴族か王子っぽくでも見えるからだろう。
イケメン万歳だ。
前から思ってたけど、国の名前は和風なのに城は西洋風なんだよな、と城を見上げながら呟いた。
目の前には、【和国】の中心部である、王城 天鳳地和城が見える。確か、ゲームでは病弱を装う姫様がいて、裏表の激しいやり手だった記憶があるのと、なぜか男性キャラだけを目の敵にする王様がいたような…
さて、いったいどうなることやら。
門前まで来ると衛兵に止められる。
「止まれ、王城へいったいなにようか」威厳のある声で、体の大きい強そうな方の兵士に尋ねられた。「お、おい、あれは…」俺がイメトレを重ねて作ったセリフを言うよりも早く、線の細い方の兵士が小声で隣の兵士に何かを相談している。
先に名乗ってしまおうかと口を開く、「私は「あなたは、少し前にこの都に入られた召喚士殿でしょうか?」いや、名乗ろうとしてるのに被せて質問するのやめてほしいんですけど。
「ん、ごほん」わざとらしく咳払いする。
「私は、アールヴ・スカンディナと言うもので旅の召喚士をしている。せっかく寄ったので王に謁見を求めたいのだが、可能だろうか?」一応、威厳を感じられるように、若干上から目線で話を振ってみたが…まぁ、いきなり許可が出る訳も無いだろうし、取り敢えず日程が決まれば、防具店にでも伝えに来てもらおうと思っている。
「それでは、謁見の間へ案内させて頂きます!」
「へっ⁈」いやいや、即答で案内とかおかしいでしょ!服装なんて適当に誤魔化せるかもしれないし、俺が本人かも分からないでしょ?馬の召喚の件だって、もう少し怪しんだりしないのか?
こんなにすんなり招かれると逆に怪しい気配すら感じるんですけど…
俺の変な声の返事に微妙な沈黙を保つ二人に、やはり謁見は断ろうかと悩んでいると、線の細い方の兵士が改めて、話は通っているので入場して構わないと伝えて来る。
2度も言われて断る訳にもいかないので、しぶしぶ案内について行くことにした。
四つの尖塔を持ち、中心部には大きな天守閣から尖塔とを繋ぐ和洋折衷な城壁を見上げた。少し年季は感じるけど、重厚な造りで荘厳さを感じるし、歴史の重みの為というのもありそうだ。
出来れば、召喚なんか関係無しで、ゆっくり一枚描かせて欲しい位だ。
そんな事を考えながら、中庭を通り城内へ続く扉の前に来た。
両開きの扉で、一面ずつ屈強な戦士のレリーフが刻まれている。重そうな扉を先導してくれた兵士が押し開けてくれ、中に足を踏み入れた。
城内は派手すぎない程度に美術品が飾られ、目の前には真っ赤な絨毯と、それに続く上階への登り階段があった。
ゲームで見た時はもう少し外国人のイメージする和風テイストな城内だったと思うけど、こっちの方が俺は好きだ。
そのまま三階の貴賓室で待たされ、ソワソワする。「好き勝手動けないってのも変な感じがするなぁ…」
独り言を言っていると扉がノックされ、準備が整った事を告げられ、最上階の謁見の間へと案内される。
お付きの人が仰々しく俺の訪問と謁見の願いを告げて、入りたまえと言葉が掛かる。
何故か、玉座には病弱なはずの姫様が居た。やばい。ゲームで見た時よりも圧倒的にヤバい。身にまとう豪華で作りの良いドレスが霞む、圧倒的な美貌だ。
長いブロンドの長髪は金の輝きを発しているし、透き通る様な肌と整形でも成し得ないような、それでいて少し憂いを帯びた目と唇。鼻筋や輪郭も文句の付けようが無い。これがリアルと言う物かと、確かにそこに「居る」と言う存在感か…と呆気に取られてしまった。
少し微笑むと、「どうぞ、こちらへ」と声が掛かり、フラフラと玉座の前まで歩き出る。
足が勝手に動いているようだった。
「そこで止まれ!」
野太い声に感覚が引き戻され、横を見ると厳つい、いかにも将軍と言う人物が仁王立ちしていた。
「ようこそ、和国へ、召喚士様。私は第一王女の、美月・ベーゼ・エル・シッドと申します。…そして、こちらの者は、我が国の軍事最高責任者のジェラサード・ノトス・バーデス将軍です。」鈴の音のような声で、王女自ら紹介をしてくれる。
俺も負けてはいられない。「お初に御目に掛かります。私は、アールヴ・スカンディナと言うもので旅の召喚士をしている者です。この度は御目通り頂き感謝致します。」よしっ!噛まずに言えたぞ!
優しく笑いこちらに掛けて、王女は玉座に着いた。
ここからは将軍の出番のようだ。
「この度は、体調を崩されている国王陛下に代わり、美月王女殿下がそなたに面会を希望された為、召喚士殿を招きいれたのだ。」
この人にはあまり歓迎されてないって事は喋り方でなんとなく分かるなぁ…
「先ず初めに、貴公が本物の召喚士だと言う証拠はあるのだろうか?装いや馬の件は儂も聞いたが、この目で確かめてみたいのだが?」「ジェラサード失礼ですよ」
王女の涼やかな叱咤が飛ぶ。
「はっ、失礼致しました。召喚士殿」
「いえいえ、構いませんよ、簡単な事で良ければ…リブロ!ペンネッロ!」本と筆を召喚し見せてみる。
「なんなら、何か召喚して見せましょうか?」軽く問い掛ける俺に王女が首を横に振った。
「アールヴ様、大変申し訳ありませんでした。その力は間違い無く召喚士様の物です。試すようなことをして、お詫びのしようもございません」玉座から立ち上がり、王女が俺の元にやってくる。
なんか、ほんのり甘い良い香りが漂ってくる。
俺の元まで来た王女は、そのまま俺の手を取った。周りが騒めく…
「率直に申し上げます、アールヴ様、私達、いえ人族を救って頂きたいのです。」
手を取られて鼻の下が伸びていたかも知れない俺の顔を横目に、俯いた姫の顔がニヤついた、のを俺は見逃さなかった。
やはり王女は腹黒だったか、ゲーム時代の知識がなけりゃ100%騙されてたな。
なんなら、分かってても、リアルの美しさに騙されても良いかなとまで思ってしまった。
これが恋愛経験値の低さゆえなのかな…
ここからは俺のターンだ。