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†アルヴス アトリエ オンライン†  作者: ネコまっしぐら
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「リブロ!」俺の声に合わせて中空から突然厚手の一冊の本のような物が現れる。「よしっ、ペンネッロ!」続いて油彩画用フィルバートの持ち手部分と、刷毛の接続部分すべてが木で出来た少し丸みのあるお洒落な筆が現れた。

「ふぅ…何とか召喚出来た、けど…これまた初期装備…」

俺は召喚されたアイテムを見てがっくりと肩を落とした。


異世界転生なんて、あまりの出来事に頭がパニックになって、当たり前の確認事項を思い付かなかったけど、召喚士なら当然パートナーキャラを召喚する為の召喚道具が必要になる訳で、ようやく召喚士の力が使えるのかを試す事を思い立った訳だけど…


やはりと言うか、服装同様で、手の中にあるのは、この世界に入って初めて使える初期装備と言われる物ばかりだった。

大学入学と共にこのゲームにハマって、およそ2年。家賃や毎日の生活費を削って、必死に得たバイト代から毎月こつこつ課金してきた俺のアイテムや装備品は一切支給されないと言う事だ。




「ぢっっくしょょおー!!」



はぁ、余りの現実に思いっきり叫んでみたが、ほんとに初期装備しか無い。

アイテムバックと言うスタート後に説明を聞くと貰える、質量無視でかなりのアイテムを出し入れして、出したり消したり出来る便利なバックすら出ない。

いや、ほんとに可笑しい。

俺がイメージしてた転生物語は、無双装備はそのまま利用出来て、めちゃくちゃ強いのに色々警戒しまくって、流れで世界征服したり、ほのぼの異世界旅行したり、世界の危機を救ってみたり、超鈍感キャラなのに出会う女性皆が好き好き迫って来るような単純な物なんだ!ほんとに!




ー少年は一面続く青空に泣きながら訴えるのであったー




「はぁぁぁぁぁぁあっぁぁ、、ぐすっ」

俺は、自分に出せる最高の溜息をつき、最後に鼻をすすって立ち上がった。

いつまでも、蹲っている訳にもいかないし、いい加減現実逃避…異世界逃避?かな。してても仕方がないので、進まない足を無理矢理動かしながら検証を進める。

恐らくストックしてたキャラも全部リセットされているだろうし、この本と筆で召喚出来るのは三種類だけだから、移動手段を優先して、騎乗動物を召喚してみようと思う。


まず最初に、この本の様なアイテムは鏡開きに開く。右側には塗料や特殊な効果を生む素材を入れる事ができる小瓶をストックするスペースとパレット状になった部分とがある。

そして左側には、召喚する対象を呼び出す為の材料を入れるポケットが大小いくつか付いている。

塗料は白黒だけは最初から付いているし、召喚の為の材料は自分の髪の毛数本と、木の皮と術者の血液で作成可能なので、後は本の真ん中のキャンバス部分に、対象の動物の絵を描くだけだ。


俺は筆に塗料を込めると一気に書き上げた。

「ゲインっ!」召喚の呪文を唱えると、目の前に白馬が現れた。


「でかっ!!」

何故だか分からないが、今までゲーム内で見ていた物より1.5倍以上はありそうな体格の白馬が、ぶるると一鳴きしていた。


まぁ、そんな事もあるもんかと無理矢理納得し馬に乗る決意をする。

と言うか、デカくて乗りにくいんですけど…

今のランクの本では、鞍や手綱といったアイテムが召喚できないので、可哀想ではあるがたてがみを掴ませてもらい一気に地面を蹴り上げる。

あれ、意外と簡単に乗れた…

自分で想像していたよりも遥かに体が良く動く。ここだけはゲーム内での感覚と同じ位の様な気がするので、もしかすると、肉体能力だけは初期値のLv1では無いのかもしれない。


そんな事を考えながら、馬にしがみ付き和国へと向かう。

動物の皮を材料にしなかったからか、馬の皮膚がゴツゴツして若干お尻が痛い気がする。

途中、すれ違った人達も俺が召喚士だからなのか、妙にデカイ馬に乗っているからなのかは不明ではあるが微妙な視線を送ってきていたのが感じられた。

まぁ、そのおかげか皆さんが道を譲ってくれたおかげで予想よりも早く吊り橋に着いた。


吊り橋の前には検閲の兵士が二人たっている…何故かこっちをめっちゃ見てるんですけど…

そりゃ目立つか、と諦めて兵士の元に近づいた。


「とっ、止まれー!」

「止まるのだ!」


かなり必死の形相で止められたので、大人しく馬を降り召喚を解いた。


「なっ…!」

「は、はぁー」


この二人は仲良しなのだろうか、実に息が合っている。暫く顔を見合わせて何やらジェスチャーで意思の疎通をしていた様だが、年配の方の兵士が気を取り直したようで、ようやくこちらに声を掛けてきた。


「き、貴様!いったい何者だ!先程のバカでかい馬はどこに行った⁉︎…のでしょうか?」

「いや、先輩、不審者相手に下手に出るのはまずいですって!」

「うるさい、あんなの怪し過ぎて逆に他国の来賓とかだったら、どーすんだよ!」

「いやいや、来賓が来るなら本部から通達がありますし、何より一人で来るとかありえないですって!」こちらまで完全に聞こえるボリュームで相談する二人に何と声を掛けるべきか迷っていると、先輩兵士はそれもそうかと頷いてこちらに向き直り、再度問いかけてきた。

「貴様、早く何者か答えよ!我が国へ一体何の用だ⁉︎」実に雑魚キャラっぽい反応だったので、俺にも少し余裕が出てきたから、多少演技っぽく答えてみる事にした。


「私は、アールヴ・スカンディナと言うもので旅の召喚士をしている。貴国には旅の途中の観光で寄らせてもらったのだが?」これ見よがしに髪を少しかき揚げ、エルフである事

と服装を強調する。



沈黙の後、理解したのか、兵士二人は顔を見合わせまた言い合いを始めた。

「ほら見てみろ!よく見れば、あの服装は召喚士様の物だし、やっぱりお偉いさんじゃないかぁぁ!」

「いやいや先輩、服装なんてマジマジと見る余裕無かったですよね?てゆうか、別に先輩の言ってた事が合ってた訳じゃないですからね!」

仲良くコントを続ける二人に軽く咳払いし尋ねて見た。「ごほんっ、それで私は入国しても良いのだろうか?」


「は、っははぁ!もちろんでございます!」

「ど、どうぞ、お通り下さいませ!」


二人が道を空けてくれたので何食わぬ顔で通ったけど、内心は少し焦っていた。

確か、ゲーム時代はオートだったけど、自分のホームの国以外に入る時は勝手に入国料が引かれていたはずだから、もしかしたら金を出せと言われるかもとドキドキしていたので助かった。


読んでくれている人がいるかもって思うだけでも、力が出ます!ってあれ本当なんですね…

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