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「うっ…んん…っつ!眩しいなぁ、カーテン位しめ…っ…! ⁉︎」
「なにこれっ、どこ、ここ?」
あまりの眩しさに思わず目覚めた俺は、寝ぼけながら辺りを見回しフリーズした。
そう言えば、一人暮らしだったな俺…
誰もカーテン閉めてくれる人なんて居なかった…と、現実逃避しながら何とか現状を理解しようと試みる。
そうだ、困った時は言葉に出して情報を整理するのが良い、って確か教授が言ってたな。
「えーっと、講義が終わって、ダッシュで駅前のゲーセンでコミューンに潜って…⁉︎」
「そっそうだ!確か、地震か何かに巻き込まれてコミューンごと落っこちて、あ、頭から血がで…出て」恐る恐る頭を触る 「いてっ!…あ、いや、痛く無い?あれ…なん…で ?」
「教授、声に出したら余計に混乱したよ」と、自分の中の教授に悪態をつきながら、最後の瞬間を必死に思い出そうと目を瞑る。
「…そうだ!確か、いきなり首元に電気が走ったと思ったら、目の前に文字が浮かんで…【続く】っていったい何が…」
そこで自分の頸をなぞって、手が止まる。
ないっ…
なんで…
頸にはインプットツールとして、コードの差し込み口がある。
いくら小型化されているとは言え、触って分からないのは有り得ない…急に背筋が冷たくなる。
そう言えば、起きてからまだ一度も自分の顔を見ていない。手や足は妙に見慣れているのに完全に元の自分と一致しているかと言われると自身が無い。
それから俺は辺りをもっと良く見渡し、少し離れた所に小川を見つけた。
そこまで小走りで行くと、意を決して覗き込んでみた。
!!?
キラキラと光る小川の水面に映っていたのは、やはりと言うか自分の顔では無かった。
…だが、俺はこの顔を良く知っている。自分の顔の次には、この顔で居る事が多いと言って良いくらいには馴染みがある。
そっくりとは言わないが、自分の顔をベースに少し尖った耳と、スッと通った鼻、目と髪の毛は緑色で、肌は白く、少し薄い印象のする儚げな感じの顔だ。参考にした設定はハーフエルで、少しアレンジを加えた結果だ。
ぶっちゃけ元の顔より3倍位はイケメンに仕上がっているこの顔は、課金ガチャとイベントでゲットしたグラフィックを使って作成した、アルヴスアトリエオンライン内の俺のゲーム上のキャラの顔だった。
…
…
「まさか、ゲームの世界に転生とか⁈いやいや、そんな旨い話がある…のか?」基本的に幸運とは縁遠い生活が身に付いしまっている為か、俺は中々この状況を受け入れられず、しばらく水面を眺めていた。
もし仮に、ゲーム世界へ転生させてもらえるとしたら、割と何でもするとは思うけど、こんな素晴らしい事が唐突に現実で起きるものだろうか…
…
どれ位時間が経ったのだろうか…いい加減水面を眺めるのも飽きて来たので、俺は近場を散策しながら考えを纏めようと歩き出した。
これが、本当にゲームの世界だとして、分からない事は現状たくさんある。
俺がゲームとして扱っていた、このキャラクターのLvは上限の180Lvだった。そう言えば、一昨日にアップデートがあって、MAXは200Lvまで解放されていたとは思うけど、一体この体はどうなっているのだろうか…
何故なら、ゲーム時代には視界に浮かんでいたはずのメニュー画面や、アイコン等が綺麗に無くなっているし、所定の物に視線を合わせると、名前や簡単な説明吹き出しが出ていたのに、それも無くなっている。その為、ゲーム内であると言う実感が得づらい。
「確かに顔だけ…いや、服装も始めたばかりの時に基本装備として配布されている物を着ているから、やはりゲーム内に生身で転生して来たと考えるのが一番しっくり来る。」のか?
半分、無理矢理に自分を納得させ、転生したのであれば何をどうするのか、何ができ、出来ないかを判断する必要があると考え色々と試してみる事にした。