01.国の誇り
さて、物語は今から二年前に遡る。
アインデルン王国。
精霊の加護を受ける豊かなこの国の外れにあるのが下級貴族である僕の屋敷…
いや、屋敷という程大きなものではないか。
言い直そう、僕の家、エリオンド男爵家がある。そこの長男として僕 ジュード・エリオンドは生を受けた。
国に仕え、多くの騎士を排出していた男爵家であるが、今は見る影もない。過去の栄光に縋り、過去の遺産でなんとかやりくりしている。
いい家とは言い難いが僕にとってはここが城なのである。
「おい、ジュード早くしろって!!」
「やっぱり僕はいいよ。ロニだけ行ってきたらいいさ」
「ばぁか、何言ってんだよ!あの特務部隊のご帰還のパレードだぞぉ!!見に行かないなんて非国民と同じだっつーの!!よし、靴は履けたな!いいからいくぞ!」
と言い僕の手をぐいぐいと強引に引いて僕を城から連れ出す少年。彼はロニ、僕の唯一の友人。
彼は平民だが小さい頃からずっと一緒に遊んでいる所謂幼馴染というやつだ。
僕が出不精なのを知っているはずのロニが無理矢理にでも僕を連れ出そうとしている所は王都の中心部、今日は第一部隊の帰還パレードが行われる。
第一部隊はこの国のヒーロー。この国アインデルンでは精霊の加護を持つ人達がいる。多くは少し火を起こせるとか、少しだけ物を浮かせられるとか、その程度だが。
その中でも特に力の強い特別な人達の集まりが第一部隊だ。この国の誇りとも言われている。
「今回も軽くオベロニアの連中を撤退させたって話だ!かっけーよなあ!」
僕の手を引きながらグイグイと進んでいくロニ。
「まぁね、流石は国の誇り。とゆうよりオベロニアもよく諦めないよね。加護のない国が勝てるわけないのに…まぁそれだけ切羽詰まっているんだろうけど」
「あそこは年々作物が成らなくなってるらしいぜ、商人から聞いた話だが税金は全部戦争に使われるだろ…平民は泥水を啜る思いをして生きてるんだと」
「この国は侵攻はしないって話だけど…いっそ配下にしてあげたほうがいいにね…案外オベロニアもそれを狙っているのかな」
「さぁな、偉い奴の考えてる事はわからんけど。この国の誇りが絶対に負ける事はないって事だけは俺でもわかるぜ!」
長年この国アインデルンとその南に位置する隣国オベロニアは土地を巡って戦争をしている。
精霊の加護を受けたアインデルンと違いオベロニアは加護のない土地。やせた土地で作物を育てるのにも一苦労するらしい。
以前はオベロニアも精霊の加護を受けた豊かな土地で、アインデルンとも同盟国だったらしいが、突然精霊の加護が受けれなくなったらしい。
噂では精霊を怒らせたとか。まぁ実際の原因は詳しくはわからないが…
それからというものオベロニアは加護を失ったのはアインデルンのせいだと難癖をつけて戦争を仕掛けてきているようだ。
しかし精霊の加護を持たない人達がいくら束になろうとも、加護を持つ人達には勝てないのだ。
持たざる者は持つものには永遠に勝てない。この世の縮図ともいえる。
「うわぁやっぱり始まってる!人が多くて全然見えないなぁ」
うわぁ…人がゴミのようだ…。
国の中心街へ着いた僕達の目には第一部隊を一目見ようという人集り。これでは肝心のパレードの様子も見れそうにない。諦めて帰ろう、うん、そうしよう。
「ねぇ、ロニ…やっぱり帰ろうよ、こんな所からじゃ人の隙間からだって見えやしないよ」
「はぁ…お前がモタモタ靴なんか履いてたからだろう〜。よしお互いに肩車し合おうぜ!」
「えぇ〜…っわ!ちょっ、まっ、うわぁ!!」
僕はロニに強引に肩車をされた、急なことにびっくりして下げていた視線を上にあげると第一部隊の方々が馬車に座りながら手を振っている。
危険だとは思うが馬車の上に座り街をまわって行くのがこの国の帰還パレードの習わしなのだ。
まぁ、この部隊の人達が馬車の上から落ちるなんてヘマはしないだろうが。
突如、国民達の大きな歓声が響き渡る
「みんなありがとう!」
国民の歓声、特に若い女性からの黄色い歓声を一身に受けるのは第一部隊隊長ジル・ヴィレイスト様。
とにかく爽やかだ。どうゆう原理かは不明だが、精霊の加護で身体から剣を出す事ができるらしい。平民の出でありながら、その加護と剣の才能で第一部隊の隊長にまで成り上がった平民達の英雄。剣の腕は国一番で誰も勝てる人はいないらしい。
長身で整った容姿にフランクな人柄をしていることから女性ファンが多い。
「みんな、ただいま〜っ!!」
桃色の髪を二つに結び、まだ13歳らしいこの少女の名前はナナリー・クロス様。可愛らしい容姿に愛嬌の良さで人気なこの少女も幼いながらも第一部隊の隊員である。
加護の詳細はまだ幼い故か公にはされていないが、この幼さで第一部隊に入っている辺りかなり優秀な加護を持っているのだ皆が口々に言っている。
「ちっ、なんで俺様がこんなこと…」
綺麗な金髪を肩まで伸ばしている目つきも態度も悪いこの男性はリカルド・ヴァルルカン様。
加護は炎を自在に操れるらしい。粗暴な態度が目立つが、噂によると小さい子供や動物には優しくしているらしい。
口は悪いが性根は優しい人だと聞いたことがある。
伯爵家の次男らしく、粗暴ながらも所作は綺麗なところに育ちの良さが伺える。目つきと態度が悪いせいで忘れがちだが黙っているとかなりのイケメンである。その容姿と家柄から、彼の妻の座を狙う女性は多いと聞く。
「………………」
民衆達には見向きもしないクールなこの男性。いつも色素の薄い青い髪を一つに縛っているアレクセイ・ネプトゥヌス様。なんでも第一部隊のブレインと呼ばれているらしく、作戦はアレクセイ様が立てているとか、宰相様のご子息でもあるらしく、将来が約束されている。
令嬢がお嫁に行きたい人ナンバーワンらしいが当の本人が全く相手にしてくれないようで何人もの女性の心が折られているらしい。
一時期は男性が、好きなのではないかという噂まで出回っていた。
「皆さん、今日はわたくし達の為に集まってくれてありがとう。」
そしてこの人、美形揃いの第一部隊でもひときわ目立つキラキラと輝く銀色の髪をなびかせ淑やかに微笑む美しい女性。マリアベル・エリニス様。
公爵家の令嬢で産まれながらの勝ち組。おまけにあの美貌である、千人が千人振り返り、間違いなく美人と褒め讃えるであろうあの容姿に、稀に見る程強力な加護を持つ。
まさに精霊からも神からも愛されている女性。それがマリアベル様。氷を自在に操る事から氷姫とも呼ばれている、その加護とは裏腹に民衆にとても優しくいつも暖かい微笑みをしていることで国民の心を鷲掴みにして離さない国民人気ナンバーワンの女性がニコニコと民衆へ手を振っている。
僕はこのマリアベル・エリニス様がーーー
実は少し苦手だ。




