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White Knight Story~主人公として理不尽をぶち壊してきます~  作者: アスタリスク
1章 アルム編
7/16

最初の村 アルム

村:いなかで、人家が群がっている、地域的な一まとまり。また、地方公共団体としての(そん)

「チチチチチッ」


「うおっ」


青い小鳥が大きな鳴き声を出しながら目の前を横切って行った。優は近距離を鳥がバサバサと通り過ぎって行ったのに驚き、思はず声を上げた。


「ビックリしたぁ〜…。」


「何してるんですか。早く行きますよ。」


先を行くルミネが遅れてついてくる優の様子に『遅い!』と言いたげな表情を見せながら言った。






ルミネと優はやけに整地されている林道を歩いていた。


ルミネが言うことには、あの扉をくぐって、これまで18年間優が育って来た世界に来てしまったようなのだが、優はいまだに全く実感が持てないでいた。


生い茂る杉のように高く細く、バオバブのように葉が広がっている木。たまにしつこくまとわりついてくる小バエのような虫。鳥の声も聞こえてくる。どれもこれも、山に行っていれば見られる光景だ。異世界と言っても何の特別感も感じられない。


「クルルークルルーポッポー────」


ほら、キジバトも鳴いている。やはり、異世界と言うものの、あまり自分たちの世界と変わらないのではないのだろうか。少し様子が違うだけ。本当は文明やらが違うだけであって生物とかはあまり変わらないのだろ────


ガサガサ


「クルッポー?」


「う…え………?」


なんと愚かな人間か。自分たちの常識や後天的な予備知識に惑わされ、事の真実を確かめもせずに誤認する。なんと浅ましいことだろうか。………ここまで語っていた自分がとても恥ずかスィィィィィイ!


そこにいたのは胸部が奇妙に発達したネズミだった。


ルミネ曰く、この近くに出身の村があるらしく、今は2人でそこに向かっている。ルミネにとってついさっきの悪戯は過ぎていたらしく、植物の魔法で軽く締めあげられてしまった。そして、今もまだ、両頬には本来一つしか付くはずのなかった、赤い紅葉のような手跡が残っている。


(マジ強く叩きすぎだぜ、ホント。)


30分ほど経った今でもまだヒリヒリしている。どんだけこいつの平手打ち強いんだよ。てかそんなことより────


「なぁ?まだなのか?もう疲れたぜよーー。」


「何言ってるんですか。変な言い方やめてくださいよー。誰のせいでこんなことになったと思ってるんですか?全く。自分がやってしまった事を反省してくださいよ。特に私の体で弄ぼうとしたこととか!」


かれこれ今さっき言った通り30分歩き続けているが、一向に家が見つからない。ルミネは距離感が間違っているのだろうか。30分歩いてまだ見つからないのは近いとは言えないと思う。それとも迷っているのではないだろうか。ルミネも今さっきのでちょっと怒っているせいで、先程から飲んでいる水筒を飲ませてくれない。そのせいで、もう喉はカラカラ。イライラが頭の中を占めてくる。


「なーに言ってんだか。全然わかんないねー!」


「ムキィー!あれだけ私に変なことをしておいて!知りませんよ!次は本気で殺りますよ!」


「ねぇ!違うよね!変換間違えだよね!まさかこの世界を救うための助っ人を殺すとかそんな事しないよね!今さっきの受けたからほんとに洒落にならないよその冗談!」


今さっきのお仕置きはほんとにキツかった。出来ればもうあれは受けたくない。


そんな時、ふと優は思ってしまった。そして、顔が熱くなってきたのを感じたので、頭をブンブンと振り回し熱が空気中に放出するのを待った。それでもまだ足りないので、自分を誤魔化すように右上を向きながら顳顬をポリポリと人差し指で掻いた。


小鳥の囀りや小動物の鳴き声を聴きながら、美少女とこの林道を歩いていると思うと、優は何故か無性に恥ずかしくなってきた。ルミネは頭こそ悪いが、それを抜いたら、完璧美少女である。こんな恋人とのハイキングのようなシチュエーションをどれだけ待ち望んでいたことか。


ふと、優がそのように考えていると、少しづつ家々が姿を表し出した。すると、ルミネは振り返り優に上機嫌な調子で言う。


「ようこそ!私たちの村『アルム村』へ~!」








村の中は賑やかな様子だった。子供達が和気藹々と遊んだり、ここでもおば様達の世間話をする文化はあるらしく、笑い合いながらなにか喋っている。家は藁やら草やらの造りのようで縄文時代に見られる竪穴式住居みたいなものが多く連なっている。しかし、そんな中一番優が驚いたのは────


「よし。じゃあ一緒にやってみよっか!」


「うん!」


「せーのっ」


「「空よ、草木よ、母なる大地よ。我らが糧に祝福を。」」


ふいとそちらを見てみると、ある母娘おやこが、自分たちが育ててきたのであろう畑の作物の土に手を当てて詠唱文のような言葉を羅列し始めた。


すると、身体がほのかに光り始めたかと思えば、その光は土に送られているかのように伝わっていき、それは次に目の前の植物たちを包み込んでいった。


そして、植物たちはそれを受けて、目まぐるしいほどではないが、成長し始めた。


「うゎぁーーー!」


「ふふっ。」


そんな幻想的な風景を見て女の子の方が目をキラキラさせて、それを見ながらその子の母親であろう人が微笑んでいた。


そう。誰もがルミネのような植物の魔法が使えていたことだ。女性達や子供であるため弱々しくはあるものの、植物を急成長させたり、生やしたりして、それで遊んでいる子達もいた。こちらでは魔法は普通らしい。


(そう考えると俺らの世界の人間って退化してんのな。)


そんなことを考えていると、前方から二、三人の子供たちが近づいてきた。


「おねーたん。おかえりー……(ズルズル)。」


「ルミネお姉ちゃん!やっほー!」


「ルミネおねーちゃーんと……誰!?」


一番前の小さい女の子がルミネに近づき抱きついた後、優の方へ指を差し、目を白黒させながら愕然とした表情を見せた。会っていきなり「誰!?」とは失礼な。まぁでも、見た目幼稚園ぐらいの、且つこんな山奥なのか森の奥なのか分からないこの村で育った子供たちだ。教養がないのは仕方ないし、この歳で「お連れの方ですね。ようこそいらっしゃいました。」なんて言う方がおかしいだろう。しかも、今の反応少し可愛かったし。


優は「誰!?」の質問に答えるべくその少女に近づいて行き、挨拶をした。


「や、やぁ。────」


「そ…そんな……!」


「ル、ルミネお姉ちゃんが男を連れて帰って来たー!」


「あぁ。ルミネお姉ちゃんが…遂に抱か────」


「おーいちょっと待とうか。」


優はそのいたいけな少女の優的には間違った言葉を遮って、その少女に右の手の平を向けて左の手で額を包み、頭を抱えるようにして少し考える。すみません。今さっきの俺の意見。訂正してもいいだろうか。


「お前の村学校無いからってなんて事をこの可愛い幼児達に教えてんだ!変なところの教養を教えてんじゃねぇよ!この変態!」


「な!ち、違いますよ!何言ってんですか!?こんな事教えてませんよ!?というか、ついさっき私の体を弄んだ人に変態なんて言われたくないですよ!あと、きっとこの子達の独学ですから!独学ですからそんな冷たい引いた目でこっちを見ないで下さい!あなたにその権利はないでしょう!?……もう…あなた達も何言ってんのよぅ……。」


「………お前独学って……。じゃあそれはこの村のどこで学んだんだよ……。」


「ねぇルミネお姉ちゃん。私が言ったのもあれだけど、今ちょっと聞き捨てならない事実を聞かされた気がするんだけど……。」


「し、知らなくていいの!ごめんね?」


それを顔を赤くしながら誤魔化そうとするルミネ。


ルミネに抱きついていた子供はルミネの口から出た衝撃な真実に戸惑いを隠しきれず、両手を顔の口元に置き、顔を赤くしながら交互に優とルミネを見た。なんか可愛い。あぁ、これは────


「ゴクッゴクッ……。ぅんフゥー。善き善き。」


「……優さん。なんですかその湯呑みを持ったまま満足ぅ~みたいな顔は。何を見て和んでるんですか?変態なんですか?」


変態とは失礼な。可愛らしい子供を見て和むのは全ての大人の極上の嗜みだろうが。日本全国の大人に謝れ。


「ね、ねぇルミネお姉ちゃん?具体的にどこを────」


「さ、さぁ行きましょうか!優さん。は、早く行かないとですし────」


「そうだぞ。君の考えているとおり、俺はこの子となぁ────」


「優さん!?」


そんな女の子に何も答えず、優を連れてまた目的地に行こうとしたルミネを無視して真実を告げようとする。別に良いじゃないか。色々教えたらもっと面白そうなんですし。





優はルミネに首根っこを掴まれ連れて行かれた。犬や猫じゃなく服を着ている人間なんですからそこを掴まれたら苦しいんですが……。いや猫目ではありますけれどもね?


そんな事はいざ知らず、ルミネはしばらく引きずりながら優を誘導?した。


優を誘導するルミネの足がある一軒の家の前で止まった。ログハウス風なその家には多くの民族的な仮面が飾られている。今歩いてきた中で一番大きい家だが、この家には何かある感がすごい。


「ここが村長の家です。…………その、お願いですから、本当にお願いですから、無礼なことは絶対にしないでくださいね?」



ルミネはそう注意深く念を押した。そう、優はまず初めに村長と会うためにルミネに案内してもらっていたのだ。


「あ……あぁ、善処するよ。」


ログハウス風のその家の扉をルミネはノックし、「ルミネです。」と名乗る。すると、暫くしてそのドアはギギィと音を立てながらゆっくりと開いた。―――すると中からカラフルな顔が現れた。


(こ、この人が村長?)


髪は牙を付けたように固められている。現実世界の超ハードなワックスを付けてもこんなには固くならないだろうと言うぐらい────というか、少し煌めいているような気がするギザギザな白い髪である。首は木の棒のように茶色く細い。口の方にはやっぱり本物の牙はあるようで、犬歯が口を閉じていても剥き出している。目は完全に絵だ。なんだこれと思いながらも、目を離して無礼なことはしてはいけないと鉢巻はちまきを締めてかかる。目を離さず、動揺しながらも挨拶はする。


「こん……にちは。神木……優……です。」


「………………………。」


反応がない。シワも何一つできない。口から突き出した牙さえもピクリとも動かない。苦笑いし、あ~れ~?と思いながら頭をボリボリと掻いていると、


「おいお主。ワシはこっちじゃぞ?」


と、どこからか声がした。優はその声に驚き、辺りを見回すが、ルミネ以外誰もいない。というか、ルミネが何かそわそわしている。ん?と疑問に思っていると、ルミネの方から口を開いた。


「あのぅ。優さん?村長は下です……。」


「ん?……げ!」


カラフルな顔の下を見てみると、そこにははち切れんばかりに頬を膨らましトマトのように赤くなっている額の上のまえがみの白髪を可愛く留めた老人が立っていた。しまった。目の前のものに驚き、気を取られすぎて下を見るのを忘れてしまっていた。


「バッキャもーん!」


久しぶりの村長の怒声に村人全員が顔を上げた。

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