62話:第零教室と、選ばれし三人の城
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豪華な装飾が施された重厚な扉を開け、私たちは学園長室へと足を踏み入れた。 天井には広大な星図が魔法で投影され、ゆったりとした時間が流れている。
だが、そこに漂う魔力密度は、外の廊下とは比べものにならないほど濃かった。
「……座りなさい。首席のフィラル、そしてシアン、ルフス」
学園長バルドゥールの言葉に、私たちはソファに腰を下ろす。 真っ先に動いたのはシアンだった。彼は周囲の威圧的な魔力などどこ吹く風で、一番深いソファにどっかと腰を下ろし、長い脚を組んだ。
「お呼び出しなんて、特待生へのご褒美にしちゃあ、随分としけた部屋だな」
「シアン、口が悪いわよ」
私が窘めると、シアンは「事実だろ?」と不敵に口角を上げた。その指先には、退屈を紛らわせるように蒼い火花がパチパチと踊っている。
「おい、フィラル。……なんかここ、妙に空気が重くないか?」
隣のルフスが少し落ち着かない様子で肩を回し、私を気遣うように顔を覗き込んできた。
「そうね。学園長様の魔力だわ」
「へぇ、これが学園のトップかよ。……まぁ、いざとなりゃ俺がフィラルを守ってやるけどな」
ルフスが力強く拳を握りしめると、シアンが鼻で笑って割り込んだ。
「守る、ねぇ。お前のその『ワイルド×パワフル』な拳が届く前に、俺が雷で片付けてやるよ。な、フィラル?」
二人の火花を散らすような視線が私で交差する。試験が終わっても、二人の「どっちがフィラルに相応しいか」という無意識の競い合いは続いているらしい。
「単刀直入に言おう。お前たち三人を、一般のクラスに入れることは不可能だ」 学園長が切り出した言葉に、シアンの瞳が鋭く細まった。
「……は。強すぎてお断り、なんて言わないだろうな。もしそうなら、この部屋ごと焼き払って、フィラルを連れて帰るだけだぜ?」
シアンの右手が剣の柄にかかる。彼の魔力が部屋の帯電を加速させ、学園長の書類がパサリと揺れた。
「落ち着きなさい、若き天才よ。……私が提案したいのは、『第零教室』の新設だ」
学園長が提示したのは、銀の鍵と旧校舎の地図。
「お前たち三人のためだけに、北端の旧校舎を解放しよう。寮として住むもよし、改造するもよし。……ただし、そこに巣食う魔物や呪いを『掃除』してもらうのが条件だ」
「旧校舎の掃除、ねぇ……」
シアンがようやく剣から手を離し、地図を指先でなぞった。
「まぁ、いいぜ。一般生徒に混じって、ちまちま座学なんてガラじゃねぇしな。そこなら俺たちの『本気』を出しても、誰にも文句は言われないだろ?」
「ああ、俺も賛成だ。フィラルと一緒に住めるなら、掃除くらい俺が全部ぶっ飛ばしてやる」
ルフスが胸を叩いて笑う。
私は、二人の頼もしい(?)言葉を聞きながら、心の中でガッツポーズをした。 (旧校舎……! そこなら、ルフスやシアンと一緒に、私の理想の暮らしが始められるわ!)
ありがとうございました。




