57. 三年越しの粉砕と、背後の殺気。
お久しぶりです。
よろしくお願いします。
(……あぁ、猛烈なデジャヴを感じるわ)
目の前にあるのは、あの忌まわしき「魔力測定用の水晶」。
三年前、五歳の私がうっかり割ってしまったせいで、去年の私は本気を出すのが怖くなってしまった。結果、ひよって魔力を出し惜しみし、不合格……。
(あのトラウマさえなければ、去年受かってたのに……!)
後悔しても始まらない。私は、試験官の声で現実に引き戻されました。
「フィラルさん。この水晶の上に手をかざしてください」
言われた通り、私は水晶へそっと手を伸ばしました。
脳裏に浮かぶのは、去年の屈辱の日から今日まで。師匠である大賢者ラクサスと、あの「裏の顔」を持つママにしごき抜かれた地獄の特訓の日々……。
(今の私なら、加減ができるはず。……たぶん!)
私は、溜め込んできた魔力を解放しました。
その瞬間、透明だった水晶が耐えきれないほどの白光を放ち、内側から激しく脈打ったかと思うと――。
――パリンッ! という乾いた音と共に、水晶は粉々に砕け散りました。
「……あ。ごめんなさい、水晶を弁償します」
呆然と立ち尽くす試験官を余所に、私は心の中で小さくガッツポーズをしました。
(やった……! 去年の屈辱、ようやく晴らしてやったわ!)
隣のレーンを見れば、シアンとルフスも規格外の暴挙に出ていました。シアンが手をかざした水晶はドロドロに溶け、ルフスの水晶は絶対零度でガチガチに凍りついています。
「おい、今年の受験生はどうなってるんだ……」
「あの三人組、絶対に合格だろ……」
周囲のざわめきが心地よく響きます。こういう注目の浴び方は前世から慣れっこ。……だったはずなのですが。
「っ……!?」
突如、背筋を凍らせるような、凄まじい「殺気」を感じて私は身震いしました。
この世のものとは思えないほど重く、それでいてどこか見覚えのある、粘着質な愛を感じる殺気。
恐る恐る視線を向けた先――。
柱の影から、人間に変身しきれず背中に羽がはみ出している父様と、目が血走っている兄様がこちらを凝視していました。
(ちょっと……! 何やってるのよあの天使(身内)たちは!!)
どうやら今年の試験は、魔物との戦いよりも、家族の暴走を止める方が大変になりそうです。
ありがとうございます。




