53. 猛烈な誤解と、氷点下の殺意。
今回もよろしくお願いします(。•́•̀。)
「……」 「……」
ギルド隣の食堂に、カチャカチャという食器の音だけが虚しく響きます。
「……なぁ、フィラル。お前ら、さっきから何なんだ? ルフスと何かあったのか?」
耐えかねたようにシアンが尋ねてきました。
「……ううん、何でもないわよ。心配させてごめんなさい」
「じゃあ、なんで二人とも一言も喋らないんだよ」
鋭い。けれど、昨夜の「前世暴露」と「謎の詠唱」の話をシアンにするわけにはいきません。私が返答に窮していると、ルフスが助け舟を出してくれました。
「おいシアン。喋ってねーで食えよ。飯が冷めるぞ」
(……サンキュー、そう君!)
目線で感謝を送ると、ルフスは「別に」とそっけなく視線を逸らしました。
そのやり取りが、シアンの火に油を注いだようです。彼は椅子を蹴るようにして立ち上がると、食堂中に響く声で叫びました。
「分かったぞ! さてはルフス、お前、フィラルに告白して振られたな!?」
「「ぶっ……!?」」
私はスープを吹き出し、ルフスは椅子から転げ落ちそうになりました。
「ちょっ、違うから! 椅子に座って黙りなさい!」
「おまっ……何言ってんだ!? 俺がこんなやつに告るわけねーだろ! この妄想野郎!」
「んだと、この脳内お花畑!」
いつものように始まった二人の喧嘩。周りの客も「またか」という顔で食事に戻っています。……今のうちに逃げよう。
私がこっそり席を立とうとした瞬間、シアンの無慈悲な追撃が飛んできました。
「おい、フィラル! なんで逃げるんだ? やっぱり図星だったのか!?」
ぴきり、と自分の中で何かが凍りつく音がしました。
「……シアン。どうやら、本当にお亡くなりになりたいみたいね。いいわ、望み通り殺ってあげる」
「あ、やべ……」
「『フリーズ』!!」
食堂の一角が瞬時に絶対零度へと叩き落とされます。カチコチに凍りついたシアンを見て、ようやく溜飲が下がりました。
(ふふ、私は悪くないわ。全部シアンが悪いのよ。だから、このまま死なせても――)
「フィラル! いい加減にしろ、本当に殺す気か!」
ルフスの制止で、私はハッと我に返りました。
「……チッ。……『パージ(解除)』」
「げほっ、ごほっ……死ぬかと思った……」
「次はないわよ? 本当に魂ごと凍らせてあげるから」
釘を刺すと、シアンは真っ青になって頷きました。
それにしても、なぜあんな誤解を……。
理由を聞けば、「朝からチラチラ見ては目を逸らし、ルフスはルフスで傷ついた顔をしていたから」だとか。
(それは誤解よ! 私がルフスを見ていたのは幼馴染だったからだし、ルフスが傷ついてたのは昨夜の失態を思い出してたからなんだから!!)
言えない真実を飲み込んで、私は深く溜息をつきました。
入学試験を前に、なんだか別の意味でどっと疲れてしまった一日の始まりでした。
あと少しで学園編に入ります!…多分




