46. 龍の炎と、ママの裏の顔。
今回もよろしくお願いします!<(_ _)>
闘技場の騒動から丸一日。私とノエル、そしてママは、学園近くの巨大なギルド『龍の炎』の前に立っていました。
「でかいわね……」
「ふふ、ここはごつい人ばかりだけど、みんな根は優しいから大丈夫よ」
ママは懐かしそうに目を細めていますが、その足取りには迷いがありません。かつてここでお世話になっていたという言葉が、妙に重く響きました。
扉を開けると、そこは熱気と酒の匂いが立ち込める、まさに「冒険者の溜まり場」。
すると、一人の大男が私たちの前に立ちふさがりました。
「……おい。お前、ミルフィーか?」
「そうだったら、何かしら?」
ママの声が、聞いたこともないほど冷たく、鋭いものに変わりました。
「お前! 今までどこに行ってたんだよ! 俺たちがどれだけ探したか!!」
「「ミルフィーだ!!」
「ミーちゃんが帰ってきたぞ!」」
男の叫びに、ギルド中が蜂の巣をつついたような大騒ぎになりました。
詰め寄る男たち、飛び交う怒号。あまりのうるささに、私の堪忍袋の緒がプツリと切れました。
「ねぇ、ノエル。こいつら凍らせていい? ママが危ないし」
「……ほどほどにね」
「分かってるって。『アブソリュートゼロ』!!」
刹那、ギルド内が極低温の白銀に包まれました。
静寂。凍りついた男たちが青ざめる中、私は受付のお姉さんに声をかけました。
「お姉さん、ギルド登録したいんだけど……あ、唇が紫よ? 大丈夫?」
「フィーちゃん、やりすぎ。ママ、何か言ってあげてください」
ノエルの溜息に、ママは真剣な顔で私を諭しました。
「そうね。フィーちゃん……こんな魔法はダメよ。せっかく全属性が使えるんだから、闇属性の『ナイトメア』を使いなさい。凍死させるより、悪夢を見せて黙らせる方が効率的でしょう?」
「……そっち!?」
ノエルの絶叫を無視して、私は言われた通りにナイトメアを発動。バタバタと倒れる猛者たちの中で、平然と立っている五人の男女がいました。
「ふぉっふぉっふぉ……子供でナイトメアを使いこなすとはな」
現れたのは、ギルドマスターのラクサス。
傍らには、シアンやルフスという同年代くらいの子供、そしてS級魔道士のジョヌとルイ。
「私はフィラル、五歳。ママを責める奴がうるさかったから掃除しただけ。マスター、登録させてくれる?」
「いいだろう。だが、まずはこ奴らを起こしてくれんかの?」
ラクサスの頼みに、私は渋々魔法を解きました。
目を覚ましたギルド員たちが再び騒ぎ出そうとするのを、私は満面の笑みで制しました。
「――次は、もっと深い悪夢を見せてあげるけど、まだ喋る?」
一瞬で静まり返るギルド。
「ふぉっふぉっふぉ。話が早くて助かるわい。では、登録の手続きに入ろうか」
私はラクサスに連れられ、薄暗い奥の部屋へと足を踏み入れました。 いよいよ、私の「冒険者」としての記録が刻まれるのです。




