44. 絶対零度の監獄と、愛しき再会。
「着いたよ。ここが闘意を燃やすに相応しい場所――闘技場だ」
センリに案内された場所は、呆れるほど広大なフィールドでした。
(やばいやばいやばい! 心臓が口から出そう……。でも、勝たなきゃあたしの自由はないんだから!)
三十分の猶予。私はノエルの膝を借りて少しだけ仮眠をとり、精神を研ぎ澄ませました。
しかし、気合を入れすぎてグラウンドへ向かったはずが……。
(待って、ここどこ!? あたし、致命的な方向音痴だったじゃない!)
全力疾走で迷子になりつつも、なんとか「お手洗いに行ってました」という見え透いた嘘で誤魔化し、私は開始線に立ちました。
「審判、始めてちょうだい」 「了解しました。……レディー、ゴー!!」
合図と共に、私は魔力を解放しました。
「『フレイムタンフラワー』!」
咲き乱れる炎の花がセンリを襲います。触れれば皮膚を焼き溶かす最上級の炎。しかし、センリはそれをも優雅に躱してみせました。
「冷たいのもお好きかしら? 『アブソリュートゼロ』!」
一気に氷点下へと叩き落とす私に、センリも「サンフレイム」で対抗。泥濘と化した地面。
「あっちぃ……。あたしを殺す気?」
「ははは、君こそ僕を殺す気で来ないと死ぬよ?」
「……そう。なら、望み通りに。――『フィンブル』。そして、永劫に眠れ。『コキュートス』!!」
刹那、フィールド全体が凍てつき、センリを氷の籠が包み込みました。
「……意外とあっけないわね」
審判へ「あと十秒で彼が再起不能になれば、あたしの勝ちよね?」と告げた時。私は何もない空中に視線を向けました。
「……気配が消えたわね。無属性魔法(空間転移)で逃げたなら、とっとと出てきなさい。このボケなすが」
「あはは、バレちゃった? フィラルちゃん、キャラ変わってない?」
空間からひょこっと頭を出したセンリは、苦笑しながら両手を上げました。
「降参だよ。君の最初の魔法で結構な痛手を負っちゃったしね。……久々に『死』を予感したよ。君の勝ちだ」
「勝った……! やったぁ!!」
会場に地鳴りのような歓声が響きます。これでマジェイア学園を辞退し、夢の冒険者への道が開かれた! 歓喜に震える私の背後から、懐かしく、そして聞き間違えるはずのない声が降ってきました。
「よくやったな、フィラル! さすが俺の自慢の娘だ!」 「本当だ! さすが俺の可愛い妹、世界一だね!」
全身の血が逆流するような衝撃。 ゆっくりと振り返ると、そこには……。
天界にいるはずの、そしてずっと会いたかった、父様と兄様が立っていました。
戦闘シーンが短くなっちゃいました……。




