42. 特訓前夜。ママの過去と、偽りの姿。
「お嬢様……本当に、本当によろしいのですか? 戦ったこともないのに理事長と決闘だなんて、ボコボコにされて泣きつくのがオチでは……」
「だぁー! さっきからいちいち煩いわね! 仕方ないじゃない、あれしかセンリを納得させる方法はなかったんだから!」
私は耳を塞いで体育座り。ノエルの心配はありがたいけれど、今の私には一週間の特訓で「なんとかする」という選択肢しかないのです。
「僕は心配なんですよ! 大切なお嬢様に万が一の怪我でもあれば、僕が旦那様方に殺される……!」 「……ねぇノエル。あんた、前々から思ってたけど、心配の方向が自分寄りじゃない? あと結構毒舌よね」
そんな私たちのやり取りを、ママがクスクスと笑いながら見守っていました。
「ふふ、まさかネフィちゃんが男の子だったなんて。私も焼きが回ったかしら。……ねぇフィーちゃん。その特訓、私も混ぜてくれない?」
「えっ、でもママ、体力とか大丈夫なの?」
「あら、失礼しちゃうわね。これでも昔は、ギルド『ハウクアイ』でSランク魔道士をやってたのよ?」
ハウクアイ……『鷹の目』。その名から漂う不穏な気配に、私は思わず頬を引きつらせました。
「ママ、それって……闇ギルドじゃないわよね?」 「ん? 違うわよ~(うふふ)」
その笑顔が逆に怖い! でも、伝説級の魔道士だったママが味方なら、これほど心強いことはありません。
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ノエルを追い出し、一人になった部屋で明日の準備をしていると、不意に風が舞いました。
「あ、フランシア!」
「驚いた? フィーちゃん、明日からはあたしたちも本気でいくよ。……だから、その『偽りの姿』は解いて、本当の姿で来なさいね?」
「えっ、なんで魔法を使ってるって分かったの……?」
フランシアは悪戯っぽく笑いました。
「記憶が戻ったんだから、契約の印だって表に出るはずなのに、それすら隠してる。……バレバレだよ? 主としての、本当の力。明日、見せてよね。バイバ~イ!」
光の粒となって消えたフランシアの言葉を噛みしめます。 五歳児の「フィラル」として過ごした安穏な日々。けれど、決闘に勝つためには、レボルヴァ公爵令嬢としての、そして精霊たちの主としての自分を解放しなければなりません。
「……本当の、あたしの姿」
私はベッドに潜り込み、静かに目を閉じました。 明日。朝日が昇ると同時に、最強の特訓――そして、私の「復活」が始まります。




