32. 三歳の薬草採りと、森の不思議な少年。
今回は長めです( ´•௰•`)
「ま~!」 私は全力で走り、大好きなママの胸に飛び込みました。 やっはろー! あたしはフィラル。正真正銘、ピチピチの三歳よ! (……え? 三歳がこんなに流暢に話すのはおかしいって? 自分でもそう思うわよ。でも、なんだか自分の中に「何十年も生きていた別の誰か」がいるような気がするのよね。……ママに言ったら笑われちゃったけど!)
「どうしたの、フィーちゃん?」 「あ~ちょ~ぼ! ママ、お外で一緒にあちょぼ!」 「ごめんねぇ。今はまだお仕事が忙しいのよ」 「え~……やー! あちょびたい、あちょびたいったらあちょびたいのっ!」
ジタバタと駄々をこねる私に、ママがすっと真剣な顔をしました。 「フィラル? ママを困らせる子は……『ファントム』に連れて行かれちゃうわよ?」 「ひっ……!」 ファントム。悪い人をさらって、恐ろしいことをする影の化け物。 「……はーい。いい子にします……」
本当は遊びたかったけれど、攫われるのは御免です。 私はトボトボと、一人でお庭へ……いえ、そのままお気に入りの裏山へ「おちゃんぽ」に出かけました。
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「あ、ハーブみっけ! あと、よもぎも、ほとけのざも……。ここら辺は、いい『やくしょう』がよくみちゅかるわねぇ」 「……何が?」 「やくしょう。あとね、『しゃんしゃい』もいっぱいあるのよ!」 「しゃんしゃいって、山菜のこと?」
「そうだよー。ここはあたしの、おにわ……――って、だれ!?」 背後からかけられた声に振り向くと、そこには一人の男の子が立っていました。
「意外とびっくりしないんだね。僕はただの通りすがりだよ」 「ふーん……。お名前、『ただのとおりしゅがり』っていうの?」 「いや、違うよ。名前はセンリだ」
センリ。 どこかで聞いたことがあるような、胸がキュッとする懐かしい響き。 「しぇんり、ね! あたしはフィラル。みんなはフィーちゃんって呼ぶの。今、三歳よ。しぇんりは何歳?」 「六歳だよ。初対面で年を聞くのは、本当は失礼なんだよ? ……次は気をつけてね」 「あわわ……。ごめんなさい、しぇんりお兄ちゃん!」
私がぺこりと頭を下げて笑うと、センリお兄ちゃんも少しだけ、優しく目を細めました。 けれど、楽しい時間はあっという間です。
「あ、もう帰らなきゃ。……ねぇ、しぇんりお兄ちゃん。また会える?」 「……うん。きっと会えるよ。君が、本当の姿に戻ったら……また会いに来る」
本当の姿? あたしは、あたしなのに……? 首を傾げて、一回だけ瞬きをした瞬間。 目の前にいたはずのセンリお兄ちゃんは、かき消えるようにいなくなっていました。
「ありゃ……。消えちゃった……」
森が夕闇に染まり始めます。 私は急いで、温かいママの待つお家へと、短い足で一生懸命走り出しました。




