16. 三歳児の冒険と、不機嫌な王子様。
今日は、少し長くなります(๑>◡<๑)
今日も今日とて、世界は平和。 ……約一名、廊下で豪快にズッコケている見習い執事を除いては。
「あはは……フィーにジト目で見られると、あんまり怖くないんだよなぁ」 ニコニコ笑うノエル君に、私は最大限の冷ややかな視線を送った。 (……むかつく。今は三歳児の可愛さで誤魔化されてるけど、いつか本気で震え上がらせてやるんだから!)
「……あ、そうだ。フィー、僕はこれからちょいと用事が……」 言いかけたノエル君は、音もなく姿を消した。
(――って、まさかの放置!?) 今日は母様たちも王宮の御用で留守。妖精さんたちもお出かけ。 広い屋敷に一人残された私は、暇つぶしにお散歩……もとい、ノエル君の捜索を開始した。
しかし、歩き始めて数分。 (……はい、二度目の迷子。知ってた。この家、広すぎるのよ!) イライラしながら壁をペタペタ触っていると、「ふにゅ」と妙に柔らかい感触。 (ひぃっ! 何今の!? ヤバいスイッチ!?)
――ギギギギギ……。 重厚な音を立てて開いたのは、高さ三メートルはあろうかという巨大な門。 恐る恐る中へ踏み出すと、そこには息を呑むような絶景が広がっていた。
「わぁ……! きれー!」 赤、青、白。色とりどりのバラが咲き誇る、まるでおとぎ話のような秘密の庭園。 花の香りに誘われて奥へ進むと、噴水のそばのテーブルに、一人の男の子が座っていた。
「……誰だ!」 「ひょわっ!?」 突然の怒声に驚いて、しりもちをついてしまった。 「なんだ……ただの子供か」
(……何よその言い草! レディを転ばせといて謝罪もなし!?) 私は「ぬんっ」と立ち上がり、ドレスの砂を払った。 「ちょっとあんた! レディをころばせといて、しゃじぇいはないの!?」 「は? 勝手に転んだお前に何で謝らなきゃいけないんだ。……お前こそ何者だ。どうやってここに来た」
ふん、と鼻を鳴らして質問攻めにしてくる不遜なガキ……いえ、少年。 私はお姉様に教わった通り、警戒しつつも言い返した。 「うるしゃいな! 私はフィラル! ノエル君をしゃがしてたら、わっかりにくいスイッチを見ちゅけたの! それよりあんたこそ、名乗りなしゃいよ!」
「……ふん。僕はヴィンセント・ヴィ・フィオーラル。アベル王の息子だ」 (アベルって……あの誕生日にいた気さくなおじさん!? え、王様だったの!?)
「ふーん……おうじしゃまなのね。よろしくおねがいしましゅ。……ところで、なんでおうじしゃまが私のおやしきにいるの?」 「それは……」
「殿下、お茶の準備が――フィー!? なんでここに!」 そこへ現れたのは、銀のお盆を持ったノエル君。
「なんだ。お前たち、知り合いだったのか?」 王子の問いかけに答える間もなく、私はノエル君にひょいっと抱き上げられ、隅っこへ連行された。
「フィー! 僕、一留守番しててって言ったよね!?」 「きいてないよ! わたち、しゃがしてたんだもん!」 「……はぁ。もういいや。で、どうする? 部屋に帰るか、それとも殿下とお茶する?」
私は即答した。 「おうじといっしょにいる!」
(王族とのコネは大事だもんね!)なんて下心を抱きつつ、私は不機嫌そうな王子様のテーブルへ、堂々と割り込んでいくことにした。
今日も読んでくださり有難うございます(*^ω^*)




