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『もうどうしようもないの……こうするしかないの』

 長い黒髪がだらりとその女の顔を覆っていた。

『許して』

 僕の視界が真っ赤に染まった。

「あっ!」

 瞼を開いた。

 いつの間にか、眠ってしまっていた。

「いまのは……夢……?」

 違う。

 僕はテーブルの上の本を見つめた。

 五代目が「泡」を施したあの本に、うたた寝しながら触れてしまったのだ。

 強力な封印が施されてもなお、強い念が溢れ出し、それに感応してしまったのだろう。

 血に濡れた黒髪の女は、いつかその本が見た情景だ。

 黒髪の女性が過去に何をしたのか、想像するに容易い。それは目を背けたくなるような絶望にまみれた光景だった。おそらくは、その時の血で穢れ、穢れによって目覚めてしまったのだろう。

 僕の中にどろりとしたものが残っている。

 失意と絶望。

 そこに見え隠れする愛惜の念。

 僕は五代目が戻るまで、とりつかれたように、紅い夢を反復し続けた。

 ガラス戸に叩きつける激しい雨の音だけを聞きながら。


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