07『仲間を増やしましょうーその3前編』
今回は、魔物の天敵が登場します。
前回、仲間にしたダスタとアリーナも登場します。
こちらは、前編です。
ダスタとアリーナが仲間に加わって、1週間が過ぎた。
2人とも難なく雑用や力仕事をこなすのでヴァエルは大助かりだと喜んでいた。
のだが・・・。
「であるから! 貴方様は魔王としての身分であることをよく理解してください!! どうして、そんな自由奔放なのですか!?」
「は、はい・・・。」
「今回は、壁のちょっとした破壊で済んだものを! 魔術や魔法は野外での練習をお願いします。」
「本当にすみません・・・。」
「マタ、パパ・・・ダスタサンニシカラレテルヨ・・・。」
とため息をつくヴェール。
「これが私たちのの魔王とは思えません・・・。」
とボソリと言うアリーナ。
この2人は性別は違えど、力ある鬼。鍛え方次第では、【魔王】になりうる存在かもしれないとウェートは感じていた。
「それから、ウェート様にヴァエル様から伝達です。」
「ヴァエルから?」
いつもなら、直接言いに来るのにと思うウェート。
ダスタが紙を開きいう。
「『ウェート様。お次のめぼしい仲間の場所が決まりました』。」
「場所は?」
そう聞くとダスタは苦虫を噛み潰したような表情になる。
「おい? ダスタ?」
「場所は・・・。」
ダスタはため息をつく。
「・・・我ら魔物の天敵ともいえる存在の領域・・・『天界』です・・・。」
ー天界 アテナ神殿街ー
ここは、聖なる種族である天使族や神族が住まう地、天界。
ここにいる種族はみな平和を愛する者しかおらず、争い事は一切起きないといわれる。
ちなみに、ウェートがいるのはアテナ神殿に続く街道。
「おぉ、さすがは聖地。神殿から放たれる聖なる輝きが俺ら魔物には痛いぜ・・・。」
しかし、ウェートは天界に来たと同時に天界の住民の視線がいたいと思い、居心地はあまりよくないと思っていた。
「そういや、ヴァエルの情報によると天界には魔物が攻めて来ることは全くなくて、この数百年間は平和だったらしいな・・・。」
ウェートは少し気が引けると思いつつも、住民から情報収集しようとするが・・・。
「なぁ、おっさn・・・。」
「ひぃぃぃー!! 喰われるー!!」
天使のおっさんは断末魔の悲鳴を上げて、ものすごいスピードで逃げていった。
「・・・、す・・・すまないが・・・って、もう誰もいない!?」
ウェートは、気を取り直してほかの天使から聞き出そうとしたのだが、天使は皆家に逃げ隠れたらしい。
その代わり、遠くから天使の軍勢と思われる集団がこちらへと飛んできた。
「ヤバッ・・・。」
その中のリーダーらしき天使が俺の前に降り立った。
「私はこの天界のリーダーミカエル! 汝が天界で暴れる魔物か! 何ともどす黒い魔力! 我が直々に制裁を下す!!」
「えっ・・・ちょっ・・・!」
「くらえっ! 聖水の槍!!」
「うわっ!? ミカエルって、確か天使の中でも大天使級の大物じゃんか!? マジで死ぬって!!」
ミカエルは聖水の槍でウェートを防戦一方に追い込む。
「問答無用!!魔物は皆敵だ!!」
「聖水で出来た槍を振り回しやがって!! 何すんだよ!?」
「うるさいっ!! 聖火で焼き祓ってくれるわ!!」
そういうと、ミカエルは手を天に掲げる。
「神よ!! 我が名は四大天使ミカエル!! 神の聖なる炎で悪しき者を葬り去れ!! 神の大炎火!!」
ミカエルが詠唱を言うと、天から巨大な炎の球が落ちてきた。
「人の話を聞く耳すら持たねぇ!? なんて野郎だ!?」
もうだめかと思われたその時。
「そこまでにしなさい! ミカエル!」
声がした方を見ると、上空から降りて来る美しい美貌を持つ女の天使がいた。
「ラ、ラファエル!」
とミカエルが名を呼ぶ。
「あれが、四大天使の一人ラファエル・・・、大ピンチだな。」
窮地に立たされたウェートは冷や汗を垂らす。
しかし。
「其方に仲間が無礼をした。すまない・・・。」
そう言い、ラファエルが頭を下げる。
「いや・・・、そんな・・・頭を上げてほしい! 俺は魔物だからどう思われても仕方ない!」
ウェートはラファエルの意外な行動に焦り、ミカエルや天使の衛兵は唖然としている。
「そうだよ! ラファエル! 早くこの魔の者を始末するぞ!」
「こいつ、美人のくせに荒々しい性格だな!?」
「ミカエルは黙りなさい?」
ラファエルの威圧に震えるミカエル。
「さぁ、此処では民衆の目もありますから・・・、神殿内で話しましょう。」
そう言い、ラファエルの後をウェートは付いて行く。
ーヘヴン神殿内ー
ウェートは、自分のことと此処に来た訳、目的をラファエルに詳しく話した。
ラファエルは頷きもせず、黙ってウェートの話を用意された、紅茶を飲みながら聞く。
攻撃してくる様子はなく、ミカエルの方は縄に縛られていた。
「あら、貴方・・・魔王の一人なのですか? 【六星の皇帝】の誰か一人脱落したのでしょうか?」
「いや、今は俺も含めて七名いる。今の魔王たちの名は【七つの魔王組曲】と呼ばれている。」
ウェートは紅茶を一口飲む。
「改めて、自己紹介します。私は【治癒の神】ラファエル、あっちのしばられているのが、【神の化身】ミカエルです。よろしくお願いします。」
「【七つの魔王組曲】の【重力闘士】ウェート・クロノスだ。よろしくな。」
「私を放っておいて、お茶会をするな! ラファエル! ここは、私の庭園だぞ!」
「ここ、お前の庭園かよ。」
口うるさいミカエルに似合わず、つい見惚れてしまいそうな庭園だとウェートは思った。
「別にいいじゃないですか、ミカエル。この方は、ほかの魔王とは違い決してとは言い切れませんが、安全です。」
「しかし、アイツのようにペテン師かもしれないぞ!」
「ん? ペテン師? もしかして、アルゼンか? アイツが天界に来たのか?」
「はい、3年前に天界に死霊族の魔王が此処にやってきたのです。目的は、天界からの引き抜きで神秘の天使ラジエルを狙っていました・・・。」
「しかし、あいつは天使らの心に漬け込み、天界を我が物にしようと、死霊族の大兵団を連れていきなり攻め込んできたんだ・・・。」
「それ以降、下界との接触を天使族の皆は拒むようになりました。」
「そんな折に、今日アンタがここに来た。魔王の一角だから、ヤバイ奴かと思ったが・・・。」
ミカエルはため息をつき、呆れたように言う。
「こんな奴に魔王が務まるのかねぇ・・・?」
「なっ!?」
そんな時。
「ミカエル~この間借りた聖書返しに来たわよ。おや、ここにラファエルがいるなんて珍しい・・・わ・・ね・・・。」
また、一人の天使が姿を露わにしたのだった。
後編に続く。
不定期で本当にすいません。