第四話 情報収集!
「さて、どこに行こうか」
俺はちょうど同じくらいのタイミングで説明書を読み終わったマリと別れ噴水広場の中心に来ていた。
広場から四方に一つずつ道がある。
他の皆はそれぞれ別の道から出て行った。
となれば残された道に行くしかないな!
せわしくなく行き交う周りのプレイヤーを尻目にゆっくりと歩いて行った。
道は一本道で両脇には木々があり、並木道のようになっている。
広場と同じように皆忙しそうだ。
歩き始めて少しすると、出口に着いた。
出口から外を見渡すとそこには...
町が広がっていた!
と言っても予想通りだったんだけどね。
さすがにいくら俺達がゲームに自信があるからって初見のゲームで敵が出現するような場所をソロで行くわけがない。
広場にいた時に四方の道から出たり入ったりするのを見て敵が出ない場所だということはわかっていた。
こういうVRMMOで敵が湧かない場所と言ったら町しかない。
それでもやっぱり感動するもんだ!
出口から見て左右に道があり、正面には大通りがある。
とりあえず、まっすぐ大通りを行ってみよう。
大通りにしてはあまり騒がしくない。
そりゃあプレイヤーは話なんてせずにせわしなく動いてるし、NPCだってそんなうるさくなるほど喋って・・・
NPCが喋っとる!
いや、そりゃもちろんNPCだって喋るようにプログラムはされているがそれはあくまでプレイヤーに話しかけられたら規定の情報を教えてくれる程度なのだが...
目の前にいる3人のおばさんNPCが道端で井戸端会議をしていた。
マジかよ・・・MWぱねぇ
ちょうどいいのでその井戸端会議会議に参加させてもらうことにした。
「あの〜すいません。ちょっとお尋ねしたいことがあるんですが・・・」
NPCに対してこの低姿勢、やはり俺も日本人だな!
「おや!なにかね? 」
一人のおばさんが話を聞いてくれるようだ。
とりあえず基本的な情報を聞いて見た。
おばさん達の聞き込みで分かったことだが、この街の名前はアリシアというらしい。
中央の噴水広場を中心に、円形に広がっている街で、かなり大きな街のようだ。
街の中に基本的な店舗はほとんどあるうえ、闘技場や神殿などの大規模設備もある。
他にもいろいろ聞いて見たがあまりめぼしい情報は無かった。
おばさんの知らないことを聞くと
「う〜ん、知らないねぇ〜」
と同じ言葉を繰り返していたので、
なぜか安心してしまった。
やっぱりNPCがあんまりリアルだと怖いしね!
しかし話を聞いていたら途中から、なぜかおばさん達の噂話の聞き役にさせられてしまっていた。
相手はNPCなのに話を終わらせられない俺はもう日本人の鏡なんじゃないかと思い始めた。
ようやく一区切りついたので、大通りを進んで行く。
大通りから横道はたくさんあるが、迷うと大変なので道なりにまっすぐ進んで行った。途中で道具屋に寄ってみたり、露店を冷やかしてたりしてNPCに話を聞いて回る。
やはりファンタジーの世界が舞台だけあって、ポーションやマナポーション、武器も様々なものがあった。
テンションが上がってるんるん気分で歩いていると、いい匂いが漂って来る。
匂いの先にあったのは料理屋だった。
なぜVRゲームなのに料理があるのかというと、現実で満腹感は味わえないが、味を堪能することは出来る。
最近ではゲーム内の空腹度がステータスに関係を及ぼすものも多い。
MWもその類で、満腹度が低くなりすぎるとステータスが低下し、さらに空腹感も感じる。
デスゲームとなったこの世界ではもう一つの現実と言っても過言ではないほどに様々な感覚が再現されていた。
食事の誘惑に耐えて、先に進むとやっと街の外縁部に到着した。
町の外周には2メートルほどの壁が街を囲んでいる。
ただ今いる大通りの延長線上には壁がなく、外に出られるようになっていて、壁のない部分の両脇には衛兵らしきNPCが警備している。
よし、とりあえず端まで来たし帰るか。
行きとは違ってまっすぐ広場へ戻って行った。
広場に戻り最初に座ったベンチに行くと、案の定俺以外全員集まっていた。
「「遅い! 」」
「悪いっすね」
女性は時間に厳しいっすね!
いや、俺が緩いだけか。
「ユウも来たからとりあえずお互い報告しようか」
俺達は自分が集めた情報を互いに話して行った。
特に新しい情報は無かったが、マリが行った方向には神殿があり、入って様子を見て来たみたいだ。
「中に入ってNPCに、話を聞いてみたんだけど、蘇生ポイントとかじゃなくて本当に神に祈りを捧げる場所みたいで、供物を用意しろって言われたよ」
「神ねぇ」
「確かクリア条件のヒントは神を殺すことだったわよね? 」
「そう言ってたね」
「何にせよ今はまだクリア条件を考える段階ではないだろ。ひとまず寝る場所を確保しよう」
「私が行った方向に宿屋があったはず」
「じゃあリオ案内してくれ」
「任せなさい」
無い胸を叩いてから、前を歩き出すリオ姉の後を俺達はゆったりと追って行った。
昔リオ姉に貧乳って言ったら、言い終えた瞬間地面に叩きつけられていた事がある。
女の子に胸の話題はNGだと身をもって知った瞬間でした。
宿に着く頃には日が暮れていた。
宿の中に入ると結構な数のプレイヤーがいた。
NPCのおっちゃんに話しかけると
「いらっしゃい。泊まりでいいかな? 」
「はい。ツインの部屋を二つお願いします」
「はいよ。それじゃあ300Gだ」
ケン兄がカウンターに置いてある石に手をかざすとチャリンという音がした。
「はい。これが部屋の鍵だよ」
と二つの鍵を渡された。
この世界では硬貨はなく、支払いをする時はキャッシュストーンに手をかざして自動的に所持金から引かれるようになっている。
「じゃあ俺とユウが203でリオとマリは204だ」
「了解〜」
リオ姉はケン兄から鍵をを受け取るとマリとともに自分の部屋に向かって行った。
「あ、リオちょっと部屋に行く前に俺達の部屋に来てくれ、まだ話し合わなきゃいけないことがあった」
「え、何かまだあったっけ? 」
「スキル構成とか話して無かっただろ? 」
「そういえばそうだった」
俺達は新しいゲームを始める時は必ず兄弟全員集まって育て方の方針を決めるのだ。
今日はゴタゴタして、ゆっくり話し合える時間が取れなかったし、いつもは現実でやっていたのでまだ何もステータスをいじってないのだ。
俺は結構この時間が好きだったりする。
自分のキャラクターをどうやって強くしていくかを考えるとワクワクしてくる。
俺達は階段を登って203号室に入っていった。