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続剣

毬栗は走っていた

その背後に黒い影が10数人ついてきているようだが正確な人数は分からない

いったいいつ頃から現れたのかふと思想をめぐらすが思い出せない

気ずくと毬栗は走っていた

ピュ―

隣を何かが飛んでいく

地面に何か落ちるが暗くてよく見えない

吹矢か

となると毒でも塗ってあるのは確実だ

さらに飛ばして走り出す

さすがの忍びもこの異常ともいえる野生児に追いつけるものは少なくこの怪物を追うごとに追手の数も次第に減り始めふいに気配は消えたがそれでもやみくもに山を越えた


ビュー――裸の山のてっぺんで空を見渡す

四方を崖のような切り立った草の生えない岩に囲まれそれを風が吹きすさむ


ヲ―――ン



遠くでオオカミの遠吠え

男は月光から隠れるように森に入っていった


昨日とある手紙をある城に届けた

そのころからだろうか

女に呼び止められ宿に連れて行かれそうになる

妙に茶店の親父がおまけをくれる

しまいには隣の良い格好の旦那に用心棒にならなかと

大金をつかませられそうになり適当に断り逃げた


そんなことをしているうちにもともと人嫌いの毬栗は町から村へどんどん人里離れたところに行くってしまう


そんな時いきなり襲われたのだ



しばらく走ると山裾で明かりが見えたさらに走ると少し大きな宿場町だと分かる


野宿してもいいがまだそれほど夜も更けていない

もうひとっ走りとカモシカのように駆け出した


宿は宿女は少なく

色引きたちが通りをがっぽしていた

男たちはみなどこか浮かれた顔で女たちを見ていた

ちょと兄さん寄ってきなよ

ふいに袖をつかまれる

見ると年は25,6の小さめの女だった

それに対し男の体は180

このころにしては異常な大きさともいえたが

傍から見ると子供と親みたいに見える

男は適当にあしらおうと思ったが

女はしつこく追って来るので

宿だけでも紹介してもらおうと

言うと

ああそうかい

と言って勝手にうなずくと一緒に後から宿に入ってくる

この宿の常連なのか夜分だというのに番頭は女と一緒に入って来た毬栗を見ても大して怪しむことなく2階に案内した

たいしてして宿に違いはないが

最近の毬栗は羽振りがいい成果上部屋を頼むことが多々あった

そして今日も大きさこそ小さめだが十分寝るだけなら足腰のばすのには十分で

それになかなか小奇麗である

それこそどこであろうと寝れる毬栗であるが汚いよりはこちらの方がいい

疲れこそなかったが早めに寝るかと一つ欠伸をすると

布団に大の字に寝っ転がった

そのまま寝息を立てようとした男に不意に

女の方がしびれを切らし

ちょと と闇の中で声をかけた

とうの毬栗は殺気さえなければ

気ずかないほどの男で眠る瞬間には女の存在さえ忘れていた

それこそこいつなら殺さんだろ

そんな感じで意識を消した

ちょっとあんた

どこの古女房だ

いい気持ちで閉じた目を開いた

ほとんど揺さぶるように揺する女に

芸女のような色気はないが

その人好きのするようなかわいい

とおった顔を見て思う

だきたいと

しかしこの男人間ができていないのかしばらく揺すられるのが止まると

すーーと眠ってしまう

実はこの女の爪に毒が塗ってあったことをこの男は知らない


女は驚いたいきなり揺り起こした男が

目を覚ましたと思ったら泡を吐いて倒れたのである

あたふたとしたが医者をと下に急いだ


女の爪に毒を塗った医者はひひひと

誰も寄り付かないような酸っぱい酒を出す料理屋でお猪口を傾げて飲んでいた

チビチビと

その上品な物腰が相まって周りの客から少し距離を置かれていたが急に笑い出したのでますます距離を置くがその老人はそんなこと見えないようで余計一人で笑うのであった

その老人が席を立ったのは一人の遊女が飛び込んできたときである


男は目を覚ますと体中に寒気を感じた

体を起こそうとして

ちいさな手に胸を押さえられた

女か

情けないことにそのか弱い何かでさえ押し返すことができない

毬栗は動けない体の代わりに思考を回す

そそ気配を感じるため意識を研ぎ澄ます


静かだ静かすぎる

誰の声もない 聞こえない

鳥の声

川が近くにあるのかせせらぎが聞こえた


こっここはどこだ

かすれる声が口から洩れる

、、、わかりません

、、わかりませんどういう事だ

しかしその声を聞いた毬栗は違和感を覚える感情のない声

まっまさか


旦那のように誰かに操られているのかだとしたら

一致何のために

情報の漏洩させるためか

だとしても今まだ何一つ中身を読んだことも知らされることもなかった

だとしたら早めに殺してくれるとありがたいんだが

拷問を前にする前提で感じる いや逆か、、、 そう思ったとき


先生起きたのか

突然人の気配が一つ増える

いや実際女の気配と入れ替わりにそれが現れた

そして何よりその声に行き覚えがある

あの信濃の武家屋敷であった老人ではないか

何が目的だ

ははははこれは元気がいい喋れるのは普通なら1週間でも無理な毒だぜ先生

と医者が言う

何が目的だ

もう一度言うが今度は少々殺気が抜けている

別に以前の知り合いだから安心したわけではなく

この動けない状態では反撃は無理

だとしたらわざわざ殺気立つ執拗もなく死を有意義に待とうではないか

今まで殺しをしてきた男に死への恐怖は身近すぎてない

いつ何時死んでしまうか分からない命にいつも怯えているのだ

当たり前すぎるほどのことで今その延長線にいるに過ぎない


先生  しみじみと医者が言う

そのそつのない声が部屋に響く

あんたには死んでもらうよ

そう言うと何かが動くのがわかる

するとス―――と皮膚に何かが当たるのがわかる

ふいに痛みが腕に広がる

しばらくしてそれを繰り返した医者は腕を止め

それを辞める

何をやった

毬栗は聞く それこそ興味本位だ 痛みよりも強い

あんたは俺の敵だ先生

それはゾクッとするような怒りに満ちた暗い声だった

お前さんはわしの娘を苦しめた挙げ句

そう言って言葉を切った

、、、あんた飛騨に行ったことはあるかい

その一言ですべてを悟る

背中が熱くなり腕からさらに血が噴き出す そういう事か




毬栗二十前のころである

そのころ独自の剣も分からずただひたすらに暴れるように斬る日々

そんなある日 血に濡れた体で夜の街を走っていた

追手はすべて殺すか深手を負わせたがいつ役人に見つかるともわからない

ここももう移動しなくてはいけないな

そう赤い血のような霧の追われた視界と思想で思ったその時

目の前にその思想のような赤い着物が見えた

女か

赤い刀を腰から抜く

血がぽたぽたと流れた

どうする斬るかと歩みを緩めず近づく

とその時 女が小声で叫んだ

私を抱いて

気が狂ったかそれとも怯えて

しかし女の白い肉に刀を向けようとしたとき

女はさも嬉しそうに眼を閉じて

聞こえるか聞こえないかの声で

「好き」

と口を動かす

男のぼやける視線はなぜかそれだけをはっきりと見た

後ろで役人の声がする

来て

女に袖を引っ張られるされるがままに歩く

不意にこいつの家なのか一軒の家の障子をあける

そして男を押し込めるように入れるとふーー吐息をつく

しかし男は女の背にその長い刀を突き立てて 動くな

っと言った

しかし女は少し飛び上がるようにしたが落ち着いたものである

お斬りになりたいなら

それは今までかけられたこともないような声だった

熱っぽい籠るような甘い

何が用だ

男はそれを言うか言わないかのうちに刀をしまい

女の腕を引き土間に寝かしていた

ああぁ-女は男を知らない

男はその斬れるような涼しい顔のせいか

女は寄ってきたがほとんど仕事柄ゆえに長くは続かない

一方的に何も言わず街を出た

そして今回もそうだと思った

こいつも俺の仕事を性を知ったら

その小さい身体は男に抱きついてきた

外で役人の走る音が夜中に2度ほど戸の前を走り抜ける

そのたびに動きを止めるが女はそれを止めさせず

痛みもないかのように男に抱きつく

それにこたえるように男も腰を動かすが

性なのかどんな時でも男の脳は冷静だった

あああー女は何度目かのたかみに達っしていた

男の体にぐったりと痙攣していた体を持たえさせる

その小さな体のどこにそんな力があるのか

不意い一物が抜け女が呻く

その日二人は永遠と泥の中に埋もれて言った


何でおれを助けた

とこの中で男が聞く

その白い色白に体に

幼さの残るかわいげな顔だが18くらいではあろうか

女は男を恥ずかしげに見ながら

実はと言った

女が初めて会ったのは街の中でのことだったという

それこそ通りすがりに過ぎないその男を見たその瞬間

この人に抱かれたいと思ったという

あまりにその容姿とは裏腹の率直過ぎる物言いに男の方がドジマギと女を見た

でその日あなたを1日つけてたらあなたが


人を殺したの


男は切ろうと刀を取ろうとする前に

女の白く熱い身体が男の胸に抱きついてきた

私でも好きなんです逃げないで

男は困る

人殺しと知りこんな かたみそうな女が

男は抱きしめたいのを抑えた

こいつはおれといれば必ず不幸になる

そこまで好きではない

しかしどこか惹かれるのも確かだ

ならもしも本気で好きになったとき困らないように

身を引いた方がいい

つらいのはどうせ俺の方になる

無残な死

俺はああ

と頷いて軽く抱きしめると口を吸う

そのあと着物を着ようとしてまだ血が体についているのにきずいた

おい、、そこで名前をまだ聞いてないことに気ずく

お前はなんて言う

俺はそう言って毬栗と言おうとしたが女は遮り

知っています 毬栗五十郎様 私は医者の毒楽(ドクガク)の娘お里とも押します

そうかすまないが瓶に水を組んでくれないか え~~お里

はっはい

そこで女の姿が汚れているのを見てぞくりとするが耐えた

盥に水を流すと女から拭くと自らも拭き着物を見て改めて

血しぶきまみれに気ずき さてと思った

改めて部屋を見ると入るときは血で気ずかなかったが

ひどく薬臭いことに今頃気ずく

という事はここは医者の家か

娘に懐から金を出し服を買って来てくれるように頼むと

「はい」

そう言って部屋を出た

その時に悲劇は起こったのだ

たまたま たまたま買いに行った着物屋にたまたま役人がいて

たまたあその大きすぎる服の注文を聞き

たまたま付けて見たら

女が部屋に入ってくるなり男が部屋に入り込んできた

この岡っ引き 着物屋に借金をを作るほどにドジを続かし いつ首を切られるか分からなかった そんな時ふと気になってついて行った娘が開けた部屋の中にあの男が

男は部屋に飛び込んできた

毬栗は刀をつかむと切り捨てた

あっけなく岡っ引きと女が倒れた

こいつに裏切られたと毬栗は思った

しかしキズが甘かったのか

情けが手を弱らせたのか

女は息を漏らしながら男を見た

しかしその目はどこか哀れにを含み

あの夜見た熱っぽい色を思わせる

なぜだ

こんな顔を

おいお里なぜ俺を しかし分かっていた違うんじゃないかと言うことを

分かりませんでも

お里はそういいながらこと切れた

それだけで十分だった

その時別の役人が叫びながらやってこなければ罪で自ら腹でもなんなり切っていただろう しかし男は刀をつかむと裏口から走った

生きること それが俺への罰だ

それから男は女を抱いていない

そして今までより冷徹なその刀は

一瞬の隙も無駄さえ無く身を守る刀になった

死んでいるのに生きる剣

矛盾な剣が毬栗をグジュグジュとこりかため壊しながら腐る

それでも男は罰のために生きた

何でもない俺が償うにはそれだけしかない

それだけが償い

簡単に楽に死んでなるものか

男はそう思い今まで生きてきた

その男の思想を旦那は一目見て読心術で読んだ

そして救ってやろうと思った



意識が不意にはっきりした

目の前に女がいたお里ではないか

俺を連れて行ってくれるというのか

男はこうべを垂れた

しかし女は首を振り

す――と白い着物は男に抱きつくと腕をさーーと撫でて

生きて と言った

それは医者にも見えた

最初は白いもやのようであったがそれがお里と分かったとき

そのやり取りを見て 今まで自分の思想に間違いがあったことに

気ずく

お里はホレていたのか

そして男の言葉は明らかに

医者は頭を垂れた

俺は今まで

不意い消えたお里を見て医者は

その男の腕がけんを切ったはずなのに痕さえあれど血さえ流れていない傷も無視して

男の胸にその細身とは思えない胸に思い拳をどんと殴った

それだけだった

後から後から流れる涙

老人は項垂れていた

全ては終わったのだった


そのあと孤独な老人に一人の息子ができた

働かなくとも息子の仕事だけで暮らしていける

しかし今日もその小さい身体をひょこひょこ動かしながら道を歩くとこを見て

おとっさん と頭の中で毒楽五十郎は思った

その足元を小さな子供がすり抜けてその太い足に抱きつく

老人に向けて言ってらっしゃいと手を振ると不意に振り返る老人が手を振る

どこかさびしい寒い春の日のことだった



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