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医剣

それは信濃のとある武家屋敷に毬栗が来た時だった

いつもは封書なのだがその時は刀であった

主人は預かり物と言っていたが別段詮索する気もない

したところで興味はないし

それで何かしくじるよりは数倍ましだ

男は深夜言われた通りの時間に門をたたく

そのころには町のはずれのこの屋敷の前に誰一人として通るものはいなかった

はいお待ちを

すぐに中からろうそくをともした若者が出てきた

すぐに毬栗は中に入る

中はこぎれいな庭がありその奥に平屋建ての屋敷が構えている

さっさっと勧められるがままに中に進む

ろうそくの明かりが黒い床に映る

その廊下を音もなく毬栗が歩く

ここです障子開けてそこにいたものを見てあ然とする

そこには異様に腹のでかい裸の女が寝ていた

目をむいて廊下で待つ若者を見たがいつの間にか消えていた

ふと女の気配以外に別の何かを感じててふと屏風に目をやるとその屏風の陰から老人が姿を現す

あっあなたは

毬栗が何やらめんどいことになりそうだと思った

こんなことならしっかり聞いておくんだった

それよりそう思いながら身なりのいい品のよさそうな老人を見て

これは医者かなとか思った

あなたがイガグそこで言葉を切っていやこれは失敬失敬

老人はぺしぺし額をたたきながら毬栗を見た

失礼私は医者の野沢菜と言う

実は少し厄介な客が来たもんであんたの旦那に頼んだんだが

いやはや

そう言って毬栗のでかくほっそりとした体を袈裟の上からわかるのか

舐める様に見た

いやこれまた驚いた有名人を

そういうとさっさっと

布団に横たわっている女の横にある座布団に案内する

実はこれ呪い子と言うもんなんですがな

旦那がほかの女から恨まれそれが何の因果か妻の子に宿る

いや実に因果

そういいながら刀を受け取ると老人はそれをさっと引き抜く

怪しく光る刃が見かたによっては紫に見える

それをすーーと色の白い腹に当てた

キャ―-―

切られた女が呻いた

傷口から黒いもやが噴出し辺りにやな気配をまき散らかす

おい先生今だ

初老の医者に言われるも何をしたらいいかさっぱり見当誤つかない

その時

黒いもやが薄らと人型になる

そこだ 白髪の医者が叫ぶと同時に剣をほおる

それを無意識に受け取ると霧と肉が具現化したようなそれを一刀両断にした

一瞬風がものすごい勢いで部屋を駆け抜ける

ふと目を見ひきらいた時

部屋には大量の血が飛び散り

その真ん中で腹の細い女が寝て言う

さっきまでの無駄に青白い色ではなくほんのり血の気がある

いやー―ご苦労さんご苦労さん

老人は女の服を治すと

しばらく一通り検査をして毬栗を連れて出る

先生あの血は

ハハハ呪った女だよ

そう言った先生の顔は、笑っているのに

その目はこの世のものとは思えないくらい暗く冷たく見えた

さてはて酒でも

その晩どこにこんな力があるのか

一晩中ちびちびと飲まされ

話を聞かされた

次の日引き止めるのも無視して戻ったという話



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